裏切り者と戦闘狂
新しいやり方に挑戦してみました。見にくかったら申し訳ないです。
俺達が城に着く頃には、もう外が若干赤らんでいた。戦っている時は分からなかったが、結構な時間が経っているんだな。
………考えてみたら一日の半分を戦いに費やしたのか。こんなに充実した一日は久しぶりだな。
「それでは、今回のダンジョン遠征はこれで終わりとする!各々自分の部屋で休みを取ってくれ!夕食時にはこちらから呼びに行く!」
しかし、誰も予想しなかっただろうな。まさかいきなり魔王の手下との対決なんてな。
まあでもよく考えたら帰還するチャンスだったのかもな。最初のダンジョン遠征で魔王に会うなんてなかなか無い機会だし。
「………剱崎、逃げようとしても無駄っすよ。説明して貰うっす」
「そうだぞ、剱崎!ドラゴン討伐の時何処にいたのか、私達に説明して貰うからな!」
ああ、完全に忘れてたわ。あの戦いは説明が面倒なんだよな。別に深い理由じゃなくて、ただ単に強い奴と戦いたかっただけなんだが。
「………別に逃げようとした訳じゃないぞ。一旦部屋に戻ろうとしただけだ」
「本当にそうか?まあ、そこは重要じゃないから良いとするか。それでは私達も一緒に剱崎の部屋に案内しろ」
………更に面倒が増えるが仕方ない、全力で逃げるか。
「縮地、ソードクリエイト、縮地」
「あ!待て、剱崎!」
剣(完全に壁)を創造する事で、途切れない縮地を可能にする技だ。
………咄嗟に考え付いた逃走方法だが、これは新しい必殺技に使えるな。
ーーペアsideーー
くそ、逃げられたか。剱崎の奴め。
「………何で、剱崎を易々と逃がしてるんすか」
いや、今のはどう考えても私の責任ではなく剱崎の責任だろ!
「…仕方ないだろ!剱崎があんなに速く逃げる事が出来るとは思わなかったんだから!」
「………まあ、剱崎を逃がしたのは私の責任でもあるっすから、私も探すのを手伝うっすよ」
「………面目ない」
捕まえたら今度こそ説明して貰うぞ!剱崎!
ーー剱崎sideーー
さて、あいつらから逃げ切れたのは良いんだが、逃げるのに夢中で周りを見る事を忘れていた。ここ何処だ?
「あれ~。剱崎様ではないですか~。どうしてこんな所にいらっしゃるんですか~?」
おお、カリンか。それはこっちのセリフでもあるぞ。
「いや、ちょっと面倒な奴等から逃げている内に道に迷ってしまったんだ。お前はなんでこんな所にいるんだ?」
「ここは従者用の住居なんですよ~」
ああ、そうだったのか。
「俺を部屋まで、………やっぱり訓練場まで案内してくれないか?」
「いや~、それは無理ですね~」
まあ、カリンにも用事があるだろうしな。強制するのは良くないよな。
仕方ないから自分で探すか。
「そうか、すまんな」
「いえ~、剱崎様が謝る必要はないですよ~」
「だって俺に殺されてしまうんだからな」
………いきなり口調がガラッと変わったな。
「お前さぁ、俺の天川にいつまでも付きまとってんじゃねーよ」
と言う事はこいつの正体は男子の誰かだな。
問題はカリンに乗り移ってるのか、それとも操ってるのかだな。 操ってるんだったら元凶をぶっ飛ばすだけで良いんだが、乗り移ってる場合は対処が面倒だな。
「おっとそうだ、大声を上げるんじゃねーぞ。こいつがどうなっても良いのか?」
脅しのためかカリンが自身の首にナイフを当てる。
………ぶっちゃけて言うと全然構わないんだが、ここはこいつの正体を暴くために一肌脱ぐか。
「………」
「それで良いんだよ。………じゃあ俺の後についてこい」
しばらく知らない道を歩かされ、俺は城の外に連れ出された。
………こいつ大丈夫か?道に迷ったりしてないよな?
「何処に行くつもりなんだ?」
「森の奥だ。お前の死体を片付けやすいからな」
「へー」
成る程、俺を殺す準備は万端なのか。
そんな事を話しているとカリンの足が止まった。ここが目的地の森か。
「おっと」
意識が無くなり倒れそうになったカリンを慌てて支える。と言う事は能力の使用を止めた訳だ。
森の奥から二人の男が出てきた。名前が分からないクラスメイトと高級そうな服を着た貴族の二人だ。
「良くやったぞ、瀬波。これなら我が主もお喜びになり、貴様の報酬も増えるだろう」
「本当か!」
この高そうな服を着た男の主が依頼したらしいな。
「さて、我が主の野望に貴様は邪魔だ。そのため、貴様にはここで死んで貰う」
「その野望と言うのは具体的に何なんだ?」
「身の程をわきまえない奴だな。まあ良いだろう、冥土の土産に聞かせてやろう」
さて、無駄に話が長かったので要約する。
我が主が大賢者の天川沙弥に一目惚れした。
しかし、天川沙弥の周りにはほぼ確実に貴様がいる。
貴様が邪魔でなかなかアピール出来ない。
よって殺すと言う感じだ。
………思ったんだが少し短絡的過ぎないか?殺す前にもう少し何クッションか置こうぜ。
「どうやって俺を殺すつもりなんだ?」
「周りを見渡してみろ」
言われて周りを見渡すと、全身を黒い布で覆った奴等が姿を現した。
これは、………少し楽しくなってきたな。
「こいつらは王都暗殺ギルドに所属している高ランクの暗殺者達だ。流石の勇者と言えど、この人数の敵に囲まれれば一堪りもないだろうな」
高ランクの暗殺者か、良いね。
最近何か足りてないな、と思ってたんだがその正体が今分かった気がする。
多分だが殺し合いだ。最近は訓練ばっかりだったし、魔王戦も殺さないよう手加減しての戦いだったから足りてなかったんだ。
しかし、今回の戦いは敵側が全力で殺しに来ているからな。遠慮なく思う存分刀を振るえる。
「………貴様、なんで笑っているんだ?」
「あ?ああ、笑う理由なんて楽しいからに決まってるだろう?」
「既に恐怖で狂っているな、可哀想に。一思いに殺してやれ」
良し戦闘開始だ。
ーープラムsideーー
剱崎の奴、何処に行ったんすかね。城中探しても見つからないっすけど。
「おお!プラムか!」
ちょうどペアが来たっす。話を聞いてみるっすか。
「………ペアっすか。剱崎はいたっすか?」
「こっちにはやはり剱崎はいなかった!そっちはどうだ?」
そっちにもいないって事は、剱崎が城にいない可能性が出てきたっすね。
………それは不味いっす。
「………こっちにも剱崎はいなかったっす。………もしかしたら城の外にいるかも知れないっす」
「な!城の外だと!」
「………そうっすね。まだ分からないっすけど」
「城の外だとしたらかなり不味いぞ!外にはあの犯人がいるじゃないか!」
ペアはある事件で危うく殺されかけたっす。
それは王都で4ヶ月の間に300人もの人が謎の死を遂げた怪事件。その犯人は未だに捕まっていないっす。
王国最強のペアですら、もう少し警備隊が駆けつけるのが遅ければ殺られていたっす。そのぐらい強い犯人と剱崎がもし会ってしまったら。
「私は外に剱崎を探しに行く」
「………私も行くっす」
「分かった。じゃあ、早速行くぞ」
………剱崎が無事である事を祈るしかないっす。
最後までご覧になって下さりありがとうございます。
次の話から自分の苦手な戦闘シーンが始まります。