遭遇と無双
主人公無双回。
さてこれからダンジョンの奥に進んでいって、魔物を倒す訳なんだが。少し気になっている事がある。
「ペア、このダンジョンっていつもこうなのか?」
「ん?何を言っているんだ?」
「だから、あんなに冒険者がいた割には少し静か過ぎないか?」
「!確かに言われてみればそうだな」
さっきから空間掌握で俺達の周りを探っているが、他の冒険者も魔物すらも見つからない。
「………何か異変が起きているのかもしれないっす」
「そうだな」
ん?奥の広場みたいな場所に何かいるんだが。あれは何なんだ?
「奥に何かいる。気を付けろ」
「そうか!皆奥に魔物がいるから気を付けて進むぞ!」
しかし、なんだあのフォルムは?人に角と尻尾が生えたみたいな、…もしかしてあれが魔族とか言う奴か?
「よくぞ、ここまで辿り着いたな、勇者共」
「貴様は何者だ!」
「我は七魔王の一人、六道輪廻のクロムだ」
おお!魔族かもとは思っていたが、いきなり魔王との対決か!俺好みの展開だ。と言うか魔王って複数人いたんだな。少し楽しみになってきたぞ。
「な!魔王クロムだと!貴様が何故ここにいる!まさか勇者達が強くなる前に殺すつもりではないだろうな!」
「そんなつまらない事をする訳が無いだろうが」
なんだ、魔王と直接対決する訳じゃないのか、つまらんな。
「私の目的は今の貴様らの強さを知る事だ。いでよ、我が手下!」
そう魔王が叫んだ瞬間、地面に巨大な魔方陣が敷かれた。そして、その中から巨大な竜が姿を現した。
…今なら皆竜に注目しているから魔王に突撃してもばれないな。
「ロックバレット」
「む、なんだ貴様は」
土魔法で大きい岩をぶつけた位では何のダメージにもならないか。と言うか岩があいつに触れる前に消滅したんだが。
「剣の勇者だ」
「今の攻撃は剣関係ないと思うが。ふむ、貴様に我と戦う資格があるか、試してやろう」
その言葉と同時に巨大な火球があいつの周りに生成された。
「我の魔法を防ぐ事が出来るかな?」
「エンパワー・スペル、ウォーターボール」
実践では初めて昇華魔法を使ったが、やっぱり効果が凄まじいな。
普通のウォーターボールがサッカーボール位の大きさだとすると、昇華魔法を使ったら人が軽く包み込める大きさになるな。
「おお!手加減したとは言え我の魔法を相殺するとは!」
「エンパワー・スペル、ソードクリエイト×100」
今度は貫通力強化を上昇させた剣(完全に槍)を放ったんだが、まあ足止めにもならないだろうな。
と言うか俺は思いっきり魔王と戦っているが、あっちはどうなっているんだ?
「よし今だ!皆、一斉に攻撃魔法を放て!」
成る程、ペアが皆の指揮をとって竜を倒そうとしているのか。
「くらえ、聖剣エクスカリバー!」
「硬化、肉体強化。ふん!」
「クリムゾンフレイム!」
「ジャッジメントクロス!」
異世界に来てから、皆がどんどん厨二病になっていく件について皆と語り合いたいぞ。
………おっと、危なかった。火の玉が今、俺の頭上を掠めていったんだが。
「我との戦闘中に余所見をするとはな」
「すまんな。別にお前との戦闘がつまらない訳じゃないから安心しろ」
だだ、少し向こうの戦闘が心配だっただけだ。
「む、我が手下が押され気味だな」
「ついでにお前も殺られてくれるとありがたいがな」
「魔王がこんな所で殺られるわけが無いだろう」
しかし、頑丈な体だな。さっきから魔法とか剣をバンバンぶつけているのにも関わらず、傷一つ付かないんだが。
「そろそろ我も魔界に帰らねばならんな」
「もう帰るのかよ。まだまだ戦い足りないだろう?」
「まあ、そうだが。我の目的は偵察だからな。報告の義務がある」
む、こんなに強い敵と戦う機会なんて滅多に無いから逃がしたくないんだが、魔法の弾幕が邪魔で近寄れない。
「そうだな。では我が帰る代わりに、置き土産を残しておこう」
置き土産だと?なんだそれは?
