第一話 「日常」
ある高校の体育館では俺、蒼瀬黒は壮絶なる戦いが繰り広げられている場に居た。
「一本、決めてやるぜ!」
そう言って向かいのチームのアタッカーである神谷東生はコートの一角目掛けてアタックを打ち込んだ。もちろんブロックも跳んでいたがちょうどそのブロックの間を掻い潜るかのようにその球はコートに打ち付けられると思われた。しかしその球がコートに落ちる場所に追いついた人影があった。
「げっ!蒼瀬っ!?」
その追い付いた人影を見て神谷はやばいと思わずその人物の俺の名前が口をついて出ていた。
しかし、そんな事は聞こえていないとばかりに俺は体の感覚に任せてボールの下に入りボール柔らかく受け止めるかのようにしてボールは息を吹き返し、柔らかく上がったそのボールはセッターへと吸い込まれるように綺麗に放物線を描き、届いた。
「うっそ~ん…」
完璧にボールの勢いを殺され、なおかつ綺麗にセッターへ上げられたことに神谷はショックを受けた様子だった。だが俺にはそんな事は関係ないとばかりに集中して相手の動きを、アタックを撃つ場所を予想していく。それから俺は来るボールを取っていき、試合はフルセットまで持ち越された。
ピピーッ!!
最後はデュースまで縺れ込んだが最後はこちらのアタッカーがブロックの手に目掛けて当てるワンタッチを狙ったが当たらずそのボールがコートのラインを割りゲームセットとなった。
「くっそう、あと少しで勝てたんだけどな…やっぱりレギュラー陣の壁は厚いって事か。」
「そう言うな、バランスを取る為に蒼瀬をそっちに入れたんだ。おかげでそっちは普通落ちていた球が何本もあったのに蒼瀬がそれを拾ってくれた事であそこまでの接戦に持ち込めたんだぞ?そもそもお前らは攻撃は出来てもレシーブはまだまだだろうが。いいかお前らは少しは蒼瀬を見習え、だからレギュラーに上がれないんだよ」
同じチームの一人が壁は大きいなと言っているとこの排球部の主将で俺とと同じ学年で同じクラスの高校二年、桐山大地が近づいて来て俺と同じだったチームメイトに説教を始めた。
桐山大地はこのチームの大黒柱のような存在だ。成績も運動神経も良くいわゆる何でも出来る人間だと俺はは思っていた。そしてこれから行われることもおおよそが予想できていた。
「おいおい、お前らなんかまだまだだ。そんなんで俺達レギュラーに勝てると思うなよ。それとお前らが俺達と接戦を演じれたのは一重に蒼瀬を内の【守護者】をそっちに入れた結果だ。そうでなければ早々にゲームセットだったんだぞ?」
「は、はい分かりました。」
「よう、桐山。そろそろそれくらいにしておけ。」
俺と同じチームだった奴らとは反応が分かれた。俺はどちらかといえば親し気に、チームメイトたちはこれから行われる事に対しての絶望に顔色を変えていたが俺が助け舟を出したお陰でその顔色は幾分かよくなった。
(おうおう、顔が真っ青になってまあ)
そんな事を俺が思っていると桐山が何かを考えて、口を開いた。
「よし、おまらが少しでも今の自分の力を知る為に十本ノックをするからな?あ、因みに全員だからな?」
ヒイィィィっ!と俺と同じチームメイトたちは悲鳴を上げ、桐山のチームメイトもやっぱりか~!と悲鳴を上げた。
因みにこの十本ノックはボールをランダムに投げて投げられたボールが落ちるまでにタッチし、それを十回繰り返す単純なものだが十本触れなければ永遠に続く地獄のトレーニングだった。そして翌日は筋肉が必至だという事も嫌われているトレーニングの原因だった。
「あ、蒼瀬もちろんお前も参加だからな?」
「へいへい、そうだろうと思ってたよ。」
もちろんその十本ノックに俺も巻き込まれた。そして結果だけ言えば俺は早々に十本クリアして後はずっと苦しそうにやっているチームメイトたちを見ているだけだった。
「それじゃあ、今日は終わりにする。個人個人でちゃんと柔軟をしておけよ。それじゃあ解散っ!」
「「「お疲れさまでした~!!!」」」
どうにか十本ノックを終えて一部が疲労困憊だったがどうにか練習を終えると俺は手早くユニフォームから制服へと着替えた。そしてシューズを脱がずに俺そのまま体育館から下駄箱まで歩いて行こうとした。
「お~い、蒼瀬、一緒に帰ろうぜ?」
「桐山か、ああ、いいぞ」
そう言うと俺と桐山は一緒に玄関へと歩いて向かった。まあ下駄箱に着くまでに取り止めのない話を始めた
「あ、そう言えばお前まだ香奈と付き合ってないのか?」
「唐突になんだよ?てかなんでその話になるんだ?」
「いやな、ちょっと気になったんだ。香奈は俺の幼馴染だからな。悪い虫が使いないように気を付けないといけないんだよ。それでもお前なら安心できると俺は思ってるんだがな」
「なんだよそれ?」
俺がなんでその話題になったんだと聞くと桐山はやれやれと呆れた表情で首を横に振った。だから何だと俺が聞くといいんだと桐山が言ってきたからこちらからは何も聞けなかった。
「いや、別にいいんだそれじゃあお前から見て香奈はお前から見てどう思ってるんだ?」
「どうって、普通にかわいいし勉強も出来てるし頼りになるし、彼女にするんだったらいいと思うけど?」
あ、だめだこりゃ。桐山大地は内心で幼馴染に内心で前途多難だなと内心で合掌した。幼馴染である大地から見ても香奈は美人だ。そして大地は香奈が蒼瀬に好意を抱いているのは傍から見ても誰でも分かる、いや分かりやすいモノだった。だがそれでも気が付いていない蒼瀬の事を香奈は大地に愚痴で鈍感野郎とも言っていた。
「香奈は苦労するだろうな。それにライバルもいるしな…」
「何か言ったか?」
「うんにゃ、何でもねえよ」
俺は大地が何か言っているのがかすかに聞こえて尋ねたが大地は何でもないと言ってきたので俺はそこまで深く尋ねなかった。その時俺は背後に良く分からないが何かを感じて振り返った。しかし、そこは一本道で後ろに誰かいる場分かる場所だったがそこには誰もいなかった。
「どうした?」
「‥…いや、何でもない‥…いったい何なんだろう…」
俺は背中に感じた誰かの視線を勘違いだと思い、そのまま下駄箱へと向かって歩き始めた。俺が再び歩き始めると誰もいなかったそこに仄かに光る小学生程の少女がそこに立っていたが俺が気が付くことはなかった。
その後大地と話しながら下駄箱まであと少しの距離だった時唐突に俺は教室に忘れ物があったことを思い出した。
「あ、やばい、教室に忘れ物してきた…」
「おいおい、大丈夫かよ?何なら一緒に取りに行くぞ?」
「いや、いいよすまんが鞄持っておいてくれ。走って取りに行ってくるから。」
俺はそう言うと大地にユニフォームが入った袋と教科書と筆記具が入った鞄を渡すと自分の教室へと足早に向かった。俺が教室へと向かっている時ちょうど学校のチャイムが鳴り響いた。普段から聞きなれて居るチャイムの音はしかし今日は何処か違うように俺は感じたが教室へと向かう事を優先して足早に教室へと向かう。
俺は気づいていなかった。そのチャイムが俺のこの世界ではない世界へといざなうチャイムだという事に。
前に書いたものが書きたくなったので再度投稿を始めます。メインがあるので一番投稿が遅いです。