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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第二章
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教育係とランクの偏見

 オリジンから少し離れた街、セカンド。

 冒険者ギルド発祥の地がオリジンであるならば、セカンドは冒険者の存在を世に広めた街だ。


 オリジンから多くの冒険者が外に旅立ち、そしてたどり着いたのがかつて無法地帯だった今のセカンドの領地だったと文献に残っている。


 指導者を失い荒れ果てた土地を整備し人々をまとめ上げ、魔物を駆逐し、オリジンのような冒険者ギルドを作り上げたのが、かつて英雄オリジンとともに旅をしていた来訪者だったというのだ。


 いわばセカンドは来訪者との関係も根深い。


「リタさん、見えてきましたよ」


 馬車から身を出し外を眺めていたユキノちゃんが満面の笑みで言う。無理もない。出発前ものすごく楽しみに準備していたのを私は思い出す。


 まるでどこか休暇に出かけるくらいの機嫌の良さで荷物をまとめていたっけ。


「馬車で四日も掛かるなんて思いませんでしたよ。車だともっと早く着いたろうなぁ」


「クルマ?」


 ユキノちゃんは時々よくわからないことを口にする。

 それもそのはずだ。彼女は何の因果かこの世界に現れた来訪者その人。


 強大な魔力を持ち、冒険者登録をしたその日にFランクからBランクまで飛び級したすごい子だ。


 オリジンGM(ギルドマスター)プレミアからの勅命がなければ、私なんかといるべき子じゃない。


 もっと高ランクの冒険者たちと冒険したほうが彼女のためになると思ったんだけど、プレミアめ。


「あーでもわたし免許持ってないから、あっても運転できないや」


「メンキョ……資格みたいなものかな?」


「そうですそうです。十八歳になると車の免許が取れるようになって――――」


 ゲンツキやバイクといったユキノちゃんがいた世界の乗り物の話が続く。

 どうやら馬車よりもはるかに高性能でとにかく速度があるらしい。機会があれば乗ってみたいものだ。


「お嬢さん方、そろそろ着きますよ」


 御者(ぎょしゃ)の男の声で私は外を見る。

 目の前には大きな門がそびえたっており、多くの馬車が街に入るための手続きを行っていた。


「うわーすごいですねここ。オリジンにはありませんでしたよねこんな大きな門」


「基本あそこらへんは危険がないからね。あってもプレミアが何とかするし」


 オリジン周辺の魔物は基本的に低級の魔物しか生息していない。この間のグリンドラゴンが現れるといったことはめったにないのだ。仮にあったとしてもプレミアや高ランクの冒険者が何とかしてくれる。


 それでもあそこまで大けがをしてしまったのは、単に私の運が悪かっただけだ。


 前の馬車の手続きが終わり、いよいよ私たちの馬車に順番が回る。


「御者のギルドカードを確認。そこのお二人さん、ギルドカードを提示してくれ」


「ユキノちゃん、ギルドカードを」


「はい」


 門番の男に言われた通りギルドカードを見せる。

 ギルドカードには名前と職業、それとランクが表示されるので、入門の際に危険分子を入れないよう事前にチェックしているのだ。


「Dランク冒険者と、Bランク冒険者! へぇーお嬢ちゃん、若いのにすごいんだな」


「いやーあははは」


 Bランクの冒険者からは戦力として一目置かれる存在だ。それもユキノちゃんのように年若い子がそうならなおさら珍しがるのも無理はない。余計な詮索が入る前に抜けたほうがいいだろう。


「チェックはもういいかな」


「うん? ああいいぞ。しかしDランクか……」


「なにか問題でも?」


 大方Bランクのお付きにはランクが低いとか言われるのかと思ったけど、門番の男から出た言葉は想像とはまったく違ったものだった。


「いや、あんまり大きな声じゃ言えないんだが……」


 門番の男が声を縮めて近寄ってくる。


「ここの冒険者……ガリウスとその取り巻きには注意しろ。低ランクの冒険者をよく思っていない連中だ」


 まさかそんなことを言われるとは思っていなかった。


「ご忠告どうも。気を付けるよ」 


 高ランクの冒険者が低ランクの冒険者を文字通り下に見るのはよくあることだ。

 そう言った連中は、冒険者登録をする際初めから高い能力を持っていた連中に多く存在する。


 地道な努力を良しとせず、恵まれた能力に頼って生きてきたのだ。

 採取や低級な魔物討伐を生業としている低級冒険者はさぞ滑稽に見えているのだろう。


 門番のチェックも無事終わり、私たちはセカンドに入ることができた。


「なんか嫌なこと聞きましたね。なんで同じ冒険者なのにそんなことするんでしょう」


 さっき話を聞いてユキノちゃんはご立腹のようだ。偏見やうわさにとらわれないなんとも優しい子である。


「ありがとうユキノちゃん。その気持ちをいつまでも大切にね」


「はい。もしこの街でリタさんにちょっかい出す人がいたらわたしが消し炭にしますから安心してくださいね!」


「その気持ちはもう少し抑えたほうがいいかな!」


 訂正。

 ちょっと過激すぎる子である。

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