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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第二章
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教育係と器の交換

ながらく空けてしまいすみません。

投下します。


 すさまじい魔力が衝突しあう。


 剣先が当たるたび洞窟内の岩壁に亀裂が入り、今にも崩壊しそうだった。


 策も技もないただのぶつかり合い。魔剣を使っての戦いは私の想像をはるかに超えていた。


「ずああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 ポロジックの容赦ない剣筋がベガルタに襲い掛かる。ベガルタは防戦に徹しポロジックの剣を紙一重でさばいていた。


 魔剣とは聖剣と対をなす存在。私はかつてプレミアが話してくれたことを思い出す。


 かつて英雄オリジンは魔族に対抗すべく、女神の聖なる力を借り十二本の聖剣を作り出した。


 聖剣を得たオリジンと仲間たちの勢いは止まることを知らず、一時期魔族側は陥落寸前まで追い込まれることとなる。


 それに対抗すべく魔王が作り出したのが、のちに『十三の牙』と呼ばれる魔剣だった。


 激しい戦いが繰り広げられたが、結果はオリジン側の勝利に終わり、魔剣もその多くが消滅しこの世から姿を消すこととなる。


 これが数多くあるオリジンの逸話の一つだ。


 だが、今目の前には魔剣と呼ばれる剣が2本振るわれている。

 

 模倣品、あるいは別の何か。もしかしたら本物という可能性もある。


 なんにせよ、このことをプレミアに報告しなければ。


 私はぶつかり合う二人に気づかれないよう音を立てずに出口へ向かう。


「おい女、どこへ行く」


 ポロジックがベガルタから距離をとり、私に向けて左手を向けた。


 途端ズシリと体に重圧がかかりそのまま地面にたたきつけられる。


「ぐあっ!?」


「見られてしまった以上貴様は生かしておくわけにはいかない。ベガルタを回収したのち殺してやる」


「誰が誰を回収するだと?」


 ベガルタが一気に距離を詰めポロジックに切りかかる。だが剣が振られる前にポロジックはまた距離をとり体制を整えた。


「生きているか女」


「な、なんとか……」


 ベガルタの問いにきしむ体を起こしながら私は答えた。


 本当になんとか生きている状態で、体中悲鳴をあげている。正直次同じものを喰らったら意識を保てるかどうかわからない。


 冒険者として数年やってきたけど、ここ最近命の危険にさらされることが多すぎる。先のグリンドラゴンや今回の異界化騒動は、私のランクだったら体験しえない事態だ。


 自分の力量を間違えている。最近の私の行動はそういわざるを得ない。


「女、貴様は端にいろ。どのみち貴様ではあれはどうすることも出来ん」


 ベガルタの言うとおりだ。単純にレベルが違う。魔力、体力、その他もろもろ。


 冒険者としての力事態が、ポロジックに遠く及ばない。


 でもそんなこと、関係ない。


「いやだね」


「……何?」


 ベガルタが初めて怪訝な声を上げた。何を言っているかわからない。そんな顔をしている。


「あれが何者であれ、放っておいたら外にいるみんなに被害が及ぶ。それよりもここで何とかしたほうが最小限に被害を抑えられるでしょ?」


 自分でも馬鹿なことを言っていると自覚している。それでもポロジックはここで何とかしなければならない。外に出せば何も知らないロールさんやユキノちゃんが危険だ。ここで何とかしないと。


「ククッ、ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」


 突如ベガルタが大口を開けて笑い出した。甲高い声が洞窟中に響き渡る。


 そして剣を私の目の前に突き刺し、手を放す。


「何とかするといったな女。面白い、実に面白いぞ!」


 どうやらベガルタの関心を得たらしい。よほど面白かったのかまだ笑っている。


「女、そこまで吠えたのだ。すなわち自身を犠牲にする覚悟はできている。そうだな?」


「ええ、もちろん。これが答えよ」


 答えはすでに決まっていた。私は迷いなく突き刺さった剣をつかむ。


「ぐっ、うぅぅ……」


 今まで感じたことのない膨大な魔力が体中を駆け巡っているのが分かる。この量の魔力をキール君の体で使用していたなんて。いつ体が壊れてしまってもおかしくなかったはずだ。


 それが起きなかったのは、ベガルタがせっかく支配した体を壊すのをためらったからだろう。


 だが今は違う。器を入れ替え、私という壊れても問題ない体を手に入れたのだ。これでベガルタは躊躇なく力を使うことができる。


『待たせたな、ポロジックとやら』


 キール君の体が糸が切れたように地面に倒れる。ベガルタの意識が完全に私の体に移ったようだ。これでどうにかなるだろう。


『この体になったからには、先ほどまでの遊戯とはならんぞ。心して…………ん?』


 急にベガルタの言葉が途切れる。いったいどうしたというのか。私は状況を打破しようと自分の体を差し出したのに、ここにきて何か不具合かと不安がよぎる。


「皇帝陛下、いったいどうし……ん?」


 あれ、普通に喋れてる。手も足も動くぞ。


 私は右手に持つ魔剣に目をやる。禍々しい魔力は健在だ。宿主を私に移したからといって特に使えなくなったというわけではないらしい。


 幸か不幸か、答えは一つ。


『「あれ?」』


 体はなぜか乗っ取られていなかった。

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