固有魔法と魔改造
固有魔法って男のロマンてすよね。
………それは良いな。俺と戦う場合、相手は俺がどんな魔法を使うか分からないまま戦わなければならなくなるからな。戦闘が物凄く有利になるじゃないか。
「そもそもどういう系統の魔法が発見されているんだ?」
「そうだね、まず基本系統として挙げられるものが火、水、風、土、無の五つ。魔力を持つ生き物は最低でもこの五系統の中でどれか一系統の魔法を扱う事が出来るんだ」
と言う事は魔法を使ってくる魔物がいると言う訳か。
「一つ質問なんだが、魔法を使ってくる魔物とかいたりするのか?」
「そうだね。と言うか、魔力を保持する動物の事を魔物と言うから、全ての魔物は魔法を使うよ」
全ての魔物が魔法を使うのか!
「でも魔法の使い方が分からない魔物もいるんじゃないか?」
「知能が無い魔物でも、無意識の内に身体能力を上げる魔法を使っているんだよ」
成る程な。無意識の内に魔法を発動しているのか。
「そして、これらからさらに派生した物が光、氷、雷、闇、時空となるんだ」
「時空と言うのは時間、空間の事か?」
「そうだね。一見便利そうだけど、消費する魔力量が膨大だから使い手は限られてしまうんだ。だから時空系統の魔力質を持つ者は歴史上でも二、三人しかいないんだ。一番有名な時空魔法の使い手は、先代の勇者に付き従った、賢者様だね。もう亡くなってしまったんだけど」
時空魔法で老化を止めるとか出来なかったのか?そこまで万能じゃないのかもしれないな。
「でも、固有魔法と言うのは時空魔法以上に貴重なんだ」
「何でなんだ?」
「固有魔法と言うのはその名の通り、その魔法を保有してる者しか持ち得ない物だからだよ」
ふむ、成る程な。俺の固有魔法が何なのか分からないが、まあ出来るだけ強い固有魔法が良いな。
「例えばだが、有名な固有魔法の使い手で言うと、アルゲンテア竜国の竜姫であるフレーズは竜魔法の使い手だし、フルウム帝国の皇太子であるキルシェは爆裂魔法の使い手でもあるね。他にも毒魔法とか天魔法とか色々あるね」
固有魔法の使い手自体は結構いるんだな。もしかすると魔王も使ってくるかも知れんな。
「後は、君の身近にも二人、固有魔法の使い手がいるよ」
「おお、まじか!誰と誰だ?」
「蘭島君?であってたっけ?確かあの子は聖魔法の使い手だったね」
ああ、完全に頭から抜けていた。あいつも固有魔法の使い手だったか。でも、あいつは特異技能のおかげで使えるようになったんだから固有とはちょっと違う気がするがな。
「後は姉さんも固有魔法の使い手さ」
「あいつがか?」
「その通りだとも。剣の才能だけでなく固有魔法の才能まであるなんて、姉さんはなんて凄いんだ!」
はいはい、分かる分かる。しかし、ペアが固有魔法の使い手とはな。今度は魔法ありで戦ってみるか。
「で、何の能力なんだ?」
「今度姉さんに直接聞いてみたら?それを僕から言ったら、戦う時に君が有利になってしまうからね」
確かにな。まあ、直接聞いてみるか。
「俺の持っている固有魔法がどういう能力かと言うのはどうやって分かるんだ?」
「うーん。そこまでは分からないな。その質問も一緒に聞けば良いんじゃない?」
「そうか、じゃあそうするわ」
明日の訓練はペアいるんだろうか?まあ、見かけたら聞いてみるか。
「それじゃ俺はもう上がるぞ」
「ああ、僕はもうしばらく入っているよ。じゃあね」
「ああ、またな」
しかし、興味深い事が聞けた。固有魔法か、一応後でファンに念話する時に聞いておくか。
「あれ、そう言えば食堂ってどこだ?」
「………向こうっすよ」
おお!プラムか、びっくりしたわ。
「………お前まさか俺の風呂を覗いてた訳じゃないよな」
「なっ、何をバカなこと言ってるっすか!たまたま見かけたから声をかけただけっすよ。勘違いしないでほしいっすね」
本当か?まあ、どうでも良いんだがな。
「じゃあ、すまんな。ありがとう」
「いえ。別に感謝される程の事はしてないっすよ。それじゃまたっす」
やっぱり反応が面白い奴だな。
それから真っ直ぐ歩いていると食堂にたどり着いた。
「すまん。遅れた」
「いえ、始まったばかりなので大丈夫ですよ。」
む、なかなか遅れたと思っていたがそうでもなかった様だな。皆、部屋でゆっくりしてたのかも知れんな。
それじゃあ俺も何か食べようかな。さっきから気になっているのが身が紫色の魚な。あれ凄い気になるんだが。
「あの、剱崎君」
「ん?どうした、天川?」
「二人っきりで話してたみたいだけどペアさんと何を話していたの?」
おお、なかなかストレートに聞いてくるな。
「模擬戦で俺が勝ったから褒美は何にしようかって言う話だよ」
「そうなんだ。ありがとう」
全然納得いってなさそうな顔だけど、まあいいか。それにしてもさっきの魚、普通に美味いな。
「それでは今日の予定はこれにて全て終了でございます。各自部屋に戻って体を休めて下さい」
これで終わりか、長い一日だったな。
自分の部屋に戻った俺は、早速ファンに念話をした。
『もしもし、ファンか準備出来たぞ』
『おお!そうか、じゃあ送るぞ!』
その言葉を聞くや否や、俺の部屋の真ん中に魔方陣が展開し始めた。そしてその魔方陣から一人のメイドが現れた。こいつがあの人形なのか?
