教育係と凄女
少し短めとなります。
よろしくお願いします。
「バカな! 貴様どうやってここにっ!?」
予期せぬ人物にロズウェルは動揺が隠せない様子だ。突然現れたセリスに怒りの声を上げる。
「どうって、下から床を突き破ってきたに決まってるでしょ」
怒れるロズウェルとは正反対に、セリスは当然のように空いた穴を指さし答える。そのバカにしたような態度が、ロズウェルをさらに怒らせた。
「結界はどうした! 四方の結界を張り、誰もここへは来れないようにしていたはずだ!」
「ああ、進みが悪いと思ったらそんなもの張ってたのね。確かに何か割ったような感覚はあったけど。ごめんなさい、気づかなかったわ」
散々あおり散らかしたあと、セリスはそのまま倒れているヴェルグ卿の元へ行き回復魔法をかける。
「セ、セリス様……」
「しゃべんないで。あとでアリスも来るから今はこれで我慢してね」
ヴェルグ卿の腹から流れていた血が止まる。そしてそのまま壁にヴェルグ卿をもたれかけさせると、セリスは私にも回復魔法をかけてくれた。さっきまでの痛みや疲労感が瞬時に無くなる。かなりレベルの高い回復魔法のようだ。
「リタも、あとでアリスが来るから。今はこのくらいしか回復できないけど」
「ううん、十分だよ。ありがとうセリス」
立ち上がり落としたダガーを拾い上げる。人数はなんとか五分五分だ。
構えた先のロズウェルが襲い掛かってくるかと思ったけど、セリスが来てから固まってしまったかのように動かない。表情も先ほどまでとは打って変わり焦燥感がにじみ出ている。
「ロズウェル・フォード大神官。初めから怪しいとは思っていたけど、ようやく尻尾を出したわね」
「初めからだと? そう思いつつも、今まであえて泳がせておいたのか」
「教皇様の命令だったけどね。確たる証拠を待てって。でも教皇様は最後まであなたを信じていたわよ」
ダンッッ!! とロズウェルは触手で床をたたく。いらだちが抑えきれず、ソファーや本棚にも怒りの感情をぶつけた。
「おのれ教皇! 貴様らもそうだ! 貴様と聖女さえ来なければここまで計画に支障が出ることはなかった……っ」
ロズウェルは貴様と聖女、といった。聖女は言わずもがなアリスのことに違いない。けどロズウェルはセリスも恐れている。聖女の姉、としか教えてもらっていなかったけどそれ以外にも何かあるのだろうか。
「セリス、あなたは一体何者なの?」
「私? あれ、言ってなかったっけ。聖女アリスティアの姉にして―――」
ロズウェルの背中の触手がすべてセリスに向けられた。四方から迫る触手は魔力をまとい鋭さを増す。だがセリスはその場から一歩も動かず、向かってきた触手すべてを拳で叩き落していった。
先端から消滅する触手。再生し突撃するも、セリスの拳によって瞬時に魔力となり消えうせる。
そして触手の猛攻を難なくかいくぐり、
「――ランクSの冒険者。『凄女』って呼ばれたりもしてるわ。よろしくね!」
ロズウェルの懐に入り込み、そのまま右の拳を顔面に打ち込んだ。
誤字脱字、ご感想などあればお気軽にお願いします。
励みになります。