「我が手下共、姿を現せ!」
魔王の呼び掛けに答えるように、地面を覆い尽くす程のゾンビが姿を現した。何体か強そうな奴もいるな。
「我は魔界に帰る!その代わりにそいつらと戯れるが良い!」
魔王は帰ってしまったが、こいつらで我慢するか。
「おい、ペア!」
「なんだ剱崎!と言うか今までどこにいた!」
「それは後で言うから、俺がこいつらを相手する!」
「一人でか?!」
当たり前だろ、全部俺の獲物だ。
「ソードクリエイト。そろそろ生身の戦闘技術も磨かないとな」
最近は魔法とか能力しか使ってなかったからまともに斬り合ってないんだよな。
磨かないと実践で使い物にならなくなる。と言うか斬り合いたいだけな気もするがな。
「皆の邪魔だろうが!どけ!」
まずは竜退治の邪魔になる奴等から斬り殺していく。やっぱり皆の邪魔になってしまうからな。
「連斬、刺脚」
流石にこの数は多すぎるから、技を使う。皆に見られるかも知れないがまあ、その時はその時だな。
「連刺脚、円斬、崩脚」
今の攻防は、まずゾンビ共の頭を狙って高速の蹴りを連続で放つ。その隙を狙って俺に近付いた奴等を纏めて斬り殺した後、他の奴が逃げないように地面を揺らしたと言う感じだ。
しかし、数が多いな。一匹一匹は弱くてもこんなにいたら面倒で仕方ない。
「………助けに来たっす」
「おお、プラムか。じゃあ、竜と戦闘してる皆に近いゾンビから攻撃していってくれ」
「………了解したっす」
プラムの強さはまだ未知数だがこれで少しは楽になるだろう。
俺は強そうな奴等を倒しに行くか。
「しかし、普通のゾンビと比べて大きくないか?普通のゾンビ二体分位の大きさなんだが」
しかも、ちゃんとした装備を着けている。元々は冒険者だったのかもしれないな。
「連斬」
おお、防がれた!なかなかの剣の技術だな。
楽しみたいけど余り時間がないんだよな。だから俺が出せる全力の技でこいつを斬る。
「瞬斬」
これは縮地を発動し相手の横を通り過ぎつつ、縮地の勢いを殺さずに斬ると言う技なんだが、凄い集中力が必要だから余り使いたくないんだよな。疲れるし。
そして、他のゾンビも同じ要領で斬っていく。
「………本当に人間なんすかね、剱崎は?」
「………私も剱崎がどこへ向かっているのか、たまに分からなくなる時がある」
そろそろ竜退治も終盤だから一気に全部のゾンビを倒すか。
まあまあの実践経験にはなっただろうからな。
「エンパワー・スペル、ソードレイン」
この技は他の技と違って、ペアから名付けられた技だ。
今は、ゾンビだけに当たるようにしているが、本当は敵味方無差別に剣の雨を降らせる危険な技なんだよな。
「やった!僕達の力でドラゴンを倒したぞ!」
ちょうど竜退治も終わったみたいだな。俺もしれっと皆に混ざっておこう。
「………剱崎、魔王との戦いについて説明して貰うっすよ」
「剱崎少し三人で話がある。城に戻った時に自室で待っていてくれ」
………魔王クロムめ、次会った時は絶対に逃がさないからな!
「剱崎君、竜退治の時。近くにいなかったけど、どこにいたの?」
「剱崎、お前はやっぱり強いな」
天川と真鍋まで、面倒だな。
「いや真鍋、そんな事無いぞ。天川、俺はゾンビを相手にしていたんだ」
「そうだ、天川。こいつはほぼ一人で全ての」
「おっと真鍋、お前とは前々から話したい事があった事を忘れていた」
危ないな!人が秘密にしようとしている事を軽々口に出すな。
「俺が強いと言う事は皆には秘密にしてくれ」
「?なんでだ?強い方が良いだろう」
「面倒だからだ」
「分かった。剱崎がそこまで言うなら仕方ないな」
分かってくれて良かった。
しかし、真鍋を説得した後はペアとプラムを説得しないといけないんだよな。
………城に帰りたくない。
最後までご覧になって下さり、ありがとうございます。
未だに戦闘シーンの書き方が分からないです。