表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

2

暖かい…


とても優しく温かい感覚…


どこか懐かしい様な…どこだっけ?


目を開けたはずなのに何も見えない…顎に手を当てようにも動かない…



あぁ…そうか、これはお母様の…



肌寒い様な寂しさと、少しの刺激を感じる空気感と、不安を感じる解放感。

暫くして、薄っすらと視界が明るくなった。ぼやぼやで全く焦点が合わない。



なんだっけこれ…


そうだ、生まれたんだ。



どうしてこんな事を思い出しているのだろう…

何をしていたんだっけ…



『私がこのゲームのヒロインよーーーーッ!!!!』



あっ!そうだっ!

私は、放課後に図書室に寄って本を借りて寮に戻る時に…アンゼルマ様が…



って事は、これは走馬燈?

随分不思議な走馬燈だな…何も赤ちゃんから見せなくてもいいのに…


この頃は良く解っていなくって…

何故か生まれた事を理解していて、自分が何なのか思い出そうと必死だったな。


あぁ、自分は赤ちゃんなんだ。って理解して意識が途切れ…

この人がきっと母親なんだろうな。って思っては、意識が途切れ…

自分が転生者なのでは?と考える事が出来る様になった頃には1歳近かった。


と言うのも、私の前世の記憶が酷く断片的で…何か考える度にバラバラに散らばった辞書の1ページ1ページから答えを探すような、「知っている気がするのに答えがなかなか出てこない」そんな乳児時代だった。


1歳を過ぎた頃から思考が長く続く様になり。

私は、私なりの結論に至った。


私は、「転生者」か「狂人」だ。


何故この結論に至ったかと言えば、「前世の記憶が断片的」だったからだ。

まず、自分が誰だったかを思い出せなかった。


私が生きていた【地球】と言う世界、【日本】と言う国。

そこは、天皇を象徴とし政治家が国を治め科学の発展した平和な国。


確かにそこに生きていた。そう思う。

そう思うのだが、そこに生きていた「自分」が全く特定できなかったのだ。


平凡なサラリーマンの父がいて、パートで働く母がいた。

真面目な兄がいて、引きこもり気味な妹がいた。

学校に通っていた記憶もあるし、就職だってした。

好きな人がいて、交際していた人がいたと言う事も覚えている。


とっても平凡な人生だった。そう思う。


ただ、そこに一切「自分」と言う存在の記憶がなかった。

名前も思い出せない。いつ死んだのかも解らないし、何で死んだのかも覚えていない。生きていた軌跡はあるのに、自分が男だったのか女だったのかも解らない。「好きな人が居た」と言うのを覚えているのにだ。


交際を申し込んだ日の事を覚えている。

あれは、16歳の高校1年生の時だ。一つ年上の先輩に恋をした。陸上部の先輩だった。真剣に前を見つめ走る姿が好きだった。あの奇麗なフォームが好きだった。ゴールして記録が伸びたのを確認した時の笑顔が大好きだった。

先輩の最後の大会の帰り、告白をした。結果は残念だったけど、後悔はしていなかった。


こんなにハッキリと覚えている。覚えているのに、先輩の姿が黒く塗り潰された様に全く思い出せなかった。


家族の事を覚えている。

それなりに仲の良い家族だった。居間にあった電話の置かれた茶箪笥の上には、いくつかの写真が置いてあった。

兄が小学生の時に絵画コンテストの賞を貰った時、父が兄を抱きかかえそっくりな笑顔が向けられた写真。その父の足元には幼かった自分が確か、不貞腐れた顔でピースをしていた。

妹が生まれた時の写真。生まれたばかりのお猿さんの様な顔の横で妹を挟んで兄と猿の真似をした写真。

じーちゃんの家の前で撮った写真。家族で旅行に行った時の写真。自分の七五三の時の写真。


どれもどんな写真でどんな表情をしていたか覚えている。

なのに、どれも全部「自分」だけが黒塗りで「自分」が全く思い出せなかった。


これは「転生」なんじゃないかって思う「自分」が居て、なのに過去の「自分」だけが全然思い出せなくって、でも普通?の転生って真っ新からはじまるんじゃ?って思って、じゃあ「自分」って何さって…


もし転生をさせてる人がいて、魂に刻まれた記憶をタワシでゴシゴシと洗って、そこで真っ新になった魂を送り出しているとしたら…



今、悩まされている「自分」と言う存在は洗い残しの「汚れ」なんじゃないか…



そんな事をふと考えてしまい、「自分」を気持ち悪いと感じた。

そしてきっと、それを知った人はもっと気持ち悪いだろうと思った。


そして人は思うだろう、「頭がおかしい」と…故に「狂人」。



だから、私は普通を装う事にした。

気持ち悪いと感じている自分の知識を総動員して「普通」を演じた。


今思えば無駄な努力だったなと思う。

だって、私の知っている「普通」は現代日本での「普通」だったんだもの…

誤字脱字、矛盾や感想等 是非宜しくお願い致します。

作者は恋愛物のつもりで書いてます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