教育係と大神官の末路
だいぶ遅れてしまいました。
投下します。
「レクト、よかった……っ」
ところどころ怪我をしているけどどうやら無事みたいだ。私はレクトに駆け寄り思い切り抱きしめる。本当に良かった。
「リタ……さんっ、苦し、い」
「あっ、ごめんつい」
少し力が入りすぎてたみたい。レクトのか細い声を聞いて慌てて抱擁を解く。
「ウォーロックさんも無事でよかった」
「なぁに。こんくれぇどうってこたぁねぇよ」
ウォーロックさんは私の声に豪快な笑いで返答する。レクトより傷はあるが致命傷ってわけでもなさそうだ。私は覚えたてのヒールを使い二人の傷を癒す。
「ありがとうリタさん」
「あくまでも応急処置だからね。ここを出たらちゃんと傷を見てもらうように」
「あいよ」
二人に念押しをして、私は気持ちを切り替え前線に出る。といってもすでに決着はつく寸前だ。
「いいかげん観念したら?」
多くの光弾が豪雨のようにセリスに降り注ぐ。ロズウェルはこの光弾でいくつもの障害を排除してきた。時には大神官として魔物を排除し、時には秘密を知った聖教会の関係者を魔人として始末し。そうしてロズウェルは現在まで今の地位を不動のものとしてきたのだ。
だがセリスはそれをいとも簡単に拳で叩き落す。光弾の雨など障害にならないといわんばかりに一歩、また一歩獲物に近づく凄女。ロズウェルの顔からはとうの昔に余裕が消えていた。
「ば、バカな……こんなことが」
もはやロズウェルに逃げ道はない。
「こんなところで、こんなところで諦められるかぁぁぁ!!!」
怒号とともにロズウェルは懐から小瓶を取り出す。中には紫色の錠剤が入っていた。
「なに? ドーピングでもするのかしら」
「まさかこれを使う羽目になるとは。だが、背に腹は代えられんっ」
一瞬躊躇したが、ロズウェルはふたを開け錠剤一気に口へ流し込んだ。
「ぐっ、おお、があああああああああああああ!!!!!!!!!」
怒号とともにロズウェルの体からどす黒い魔力が湧き出る。魔力はロズウェルの身を覆いその姿を異形のものへと変貌させた。
背中から黒い羽が生え、肩から腕が伸び、法衣を突き破ったその身体は獣のごとく体毛に覆われている。もはや人間だった面影はどこにもない。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
血のように赤く染まった目でロズウェルだった魔物が狙いを定めたのはセリスだった。獣のようにのどを鳴らして威嚇をし、徐々に距離を詰める。
「魔力が底上げされてるわね。でも、足りないわ」
セリスは両こぶしを合わせ戦闘態勢を取る。
「ゴロズ!! ゴロズゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!!」
「これで終わりにしてあげるっ!」
かつてロズウェルだったそれはセリスに突進した。セリスは右こぶしを振りかぶり、向かってくる魔物の顔面に合わせる。もはや正常な判断力もない、ただの魔物となり果てたそれは、セリスの渾身の一撃を喰らった。
セリスの攻撃には必ず聖属性魔法が付与される。それは魔族への最大の有効打であり、その戦い方がセリスをランクSの凄女たらしめていた。
「グギャアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
セリスの一撃をまともに喰らい、体に大量の聖属性魔法が行きわたる。魔族の体に聖属性魔法が注入された場合どうなるか。体の中から光があふれだし、ロズウェルだったものがジタバタと苦しみだす。
答えは実に簡単だ。
その断末魔を最後に、ロズウェルだった魔物はその異形となった姿を爆散させた。
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