教育係と自称皇帝
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これから少しずつ更新してければと考えております。
良ければお読みください。
ギルドを後にした私は異界化した洞窟がある森に来ていた。
ガリウス率いる本隊はまだギルドから出発はしていない。というのもあれから結団式やら演説やらが始まり、高ランクの冒険者の役割だとかなんやら語りだした始末だ。
出る時ガリウスの姿は見えなかったけど、たぶん別室で熱い演説の言葉を考えていたのだろう。
「そんなことしてる間にキール君に何かあったら、ロールさんになんて言ったらいいか……」
ユキノちゃんには悪いけど、別で動いて本当に良かった。見送る顔が最後まで釈然としない表情だったけど、今回はこの選択が正解だろう。それに彼女も、私以外の冒険者と触れ合う機会が必要だ。
オリジンではうれしいことを言ってくれたけど、いつかは私よりもっと高ランクの冒険者になる。その時のためにも、今から同ランクの冒険者の知り合いを作るのは悪いことじゃない。
彼女ももう新米とは言いがたい冒険者に成長してくれた。そろそろ次にステップに進むべき頃合いだろう。
「それにしても、魔物が全然いないな。ホントに異界化してるのかな……?」
森に入ってキール君を探して少し経つが、魔物の姿が見えない。異界化しているのであれば高レベルの魔物がそこかしこにいてもおかしくはないのだが。
一体くらい洞窟から出てきているかと思ったがそうでもないらしい。歩いていくうちに、私はついに魔物に一切遭遇することなく先日見つけた洞窟にたどり着いた。
「ここが異界化した洞窟か。さて、ここからは慎重にいかないと」
今まで魔物に遭遇しなかったのは、この洞窟に集結しているからだろう。中に入ってきた冒険者を一網打尽にするために違いない。異界化した場所から外に出て周りも異界化していく魔物もいるが、異界化した場所から出ずに籠城し地盤を固めていく魔物も珍しくはない。
むしろ籠城する魔物の方が知能が高く厄介だ。向こうからしてみれば侵入者を迎え撃つ準備を整えられるわけだから、圧倒的に有利である。
「うーん、やっぱり一人は無謀だったかな……」
今更そんなことを口に出しても仕方ないのは分かっているが、こういうのはついつい出てしまうものだ。
「それにしても、なんでキール君はこのタイミングで一人で行っちゃったんだろう」
一緒にクエストをこなしたが、慎重で歳に合わず冷静な判断力を持っている。そんな印象だった。年相応の無謀さも時折感じたが、ここまで危険を冒すような子ではない。
「なにかに、操られた?」
精神操作系の魔法にかかってしまったというのは十分考えられる。まだ冒険者として経験が浅いキール君では対処法などは分からないはずだ。ユキノちゃんほどの魔力があれば対処法などわからなくても無理やり解除することもできるが、キール君にはそれもない。
「これは精神操作の線かなぁ」
魔物に冒険者が操られたという話は多くはないが実例がある。大抵はそういった状態異常を反射できる装飾品を身に着けるものだが。これが終わったら一度キール君の装備を確認しよう。
洞窟を延々と歩くが、まだ魔物には遭遇しない。それどころか何の気配も感じ取れず、私は困惑していた。
一応気配遮断系統の魔法を使われているのかと探知魔法を使ったが、反応は一切ない。
そうしていくうちに、私は大きな広間にたどり着いた。
「ようこそ。招かれざる客人よ」
広い空間の奥。そのには簡易的だが玉座のようなものがあり、そこからすさまじい魔力があふれ出ていた。布の仕切りで誰かは分からないが男の声がする。
「ほう、余の力に当てられても平然としていられるか。おもしろい」
玉座に座る何者かは楽しそうに声をあげて笑った。
「あなたがここの主さん?」
「いかにも。余こそがこの洞窟の主であり、ゆくゆくは世界を統べる皇帝なり!」
魔力が一層跳ね上がる。その影響か地響きが起こり周りの壁に亀裂が入った。この調子で魔力を上げると最悪生き埋めになるだろう。私は広間の入り口に気づかれないように下がり話を続けた。
「そうなの。それで、未来の皇帝陛下に聞きたいのだけれど、男の子がここに来なかったかしら?
「む? 男児とな?」
「ええ。金色の髪でこのくらいの子なんだけど」
私は手をキール君の背丈の辺りまで下す。確かこのくらいだったはずだ。
自称皇帝も話を聞いてくれているみたいで、思い出しているのかうんうん唸っている。
「おお。そのくらいの金髪の男児か。来たぞ。ここに来た」
やっぱりここに来ていたようだ。とりあえず目撃者がいてよかったと息を吐く。
「それで、その子がどこに行ったかはわかる?」
ここからが問題だ。この先に道はない。ここが洞窟の最深部。つまりキール君はここで何かあった。
目の前の自称皇帝が何かしたのか、それとも別のなにかかはわからない。答えは向こうの返答しだいだ。
「どこに、だと?」
クツクツと笑う自称皇帝の声に先ほどの明るさはなかった。
「いるだろう。先ほどから貴様の目の前に」
瞬間、布が燃え上がり自称皇帝の姿があらわになる。
金色の髪に成長途中の体。だがそこにあのあどけなさはどこにもなく、冷酷な目が私を射抜くように睨む。
「やっぱり……」
この展開も予想していた。当たってほしくはなかったけど。
私が探していた少年。キール・ケットが玉座に座っていた。
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