召喚理由と念話
体調管理の大事さを学びました(言い訳)。
真っ白い光が収まると、クラスメイト全員が、神殿のような場所へ転移していた。…間に合った様で良かった、少し心配していたんだ。
「やりました、皆さん!召喚成功です!」
「おお!流石です姫様!しかも、こんなに多くの勇者を召喚なさるとは!これなら、国王様も満足して頂けるでしょう!」
…ふむ、この国はどうなんだろうな?今の状況をみて判断すると、まだ何も分からないんだが。まあ少なくとも、今、俺達の目の前にいるめちゃめちゃ動きづらそうなフリフリのドレスを着たこいつが、俺達を召喚したという事と、召喚された時からずっと何者かが俺達を天井から監視しているという事が分かった。
…物凄く厄介事の臭いがするんだがな?俺達が呼ばれた本当の理由は、王位争奪に向けて強力な戦力を確保する必要があるため、とかそんな面倒な事だったら絶対に嫌だぞ…。
「あ、…んっんん。大変失礼いたしました。説明が遅れましたが、私はここ、アーテル王国の第2王女、アプリコットといいます。私は勇者様方のお世話係でもありますので、今後、何かと会う機会が増えると思いますが、なにとぞよろしくお願いいたします」
今のを見て、少し皆の雰囲気が和んだ。しかし、第2王女がいるということは、もしかしたら第1王女や第3王女、あるいは第1王子や第2王子とかもいるかもな。…さっき思ってた事が現実味を帯びてきたな。だが、なんで第2王女であるアプリコットが俺達のお世話係に選ばれたんだ?第1王女や第1王子なんかは今王城に居ないのか?
「早速ですが、私達が勇者様方をお呼びした理由をお話したいと思います。先ほど少しだけ話しましたが、勇者様方が召喚されたこの国の名前はアーテル王国と言います。私達の国はアトファルス大陸の南西部に位置しており、魔王軍の根城である暗黒大陸とは反対となっています。そのため、しばらくは魔王軍の侵攻の恐れはありません。それから…………」
よし、長かったから要約するぞ。
まず、俺達が召喚されたのはアトファルス大陸の南西部に位置するアーテル王国の王城。この国の最大の特徴は、ダンジョンの保有量だ。この国はダンジョン産業国とも呼ばれており、ダンジョンの保有量で言えば他の追随を許さない。そのため、他の国から大勢がこの国のダンジョンに修行しに来ると言う。俺達も一定の強さに達したら、ダンジョンで修行を行うらしい。物凄く楽しみだ。
また、召喚理由は魔王軍の侵攻が激化したからだが、この国は魔王軍の侵攻から一番遠い位置にあるので、俺達はしばらく出番がない。まあ、魔王を倒さないと元の世界には帰る事が出来ないので、魔王討伐と言う点においては、この国が一番不利な条件だな。
逆に今、一番魔王軍との交戦が激しいのがフルウム帝国。ここは、全ての国の中で唯一奴隷制度を推進しており、また色んな国に戦争を挑むなかなか好戦的な国らしい。後にこの国の勇者なんかと戦う事になりそうだな。
後は、特異技能等、既に知っている事だったので説明は省かせてもらおう。
「それでは、説明が終わりましたので能力の確認に参りましょう」
「あの、……一つ質問しても良いですか?」
「ああ、申し訳ございません、私の説明に何か至らないところがありましたでしょうか?」
「あ、いや、あの、別にそういう、訳じゃなくて、あの、僕はただ王様に謁見しなくても良いのかな?って、あの、思っただけです、すいません……」
おいおい、謝るなよ。……というか誰だよ、今質問した奴。おどおどしすぎだろ…。後、あのって言い過ぎだ。
「別に謝る必要はないですよ、勇者様。答えとしては、今、国王様は他の国王様方との会談に参加いているため、この城にいないからです」
…ふむ、成る程。それが本当かどうかは置いといて、まあ今は一致団結して魔王軍を倒さないといけないからな。
「他に何か質問はありませんか?………何も無いようですので能力の確認に参りましょう」
