第一王女と戦闘訓練
やっぱり、戦闘描写って難しい。
俺がしばらくプラムで遊んでいると、突然俺の部屋の扉がノックされた。
「すみません~、剱崎様のお部屋でしょうか~?」
「そうだが、お前は誰だ?」
「大変失礼しました~、私の名前はカリンと申します~。剱崎様の専属メイドを務めさせて頂きます~。以後、お見知りおきを~」
俺達一人一人に専属メイドがいるのか。というかこいつ、やけに間延びした喋り方をするな。
「分かった、で何の用なんだ?」
「アプリコット様からですね~“勇者様方は馴れない環境で疲れているだろうから、腹を満たすためにも一度食堂の方に集まるように伝えて下さい”との事なので~、食堂まで案内しに来ました~」
「成る程。分かった、すぐに出る」
もうそんな時間か。そこまで腹は減ってないが、まあ一応食堂に向かうか。
「待ったか?」
「いえ~、全く待っていませんよ~。それでは~、食堂まで案内させていただきますね~」
「ああ、頼んだ」
それからしばらくカリンの案内の下、城の中を歩いていたんだがその途中、ふと気になった物を見つけた。
「すまん、ちょっと質問して良いか?」
「構いませんよ~。で~、何ですか~」
「さっき通った通路の右側に、何重にも鍵がかけられてある扉があったんだが、その奥には何があるんだ?」
「ああ~、あの扉ですか~。あの扉の奥はですね~、先代の勇者が倒した凶悪な魔物が封印されていると言う噂です~」
「ほう、………ああすまん、案内を続けてくれ」
「かしこまりました~」
ふむ、凶悪な魔物か。………なかなか面白そうな話だな。後、先代の勇者とかいたのか。
そんな事を考えている内に、俺達は食堂に辿り着いた。どうやら俺達が一番最後らしい。そして、俺が食堂の空いている席に座ったと同時に、皆が一斉に食事をし始めた。俺も何か食べるか。しかし異世界だからか、見たこともないような料理があるな。全体的にカラフルな料理ばっかりだ。
「召し上がっている最中に失礼します。それでは、全員揃ったようですので、少しだけこれからの予定を話したいと思います。召し上がりながらでも耳を傾けてもらえれば幸いです」
「まず、食事をした後は早速ですが、外の訓練場に向かい、そこで戦闘訓練を行いたいと思います。まあ初日ですから軽くですけどね。そして軽く風呂に入って汗を流した後、再び此処で食事をし、皆様慣れない環境で疲れていると思いますので、早めの就寝と言う流れになっております」
成る程、飯を食ったらいきなり戦闘訓練と言う事になる訳だな。じゃあ、急がないと。戦闘訓練の時間が勿体無いからな。
「あの、剱崎君。ちょっと話したい事があるんだけど、この後少し良いかな?」
「ん?ああ、全然構わないが?」
「ありがとう、後で歩きながら話すね」
「分かった」
なんと天川から話があるらしい、一体何なんだろうか?全く心当たりがないんだがな。
「それでは皆様食べ終わったようですので、訓練場へ向かいたいと思います。皆様、付いてきて貰えますか」
おお!やっとか。待ちくたびれたぞ。
「良し、じゃあさっさといくぞ天川」
「あ、ちょっと待ってよ剱崎君」
「それで話ってのは、何なんだ?」
「ええと、ここで聞いたことを誰にも言わないって約束出来る?」
「出来るぞ」
「あのね、さっきあの場では言ってなかったけど、実は私は能力を二つ持っているんだ」
…ほう、これは驚きだな。二つ持っているのは、俺と蘭島位だと思っていたんだがな。あんなチートみたいな能力の他に、もう一つ能力を持っているとは。
「それはどんな能力なんだ?あ、出来たらで良いから教えてくれ」
「ああ、ええとね。もう一つは五感で感じた物を任意で全て記憶する事が出来る能力なんだ」
「成る程、と言う事は二つの能力は相性が良いな」
「確かにそうだねっと。もう着いたみたいだよ、ほら」
天川の指差す方を見てみると、広めの運動場みたいな場所があり。そこにはもう全員が並んでいた。また一番最後か。
「それでは姉様、後はお願いします」
「うむ、私に任せておけ」
