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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第一章
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プロローグ

 冒険者。

 植物採集から魔物退治までのクエストを生業とする、言ってしまえば何でも屋だ。


 階級はFからSまで存在し、その階級によって自分が受注できるクエストが決まっている。低ランクの冒険者が自分の実力以上のクエストに挑まないためのギルド側の処置だ。破ったらもちろん罰則がある。


 かくいう私、リタ・フレイバーもその冒険者の一人だ。冒険者ランクはD。

 といっても他の冒険者のように戦闘能力が高いわけでも魔力がずば抜けているわけでもない。

 

 私が冒険者登録をしたのは今から約三年前。最初は薬草集めや山菜集めなど、なるべく魔物とかかわらないクエストをこなしていた。力も魔力も平均以下だった私が冒険者としてやっていくにはそういった危険の少ないクエストをクリアしていくしかない。


 そんな簡単なクエストをこなしていくうちにいつしかEランクになり、今度は新米冒険者のクエストを助けるようになった。


 通常だったらただのEランク冒険者がそんなことをするのはありえないのだが、後から聞いた話だとどうやらギルド内で「新参者はまずリタ・フレイバーのところに行け」というお触れが出ていたらしい。長い間Fランクでありなおかつ誰もやりたがらない低ランクのクエストを制覇していることから、どの冒険者よりも信用におけるとギルドマスターが判断したようだ。


 かくして私は新米冒険者の面倒を見つつ、Eランクのクエストもこなしていくうちに、ようやくDランクになることができたのである。それがつい一か月ほど前の話だ。


「とにかくおめでとさんリタ」


「ありがとうゴルド」


 今日は私のDランク出世祝いということで、冒険者仲間に呼び出されていた。

 私の向かいの席に座る男はゴルド・バジーク。私と同時期に冒険者登録しその当時から交流のあった冒険者でランクはAランク。ギルド内でも名の通った冒険者だ。


「しかし相変わらず新米どもの面倒見させられてんのか。いい加減リタばかりに教育任せんのもやめろってギルドの連中にも言ってんのにな」


「いいよゴルド、私も好きでやってんだしさ」


 そう。Dランクに上がったからといって新米冒険者のサポートは終わらなかった。むしろDランクに上がったことでますます安全性が高くなったと評価され、新米冒険者からの訪問は前よりも増えていた。


「それに今はギルドも手一杯でしょ。魔物活発化の件もあるし。高ランクの冒険者も下の面倒に割いてる余裕はないはずだよ」


「それは……そうだけどよ」


 最近魔物が以前にもまして活発化しているのは事実だ。普段現れないような場所に高レベルの魔物が突然現れたりといったことも実際に起こっている。


「低レベルの魔物だって力をつけているって話だし、ますます放ってはおけないよ」


「ほんとお前は面倒見がいいんだかお人よしなんだか」


 ゴルドがやれやれとため息をついた。


「あんまり人のことばっかり考えんなよ? いざっていうときはまず自分を守れ。今日これなかったあいつらだって同じこというはずだ」


「わかったよ。お心遣い感謝いたします」


 ゴルドのほかにも、私には親友と呼べる冒険者仲間が何人かいる。みんなAランクで活躍しているすごい冒険者たちだ。そんな冒険者たちに気遣ってもらえるだなんてありがたいことである。


「シルヴィアもほんとは来る気満々だったんだが、急に竜種が滞在している街に飛来してきたってんであえなくな」


「ヴィーちゃんも大変だね」


「ああまったくだ。……竜種に同情するぜ。さてっと」


 ゴルドは注がれていた酒を飲み干しジョッキを置くと椅子から立ち上がった。


「そろそろクエストの時間だから、俺は行くぜ」


「クエスト前にお酒飲んでよかったの?」


「あんなもん飲んだうちにはいらねーよ。そんじゃあな」


 手をひらひらと振り、ゴルドは店から立ち去った。

 

 私もそろそろ戻るとしよう。今日はクエストやサポート依頼はなかったはずだ。

 久々にゆっくりできる。


 足取り軽く、私は移住先の宿屋に向かった。


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