やっとか、説明が長過ぎて待ちくたびれたぞ。…さて、他の奴等はどんな能力を持っているんだろうな?やっぱり、戦闘を有利に進めるのは情報だからな、持っていて損は無いだろう。
「先ほど申し上げました通り、勇者様方はそれぞれ、神様から強力な能力を授かっていると思います。魔王討伐のために一人一人の能力を把握する必要があるので、能力を確認した後は、その能力がどんな能力なのか、私達に教えてくれませんか?」
…ふむ、特に反対意見は出てこないな。少なくとも、オタク達が反対したり色々起こると思ったんだが。
おっと、早いな。もう、俺の番が来たか。
「それでは、貴方様の名前を教えてもらえませんか?」
「…剱崎だ」
「そうですか。では能力を教えて貰っても宜しいですか?」
「…剣を創造する事が出来る能力だ」
「……そうですか、分かりました。では、貴方様の名前を教えて貰っても宜しいですか?」
「もちろん、良いですよ。私の名前は天川沙弥と言います。自分が名前を知っている魔法を全て使う事が出来る能力を持っています」
「なんと?!……分かりました。では、貴方様の名前は……」
ふむ、天川は流石だな、物凄くチートだ。どんな魔法でも使える能力なんて尋常じゃないな。……俺もそういう能力の方が良かったな。
ちなみにだが、蘭島は聖剣を召喚する能力と聖なる力を操る能力と言ういかにも主人公っぽい能力。真鍋は肉体の強度を上昇させる能力、間宮は回復能力だった。…この四人で組んだら物凄くバランスの良いチームになるな。
「それでは能力の確認が終わりましたので、早速ですが勇者様方をそれぞれの部屋に案内したいと思います。私の後をついてきてもらえますか?」
そうして俺達はそれぞれ自分の部屋に案内された。俺の部屋は右隣が天川、左隣が蘭島といった感じになった。……まずい、一人になったがする事が無いな。……ファンへ念話してみるか。
『……あ、これもう繋がってんのか』
『?!………なんだ剱崎ではないか!驚かせよって!いきなり念話をしてくるんじゃない!』
『いや、これ、何も予兆が無いから無理だろ』
『む、確かに。………で、何の用だ?』
『ああいや、特にこれといった用は無いぞ。暇だからファンに念話しただけだ』
『おお!それは嬉しいぞ!ああ、それとあの戦闘用人形だが、もう修理は完了したぞ!いつそっちに送ったら良い?』
あれもう終わったのか。割りとボロボロだった気がするんだが、仕事が早い神様だな。
『今日の夜にでも俺から念話するよ』
『分かった!』
『ああ、それじゃ』
念話してみたけど、電話とあんま変わんないんだな。でも、いきなり頭に直接声が響くのは少し嫌だな。……いい加減面倒になってきたな。
「で、いつまで天井にいるつもりなんだ?」
「?!………よく分かったすね」
そう言って天井から降りてきたのは、顔以外を黒色の服で覆った少女だった。…襲い掛かってこないという事は、戦うつもりは無さそうだな。
「まあ、一応な」
「………で、自分をどうするつもりっすか」
「いや、どうもしないけど」
「は?いや、自分はあんたの事を監視してたんすよ?」
「知ってるが、それがどうした?」
面倒だから何もしないだけなんだが。こいつは、どうしてそんな唖然とした表情を浮かべているんだ?
「………呆れたっす。いいっすか?まず、自分を監視していた怪しい輩が目の前にいるのに、どうして何もしないんすか?!」
「面倒だからだな」
「……………呆れて物も言えないとは、まさにこの事っすね」
「あ、そうだ。じゃあお前の名前はなんだ?俺の名前は剱崎刃だ」
「………私はプラムっす。宜しくするつもりは無いっすよ」
「ああ、別にそれでいい。後、別に監視は続けてて良いからな」
「………もう剱崎に関しては何も突っ込まない事にするっすよ。………それじゃ失礼するっす」
そう言って、プラムは天井に帰っていった。…ふむ、面白い奴だったな。
「………あの、じっと顔を見るのを止めてもらっていいっすか?監視に集中できないっす」
ご覧になって下さり、ありがとうございます。
まだまだ、ヒロインは出していく予定です。