…ん?姉様?姉様と言う事は第一王女が団長なのか。じゃあ、他の王子とかも重要な役職に就いてんのかもしれないな。
「さて、アプリコットに代わりに、此処では私が説明を担当しよう。その前に、軽く自己紹介をしておこう。私の名前はペアと言う。騎士団の副団長でもあり、そして第一王女でもある」
「ちなみにだが、何故団長ではなく副団長の私が戦闘訓練を担当するかと言うとだな、実は団長は今王の護衛の任に就いているため城を離れているからだ。団長が任務から無事に帰ってき次第、団長が戦闘訓練を担当する事になるだろう」
「では、戦闘訓練と言っているが、実際に何をするのかを説明する。今日からしばらくは皆、それぞれの能力に慣れて貰うために、私と模擬戦を行ってもらう。自分の能力はちゃんと把握しておいた方が良いからな」
「それでは各自、そこの箱から武器を取ってくれ」
確かに、自分の能力の把握は基礎中の基礎だな。それにしてもいきなり実戦か。なかなかにハードな訓練だな。
「そこのお前は武器を取らなくても良いのか?」
「ん?ああ、そうだが」
「そうか。じゃあ、少し早いが私と模擬戦しようか」
「………了解した。で、何処で模擬戦するんだ?」
「向こうの少し開けたところだ」
「分かった」
………まじか、面倒な事になってしまったんだが、どうしようか。でも、俺って勝負事には手を抜けないんだよな。
「じゃあ、模擬戦をする前に名前を教えてくれないか?」
「剱崎だ」
「分かった。じゃあ剱崎!勝負だ!」
おっと、いきなりかよ!ったく。じゃあ、まずは武器が無いと始まらないからな。
「ソードクリエイト」
「おお!成る程!だからさっき武器を取らなかったんだな!」
「そう言う事だ」
手元に出現した刀で攻撃を防ぐ。…こいつ力強いな。と言うか念力が使えないのが痛いな。でも、俺が念力を使える事を出来るだけばらしたくないんだよな。
「なかなかやるな!剱崎!だが、こんなもんじゃないぞ!アーテル流剣術、竜牙!」
「おっと危ないな」
今、剣閃が飛んできたぞ。剣閃を飛ばすってどういう技術だよ。俺の直感が鋭くなかったら今の一撃、十分致命傷だぞ。
「ソードクリエイト、50本」
「おお?!アーテル流剣術、竜牙乱舞!」
上から降ってくる50本の剣を全て砕いたか。だがそれにより、懐ががら空きだ。一瞬で懐に入り込んでから喉元に刀を突き付ける。
「ほい、王手」
「ぐっ!………参った、私の負けだ」
ふう、なかなかに疲れた。しかし、見た事が無い技を見る事が出来たから、収穫は十分にあったな。アーテル流剣術か、面白そうだな。
「しかし、剱崎は強いな。油断していたとは言え、私に勝つとはな」
「まあ、たまたまだ」
「たまたまでも勝ちは勝ちだ。そうだな、勝った褒美を与えよう。訓練が終わった後、少し残れ」
「………分かった」
さて、面倒な事になった。皆からの視線が凄い痛いんだが。仕方ないと言えば仕方ないんだが、厄介極まりないな。
「やはり、剱崎は強いな」
「真鍋。嫌、そんな事は無いぞ。今回は相手の意表を上手く突く事が出来たから勝てたんだ。多分だが、次戦ったら負けるだろうな」
「………そうでもないと思うが」
今のはまぐれだったと言う話の方向に持っていけたら良いんだが。まあ無理か。
「それでは皆準備が出来たようだな。じゃあ、一人一人戦って行くぞ」
それから俺以外の模擬戦が始まった。善戦したのは天川、真鍋と後数人位だった。誰でも良いから俺より圧倒的に勝って、俺の印象を塗り替えてくれないかな。しかし、俺の願いも虚しくその後ペアに勝つ奴は現れず、今回の訓練は終わった。
「良し、それではこれで訓練を終了する。各自解散。それから剱崎、………こっそり皆に紛れて帰ろうとするな。バレバレだ」
ちっ、バレたか。案外上手くいくと思ったんだがな。
「………………何の用ですか」
「お前に私に勝った褒美をやろうと思ってな。………そうだな。剱崎、私はどうだ?」
「…………………………は?」
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