教育係と出発前の戯れ
「よし、ちゃんと来たね」
翌日、私とユキノちゃんはギルドに顔を出していた。
約束通りキール君も来ている。素直っぽかったからいるとは思っていたけど、いざ姿を見て安心した。
「一応、約束していましたから」
「うんうん、大事だよそういうの。リタさんあの後来てくれるかどうか心配になっちゃって」
「ユ、ユキノちゃん! そういうのは言わなくていいから」
確かにちょっと強引な誘い方だったから若干の不安はあったけども。
ともかく、これで今日のパーティメンバーがそろった。
私は改めてクエストの内容を確認する。
「えー今日のクエストは薬草採取です。クリア条件はこの袋が一杯になるまで」
私は依頼主から渡された袋をユキノちゃんとキール君にそれぞれ渡した。
中々大きな袋で、袋一杯にするには多少時間がかかりそうである。
「二人から何か質問はある?」
「はいリタ隊長!」
ユキノちゃんが元気よく手を上げた。
彼女もフィールドワークはまだ二回目。わからないことだらけだろう。
「はいユキノ隊員、なんでしょうか」
「バナナはおやつに入りますか!?」
「入りません非常食です」
そうですかーと少し落ち込み気味なユキノちゃん。
果たして今の質問に何の意味があったのだろうか。
はっ! もしかしてキール君の緊張をほぐすためにあえてそんなことを言ったのかも。
ここでくすりと笑っていれば儲けものなんだけど、反応はいかに?
わずかな希望を抱き、私は目線をキール君に向けた。
「バナナは非常食……そうですか……」
あれ、思っていた反応と違う。
なにアホなことやってるんですかと笑われるものかと思ってたんだけど……。
もしかしてキール君も落ち込んでる?
「えーっと、時と場合によってはおやつになる……かも?」
正直おやつになろうがなるまいがどうでもいい。
即効性の栄養補給物としてしか見ていなかったので、おやつと言われると疑問が出てくる。
だが二人の今の表情を見るにバナナはおやつで正解のようだ。表情が明るくなっている。
今の子供にとってバナナはおやつなのか。よし、今度プレミアにも同じ質問をしてみよう。
子供っぽいし、もしかしたら自信満々におやつって言うかもしれない。
「ほかにはあるかな」
「わたしは特にはありません。キール君は?」
「僕も今のところは大丈夫です」
「わかった。じゃあ行こうか」
あとは実際に現地で感じてくれればいい。
私がここで一から説明してもいいけど、ただ聞くのと体験するのとではずいぶん違うからね。
二人を引き連れ、私は薬草の採取ポイントへ向かった。