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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第五章
115/118

プロローグ

長らくお待たせしました。

第五章開幕です。

「いやー助かりました。まさか魔物に出くわすなんて」


「護衛として当然だよ。ここら辺は小さな魔物が出やすそうだからね。」


 商人の声にダガーの手入れをしながらそう返した私は前方を見る。森林から整備されている街道へと風景がうつり変わり、徐々に家屋が増えてきた。どうやらやっと森を抜けたらしい。


 ヴァレスタでの一件のあと、私は少し離れた村の宿で休息をとっていた。回復魔法で傷ついた体を治してもらったとはいえまだ病み上がり。これから先歩きっぱなしになることを見越して体を休めていた。そこに運よく商人の馬車が立ち寄り、商品を宿屋に卸したあと、泊まっていた冒険者たちに護衛の依頼を投げかけたのだ。貿易都市へ戻るのでその間の護衛が欲しいと。


 どうやら泊まっていた冒険者はほとんどがその貿易都市から来たばかりらしく、全員が首を横に振った。返事を返していなかったのは私だけだったようで、そろそろここから移動しようと思っていたのでちょうどいいと思い、護衛の依頼を受けて今に至る。


「ホーンラビットの群れに囲まれたときはどうなるかと思いましたが、いやはやお見事でした」


「匂いに敏感な魔物だからね。特定の花と実を調合した粉末があれば対処できるんだよ」


 森林を移動中、私たちはホーンラビットの群れに出くわした。ホーンラビット自体は討伐推奨ランクの最底辺であるFランク、いわゆる新米向きの魔物だ。力もそこまで強くなく、角を主軸とした突進にさえ気を付ければ大したことはない。


 だが、それは一匹や二匹だった場合だ。


 ホーンラビットの群れに遭遇した場合、その推奨ランクは一気にDへと跳ね上がる。一匹の突進に対処できても、そのあと数匹の突進が待ち構えている。そうして冒険者を疲弊させた後、残ったホーンラビットが一斉に突進するのだ。実際に命を落とした新米冒険者も少なくない。


 冒険に出たばかりで経験の浅い新米冒険者がホーンラビットの群れに遭遇した時に取るべき行動はただ一つ。逃げることだけだ。


 ただしっかりと知識を付けていれば選択肢は増える。その一つが匂い。


 ホーンラビットは嗅覚が優れており、そのおかげですぐに獲物を見つけることができるのだ。その特性を利用し、ホーンラビットが好む匂いを自分とは反対の方向へ向ける。そうすればホーンラビットの対象は目の前の冒険者から『いい匂いがする場所』へと変わり、その隙に逃げれるというわけだ。


「勝手に売り物を使ってごめんね? いくらだったかな」


「いえいえ、お代は結構ですよ。命の恩人からお金はいただけません。それにそんなことをしては会長に叱られてしまいます」


 商人らしかぬ対応に目を丸くする。商人というのは例えどんな事情があろうとも代金を回収すると思っていたけど違ったみたいだ。


「そう? 助かるよ。実はあまり持ち合わせがなかったから」


 オリジンから持ってきた路銀も少なくなってきていた。ヴァレスタで依頼を受けようと思っていたがそれどころじゃなかったのでしょうがない。この馬車の護衛代でなんとかしたいと思っていたところだ。


「それなら依頼料も上乗せしときましょうか。四人は雇うつもりだったので金銭には多少余裕があるんですよ」


「いいの? ありがとう!」


 その後は魔物と出くわすこともなく、馬車はゆるやかに道を進んでいった。少し経つと周りの景色が変わり、石で整備された綺麗な道に車輪が乗る。道が整備されているということは貿易都市まであと少しだろうか。


「そういえばフレイバーさんは貿易都市になにか御用で?」


「特にはないよ。いろんなところに旅している最中なの」


「へぇー旅ですか。それはいいですねぇ。となると、海上都市や魔法都市なんかも行かれるんですか?」


「海上……魔法?」


 私の疑問に商人は快く説明してくれた。


 海上都市リヴァイア。その名の通り海の上に存在し、船に乗らないとたどり着くことができない。海産物が有名で魚料理が絶品なんだとか。ぜひ行ってみたい。


 魔法都市ホルスは都市全体で魔法の研究や教育に力を入れている、一種の教育機関らしい。学園もあり外から来たものに対しても学ぶ機会を与えているんだとか。


「リヴァイアに行くのもいいけど、ホルスで魔法のことを学ぶのもありかもなぁ」


 今使えるのは捕縛系のバインドとヴァレスタで覚えたヒール。それとファイアのみ。ランクDの冒険者とはいえもう少し使える魔法を増やしておきたいところだ。


「それならこの先の商業都市で色々そろえてから向かった方がいいですよ。貿易都市からリヴァイア行の船が出ていますし、ホルスはここからだとリヴァイアを通らなきゃならないんで」


「なるほどね。教えてくれてありがとう。それじゃあまずは商業都市の探索と行きましょうか」


 商人の馬車が都市の門の前で止まる。衛兵に手形を見せ荷物を確認させた後通行の許可が下りた。


 門をくぐると景色が一変する。人通りが多く、そこかしこに小さな店が置かれ、店前では声を張り上げ客引きをしていた。オリジンやセカンド、ヴァレスタとは違う空気に思わず胸が高鳴る。


 まるでパレードをしているかのような賑やかな街の中を馬車は進んでいった。


「ようこそフレイバーさん。ここが貿易都市イースターです」

更新については気長に待っていただけると幸いです。

誤字脱字、ご感想などあればぜひよろしくお願いします。

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