[久しぶりでございますね。剱崎様。]
「おお、一瞬何か分からなかったぞ」
どうもそうらしい。しかし、見違えたもんだな。最初は、そのまんま人形だったけど、今ではアンドロイドみたいだな。
[おや、あんなに酷い扱いをしたのに、もう私の事をお忘れになったのですか?]
「いや、言い方の問題じゃないか」
[酷いですね。しかも、私の事をあんな風に散々に扱っておきながら結局倒せなかったじゃないですか。]
いや、確かにそうだけど。
「まあ、確かにな。すまなかったと思っている」
[それなら良いんですけど………。]
あ、気付いたんだが、いきなりこんな奴が俺の部屋に増えてたらプラムも驚くぞ。隠す方法が無いか聞かないとな。
「そう言えばだが、その体どうするんだ?」
[?どう言う事でございますか?まさかもう一回自爆しろと言う意味でおっしゃったのですか?]
「いやそんな訳無いだろ。その見た目じゃあ目立つから隠れる方法とか無いのかって意味で言ったんだよ」
と言うか、自爆しろなんて言うはずないだろうが。
[それならば、ファン様からこう言う物を預かっております。]
「ん?この指輪何なんだ?」
[婚約………収納指輪でございます。]
今婚約と聞こえたんだが。
「収納指輪?異世界召喚のテンプレみたいな物か?」
[そうでございますね。その中に入れた物の時間を操作できます。]
成る程、進めたり戻したりも出来る訳だな。
[但し限界はございますのでくれぐれも注意してご使用して下さい。]
「分かった。つまりこれにお前を収納する訳だな」
[なんと、血も涙も無い様な人ですね。流石はこの私に自爆しろと命令なさっただけはあります。]
いや、正確には足止めをしてくれ!と命令はしたけど、自爆しろとは言ってないぞ。
「事実無根だ。と言うかこれを渡したのはお前だろうが」
[すみません、聞こえませんでした。まだ改造されたばかりなので耳付近のパーツの調子が悪いみたいです。]
そんなもん絶対嘘だろ。
「お前、改造されてからますます人間っぽくなってないか?」
[よく言われます。]
「会ったの俺とファンだけだろうが」
[今のところ100パーセントの確率で言われてますね。]
「確率ではな。結局二分の二でしかないぞ」
こいつよく喋る様になったな。
「もういいから、とりあえず収納されとけ」
[お断りです。]
「あれ、マスターの権限は俺にあるんじゃ無いのかよ」
[そうですが、断ります。]
何なんだ、こいつは。
「いいから、入れよ」
[仕方ないですね。入ってあげても良いですよ。]
なんでこいつこんな上から目線なんだ。
[あ、一つ言い忘れてました。]
「なんだ?」
[お願い事が決まったから、ファン様の代わりにお伝えします。]
あ、あったなそう言うの。すっかり忘れていたんだが。
「で、俺に何をして欲しいんだ?」
[3つの選択肢の中から選んで下さい。]
あ、そう言う感じなんだな。意外だ。
[一、ファン様と子供を作る。二、ファン様と結婚する。三、ファン様に毎日必ず念話する。さあ、どれになさいますか?]
「まともな選択肢が三しか無いんだが?」
最後までご覧になって下さり、ありがとうございます。
この毒舌メイドキャラめちゃくちゃ好きなんですよね。
次も出します。