表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

8

本日、2回目の投稿です。

「ふーむ…ウィーティか…大麦…」


「お父さん、面倒掛けてごめんなさい…」


「リーゼ!面倒なんか掛かってないぞ!凄い発見をしちゃっただけで、面倒なんかじゃない!朝食といい…昼食の話といい…やっぱり、リーゼは天才だっ!」


「ザーム…。リーゼが凄いのは解るけど…どうするの?」


「うん。アイツに連絡してみるか…。商売事は、その方がいい。」


「商売事って事は、確か…ダニロさんでしたっけ?」


「そう。ダニロだ。手紙を出す事にしよう。アレ以来会ってないからな~…拠点を変えたり、行商なんかしてなきゃいいが…まぁ、手紙さえ見たら飛んでくるだろうけどな。」


クククとその情景を思い浮かべるようにお父様が笑った。


「お父さんの…お友達?」


「そうだよ、ダニロはお父さんのお友達で商人だ。お父さんはなぁ、昔ダニロと一緒に商人になろうとしていたんだ。ダニロの父親は、お父さんのお父さん…リーゼのお爺ちゃんが賜っていた領地を拠点にした商人だったんだ。でも、ダニロは愛人の…アー…ダニロの父親の商売を継ぐ立場になくてな…。その頃お父さんも、お爺ちゃんと仲が悪くて…元々上に家督を継ぐ兄がいたし、補佐をする次兄もいたからな。それでまぁ…そのなんだ…お父さん、家出したんだ。派手に喧嘩をしてなぁ…除籍…リーゼには難しいな。「もう帰ってくるな!」ってお爺ちゃんを怒らせてしまったんだよ…。そんな訳があって、お父さんはダニロと一から商売を始める事にしたんだよ。だけどな、ちょっと色々あってダニロと一緒に商売ができなくなっちゃってな…それ以来会ってなかったんだ。」


「私のお爺ちゃんと、お友達のダニロさん…」


「話が長くなってしまったな。あぁ、そうそう!リーゼ、お待ちかねの初級魔法書だよ!」


「わっ!本当に借りられたんだっ!」


「さすがお父さんね。さぁ、リーゼ。そろそろ寝る時間よ。魔法は明日にしましょうね。」


「はーい。おやすみなさい!」


初級魔法書に釣られて話が終わってしまったが、幼い私にはまだ聞かせたくない話があったのだろうと思った。ならば時が来るまでは聞かないでおこうと思った。両親は共に家族の話をしない。たまに、お母様が「これは、リーゼのお祖母ちゃんに教わったのよ」と言っていたくらいなもんだが、お母様のお母様はかなり前に亡くなっているらしいニュアンスがあったのでそうなのだと思う。


翌日から私の火と土の初級魔法の写本と特訓が始まった。

初級魔法書が、借りられるのは10日間。写本を終えた後も何度も何度も読み返した。

両親が教えてくれた内容以上の説明はそんなになかったが、10日経つ頃には暗記できている程だった。ジークに魔法を見せる事が出来ないので、読み聞かせをしてみたりしたので尚更だった。


そして、私は念願の冷やす魔法を手に入れた。


「炎に仕えし聖霊よ─熱を散らし冷気を与え賜え─ヒート」


本来は、温める方の魔法なのだが…指定の例文に熱の文字があったので散らしてみた。

コップ1杯の常温の水なら1回でそれなりに冷える。2回行えば完璧な冷えた水になる。そして、4回目には氷になった。まだ試していないが大きな鍋でも回数さえ重ねれば同じ事が出来ると思う。


水魔法を使うお父様に大層驚かれのは言うまでもない…

あまり人前で使わない様にと言われ、お父様は「どこに報告すればいいんだ…」と呟いていた。


そして、本を返却する10日目の朝。


「お父さん!魔法書ありがとう!」


「あぁ、そういえば今日だったなぁ…あー…そのあれだ…そうっ!お父さんなぁ、今日ちょっと遅くなるかもしれないんだよ~あ~困ったなぁ~お父さん返しに行けないかもしれないなぁ~」


「あらザーム。そうなの?私が返しにいきましょうか?」


「いや、その、カテリーナは何かほら…用事が、ほら!用事があるって言っていたじゃないか。」


お父様が、目を彷徨わせた後にお母様に向かってパチンパチンとウィンクをした。


「え?あ、えぇそうね。用事を思いついたわ!そうだった!」


パン!と両手を打ちお父様に合わせたようだ。

それにしてもお母様…思いついたって…もう少し上手くできなかったものか…。


「あ~困ったなぁ~どうしたらいいものか~。」


完全な棒読みである。


「そうだ、リーゼ!貴族街に興味があるって言ってたな!どうだい?行ってみるかい?」


「貴族街は入れないんでしょ?」


「用事があって、身分をちゃんと証明できれば大丈夫!荷物の検査とか少し審査の時間は掛かるが問題ない。」


「身分を証明するものを持ってないよ?」


「ジャーン!これがリーゼの身分を証明するものだよ!洗礼式の日に国民になっただろ?あの時に受付でお話した内容を記録したこの石がリーゼの身分を証明するものだよ。式のあと暫くしてから届けられるんだ。」


