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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第四章
106/118

教育係と見限り

投下します。

宜しくお願いします。

「ぐぎゃああああああああ!!!!!」


 顔面を思いっきりぶん殴られたロズウェルは奇声を上げ、体を回転させながら半壊したテーブルまで吹き飛んだ。手を払い更なる追撃をするべくセリスは倒れているロズウェルの方へ向かう。


「ランクS……凄女……なるほどね」


 いつだったかヴィーちゃん、シルヴィア・アロンハートが話してくれたことがある。光魔法と回復魔法のエキスパートであり、武器を一切使わず己の拳のみで数多くの魔物を葬ってきた出鱈目な存在。あの『白の剣聖』に肉弾戦では向こうに軍配が上がるとさえ言わせた冒険者。


「只者じゃないとは思ってたけど、まさかランクSの冒険者だったとはね」


「あら、言ってなかったかしら?」


「ヴィーちゃんと知り合いだとしか聞いてないよ。でもそうか、その強さは納得。狂戦士みたいな存在っていうのもうなずけるよ」


「シルヴィアはあなたにどう話したのか、ぜひともあとで聞かせてちょうだい」


 ガラガラと音を立て、崩れたがれきの下からロズウェルがはい出てきた。顔の右半分は大きく腫れちぎれた触手は下を向いたまま動いていない。魔力の光が傷に集中しているので回復はしているようだがさっきまでの治癒の速さは失われていた。


「わざわざ出てきてくれるなんて。引っ張り出す手間が省けて助かるわ」


「ぐっ、忌々しい凄女めが! アベル、手を貸せ! こうなれば凄女もろともこの場にいる人間を消し去ってくれる!!」


「すみません。それは出来ないんですよ」


 ロズウェルの怒号に対するアベルの返答は、この場にいる全員が予想していなかった答えだった。


「な、んだと? アベル……どういうことだ?」


「言葉通りの意味ですよロズウェルさん。残念ですが力になることは出来ません」


「わ、私を裏切るのかっ!?」


「裏切る? とんでもない。裏切りというのは双方に信頼関係があって初めて成り立つもの。いつ、どこで、ボクがあなたなどと信頼関係を結びましたか? これはね、見限るというんですよ」


 突然目の前で内輪もめが始まった。どうやらアベルはロズウェルに協力しないらしい。アベルは杖で宙に円を描く。空間がねじれ、再びどこかへつながる穴を作り出した。


「転移魔法の類かしら」


「さすが凄女といったところでしょうか。ご明察です。まぁ正しくは空間魔法の類ですがね」


「それをわかってて逃がすと思う?」


 セリスはロズウェルからアベルに標的を変更した。光を浴びた拳で放たれる右ストレートが目にもとまらぬ速さでアベルを貫く。


 衝撃波がアベルの後ろの壁を破壊した。だが当のアベルは涼しい顔をして横にずれる。


「空間魔法ってのは応用が利くみたいね」


「いえいえそれほどでも。さすがにその速さを完全には避けきれませんでしたよ」


 アベルが羽織っていたローブを見せる。ズタズタになったそれを脱ぎ捨て、ねじれた空間へと入り込んだ。


「ダメージを肩代わりしてくれるローブなんですが、まさか一撃で使い物にならなくなるなんて。やはりここは引いた方がよさそうですね」


「あと一撃打ち込めば倒せるかしら」


「それは、やめておいた方がいいかと」


 にこやかだったアベルの表情が変わる。冷たく鋭い眼光をセリスに向け、


「それ以上やるとなると、ボクも多少は真面目に対応しなくてはなりませんので」


 ただならぬ気配を感じ取り、セリスは準備をしていた右こぶしをひっこめた。それを見届けると、アベルは再びにこやかな笑みを浮かべロズウェルに向き直る。


「というわけでロズウェルさん、ボクはこのへんでお暇しますので。あとは頑張ってくださいねー」


「そ、そんな! 待ってくれっ!! アベルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!」


 ロズウェルの悲痛の声もむなしく、アベルは空間の奥へと消えていった。

誤字脱字、ご感想があればお気軽によろしくお願いします。

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