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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第二章
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閑話 異界化についての報告

 オリジン。


 冒険者発祥の地として名高く、英雄オリジンが最後に訪れた街と言われている。


 その街のギルドの名もまたオリジン。多くの高位ランク冒険者を輩出し、冒険者たちにとって聖地と崇められている場所でもあった。


「本当なんでしょうね今の話」


 そのギルドの一室。大きな机がある執務室には人影が二つあった。


 一つはオリジンギルドマスターであり、『束ねる者』の異名を持つプレミア・ファストラッド。


 ギルドマスターであり街の顔役も担っている彼女にとって、今聞いた話は決して放置できる問題ではなかった。


「ああ本当だ。ここに来る途中この目で確認した」


 もう一つはスキンヘッドにジャラジャラとした装飾品を身に着けている大男。


 オリジンが誇るAランク冒険者、『剛腕』ゴルド・バジークだった。


「別件でセカンド近くの森に入ったんだがな、ありゃ異界化してるぜ」


「認識阻害の結界とかじゃなくて?」


「それもあったかもしれねぇが、その中でも魔力の量がバカみてぇに高い場所が一か所あった。核はそこだろうよ」


 異界化というワードを聞いてプレミアは頭を悩ませた。


 魔素が許容範囲を超え、魔物が異常な速度で活性化する。それが今巷で起こっている現象だ。だが異界化はそれとは違う。


 本来そこにいないはずの上級魔族や魔物が大量に出現し新たな生態系を作り出す。それが異界化だ。


 異界化は進行するものである。放っておけばセカンド全域が異界化しかねない。


「セカンドのギルドマスターは何やってんのかしら……」


 本来であれば異界化する前にギルドマスターが対処するべきなのだ。普段は怠惰なプレミアもそれを放棄するほど無責任ではない。


 だか今回はすでに異界化が進んでいる。


 セカンドのギルドマスターはそんな事態を放置する人間ではなかったはずだと、プレミアがそう思った矢先ゴルドが口を開いた。


「あーそれなんだが、どうやらセカンドのギルドマスターはその……どっかいっちまったみたいでな」


「それって……」


 濁してはいたが、プレミアはゴルドの言いたいことが分かってしまった。


 ギルド付近の異界化にギルドマスターの不在。少し気を付ければ難なく手に入れられた情報だ。


 それがプレミアの耳に入ってこなかったのは、ギルド内に反勢力が存在する可能性を意味する。


 だとすれば非常にまずい。


「ゴルド! 今すぐヴィーちゃんにセカンドに行くよう伝えて!」


「おいおい、まだ完全に決まったわけじゃ」


「あああああああワタシはなんてことをっ!」


 突然取り乱すプレミア。ここまで狼狽しているプレミアを見るのは久々だと、ゴルドは事態の重要性を改める。


「落ち着けプレミア! セカンドにも冒険者はいるんだ。応援が着くまでそいつらに頑張ってもらうしか」


「そうじゃないのよ!」


 先日得たセカンドにいるという来訪者の情報。あれは誰から報告を受けたものだったか。


「今セカンドにはリタが行ってるの!」


「なっ!? なんでリタが!」


「セカンドの来訪者の情報収集をしてもらいに、ワタシが勅命を……」


 そう言ってプレミアは糸が切れたように椅子に力なく座った。


「またワタシは、あの子を危険な目に……」


 先日のグリンドラゴンの件、プレミアは完全に後手に回ってしまった。


 もう大きな怪我はさせないと誓った矢先これである。


 冒険者である以上リタにも危険がまとわりつくのはしょうがない。だがそれを良しとしない自分がいる。要するにわがままなのだ。


 自責の念が頭を駆け巡る。なぜ行かせてしまったのか、と。


「大丈夫だプレミア」


 頭を乱雑になでられ、陽気な声に顔を上げる。そこには豪快に笑うスキンヘッドがいた。


「リタは戦闘能力はあんましないけどよ、生き残る術はいくらでも持ってる。それに運いいしなあいつ」


「そうね……確かに、リタは昔から運がいい」


「だろう? あいつのことだ、心配ねぇよ」


「ちょっと、いつまで頭触ってんのよ」


「お? やっといつものプレミアらしくなってきたな」


 それで、とゴルドは続けた。


「シルヴィアと連絡がついた。竜の群れとやりあってたみたいだが、倒したから今から向かうとよ」

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