そういって私の首から下げてくれた物は、木の様な茶色で歪な楕円の薄い石だった。


「それはとっても大切な物だからね。絶対に失くしてはいけないよ?それで、どうだいリーゼ。行ってみるかい?」


「うん。行く!」


「そうか、よかった!新たな冒険だ!九の鐘がなる頃に貴族街の門に行くんだよ。大通りの門ではなく、その横にある小さい方の門だ。平民用の門があるからね。門番の人には話してあるからね。」


この国では一刻ごと、1時間に1回鐘がなる。日の出と共に「始まりの鐘」がなり、そこから一の鐘、二の鐘と続き、お昼が八の鐘、そして十二の鐘の次に「終わりの鐘」が鳴るこれが5時の鐘だ。そこから朝までは鐘が鳴る事はない。基本的には十二の鐘で仕事等を終え「終わりの鐘」の頃には家に着く。そしてそこから三刻程で就寝するのが一般的なスタイルだ。


「リーゼ、良かったわね!それじゃあ早く家の事を済ませて、お出かけの準備をしましょう。まだ少し大きいかもしれないけどかわいいお洋服があるわ!リボンもしましょう!あぁ、お母さんが楽しくなってきちゃったわっ!」


「おっと、そろそろ行かないと。それじゃあリーゼ、本の返却は頼んだよ。」


「いってらっしゃーい!」


その後は、お母様が掃除や洗濯、私が買い物へと分担して家事をこなし五の鐘が鳴る頃には手が空いた。


お母様が部屋から新しいワンピースを持ち出してきた。


「とりあえず、一度着てみてね。まだ少し大きいと思うのだけど…」


「はーい!」


洗礼式のワンピースに飾りを足して、お出かけ用といった感じの薄いピンクのワンピースは、お母様が言う様にほんの少し裾が長く少ししゃがむと地面についてしまいそうだった。


「あらあら、やっぱり大きいわ…貴族街にいくならこれくらい着ないと良くないし…どうしましょう…」


「お母さん、腰に巻くような布かリボンはない?」


「布…あぁ、あるわ!ジークのオムツ用なんだけど…白っぽい布よ。」


「それで腰帯を作って少し腰の上をゆったりさせたらたぶん踏まないと思う。」


「いいアイディアね!お母さんすぐ縫うわね!さぁ脱いで脱いで。あっ!そうだ、物入に確か水筒があったと思うわ。ちょっと歩くと思うからウィーティでも持っていくといいわ。」


「水魔法があるから平気だよ?」


「貴族街は警備の兵も多いから…人前で魔法を使って勘違いされて不敬罪なんて事も無くはないと思うから持っていきなさい。」


「はーい。」


脱いだワンピースをお母様に預け、物入を漁ると少々歪な陶器の瓶が出てきた。500mlのペットボトルくらいのサイズだ。

他にそれらしい物もないのでこれなのだろう…あのワンピースにこれを持つのか…。


「お母さんこれー?」


「そう、それよー。綺麗に濯いでね。」


「はーい。でもこれ…かっこ悪くない…?」


「リーゼの篭も買ってあるから、それに入れて行けばちょっと見える程度よ」


「私の篭!?」


「そうよ、リーゼの篭。そろそろリーゼのがあってもいいと思って編んでおいたの。」


「凄い!嬉しいっ!」


そんなやり取りの間に帯が出来上がり、大き目のシンプルな丸襟にパフスリーブのワンピースが帯を付けることでより上品な雰囲気になり、後ろのリボンがとてもかわいらしい仕上がりになった。


「それから、これね。」


そう言って手渡してくれたのは、薄いグレーの2本のリボン。

伸びっぱなしの私の銀髪は腰近くまでになり、普段は皮ひもで1本にまとめていた。リボンをするのは人生ではじめてだ。


「2本あるけど…今日は、耳の上側だけ掬って少し捩じって一つまとめましょうか。折角だし、貴族のお嬢さんみたいにしましょう!」


「もう1本は篭に結びたい!」


「いいわよ。篭とお揃いね。全体がまとまってとってもかわいいわ!」


お母様が小さな手鏡で見せてくれた。

姿見なんて上等な物は我が家にはないが、普段そんなに鏡を必要としないのでこれで十分だ。

少し離れたとこでお母様に鏡を持ってもらい、チョロチョロくるくると自分の姿を見た。


「お母さん、凄くかわいい!」


「私たちの自慢の娘だもの!凄いわ、リーゼ!遠目にみたら貴族のお嬢さんよ!」


遠目に見たらと言うのは、目を薄めたらとかそういうアレではなく…

現実問題として、平民の少し裕福な我が家の用意した少し良い服は、大きな商会の娘さんの普段着程度の物で、本物の貴族の服に比べれば見劣りする生地な為だ。

地方の貧乏貴族の私服位ではあるかもしれない。

それでも私にとって、お母様が作ってくれたこの服はどんなに高価なドレスより素晴らしい物で、本当にとっても嬉しかった。


「お母さん、ありがとう!」


「どういたしまして。さ、お昼にしましょ。汚したらいけないから、もう1回脱ぎましょう。」


「はーい…」


汚すと思われたのが少々心外なのと、また着替えなくてはいけない面倒さをちょっと不満に思っていたが、貴族街の事を考えていたらスープを垂らしてしまい…お母様には叶わないなーと思った。

誤字脱字、矛盾や感想等 是非宜しくお願い致します。

作者は恋愛物のつもりで書いてます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