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冷蔵庫が急に壊れてしまい…ばたばたしていて投稿が遅れてしまいました…。
今時の冷蔵庫って安いんですねぇ…財布は寂しくなってしまいましたが、新しい白物家電にルンルン気分です!
身支度を整え、学園女子寮の自室から教室へと通学する。
女子寮の自室からでるとミィーンが階段の前で待っていた。私を見つけると少し眠たそうな顔がパッと花を咲かせるように笑顔になった。その場で小さく手を振り私の合流を待っている。
「おはようございます、ミィーンヒェン様。」
「おはようございます、リーゼロッテ様。」
淑女らしくスカートに手を添え、軽く屈み挨拶を交わす。
儀式の様にそれを熟すと、どちらともなく笑いあった。人前と挨拶だけは淑女らしく。これが彼女とのルールだ。この儀式を済ませれば後は気の知れた親友同士だ。
「リーゼ、昨日はどうだったの?教諭が来たのでしょう?」
「えぇ、マリー=ルイーゼ・アドラー助教諭がいらしたわ。」
「女性教諭が来ると思っていたけど、アドラー助教諭だったのね。それで、お話はどうなったの?」
ミィーンヒェンは興味深々といった様子で、急かすように私の顔を覗き込んだ。彼女は少しそそっかしいところがあるので前を見て歩いて貰いたいのだけど…
「これと言って話す事も…わたくしから事情が聞けるまで、念の為自室待機だった事位かしら…。彼女の了承を得ての事だと聞いていますし、わたくしも事故であった事は伝えていますから、本日は普通に授業を受けられるのではないかしら。」
「そうなのね。彼女もきちんと受け入れたのね。でも、本当に不思議な話しだわ。あの変わり者の彼女が何でリーゼの傍に寄ったのか…そんなに知る訳じゃないけど女生徒にあまり寄らないから、同性が苦手なんじゃないかとか…異性に…その…あまり良い噂は聞かないのよね…。」
「そうね、わたくしもあまり…」
ミィーンヒェンは不思議そうに首を傾げる。
アンゼルマは、春の入学式から一月程遅れて入学した。途中入学は珍しい事らしく、一時は興味を持った生徒が男女問わず関わろうとしたがアンゼルマはそれに興味を示さず、男爵家の三女と言うとても微妙な立ち位置も相まって皆が興味を持たなくなるのはあっという間の事だった。
ベーベル男爵家の戦略であのデビューをし一目置かれるのが目的だったのではないか思われたが、そんな噂も直ぐに掻き消える程彼女はある意味静かだった。授業以外で殆ど教室にいる事がないのだ。一科目ごとに姿を消し、移動教室ともなれば教員の挨拶も待たずに教室を飛び出し、始業ギリギリに現れる。何処かに通っていいるのでは?お慕いしている方の元に行かれているのでは?といった憶測もちらほら耳に入ったが、彼女の神出鬼没さにその噂もまたあっという間に消え去った。皆彼女の声すら殆ど聞いたことがない、挨拶を気まぐれに返された時位なものだった。授業でもまた、上の空といった様子で学ぶ様子は殆どなかった。
それが、彼女が「変わり者」と言われる所以だ。
一般的な皆の知識はその様な感じで、家を挟む背景的な情報ではベーベル男爵家のアンゼルマ以外の上の子は大事件後の出産ブームより少し早く生まれてしまい、有力貴族の御子息や御令嬢と時期が外れ気味であり、加えて地位も低い事から良い縁談には恵まれなかった為に、現ベーベル男爵の弟の次女をベーベル家に三女として養子縁組したと言った話であった。
これはの家の背景は、情勢に聡い家の子であれば殆どが知っている事実であり、私はブルグスミューラー伯爵より情報を貰った。学園関係の情報は、何故か伯爵家より手紙で渡されている。
「うーん…。時々不思議な考え方をしだすリーゼの事だから、何か考えがあって伏せているのだろうけど…私はとても心配よ?リーゼを否定するような事はしないけれど、友人としてとても見過ごせないわ!話せる時が来たら絶対に頼ってね?」
どうやらミィーンヒェンには、私がアンゼルマの事で隠し事があるのがバレているらしい。彼女は私をよく見ている、当然の事だ。
「ありがとう、ミィーン。助けが欲しい時はお願いするわ。」
「リーゼ程じゃないけど考えるのは得意よ!前は毎日毎日、家をどうやって軌道に乗せようか、どの家に嫁ぐのが最良なのかそんな事ばかり考えていたもの。そんな事をあまり考えなくて良くなったのはリーゼのお蔭。だから遠慮なく頼ってね!あ、それで昨日聞きそびれたディートリヒ様の事を聞きたいんだけど…」
空気を読んで気を使ったのかミィーンが話題を変えた。
私たちは辿り着いた校舎の中をゆっくりと教室へ向かっていた。
王立学園での一学年の授業の殆どは、過去の家庭学習の復習と確認の様な物がメインでそこにいくつかの要素が加えられた物で、デビュタントに向けた授業に関しては一学年から行われるが比重は少ない。専門的な知識は二学年からはじまる。
午前の授業が終わり教員の挨拶が終わるや否やアンゼルマが教室を出て行ったのが見えた。ドアをでる瞬間チラリと振り返ったアンゼルマと目があった気がした。
朝、始業ギリギリで入ってきた彼女とも珍しく目が合った気がした。彼女が私を意識しているのだけは解るが、そこにどういった感情が隠されているのかは見えなかった。ただ言えるのは、憎悪といった負の感情は教室だからなのか感じ取る事はできなかった。
アンゼルマが教室を出て少ししてから次々とクラスメイトが席を立ち始めた。
個々であったりグループであったり、其々が食堂へ向かう。私もそろそろと思い机の上を整え立ち上がろうとした時、廊下から微かに騒がしくなったのを感じた。
「リーゼ。出るタイミング逃したわね、御一行様のお出ましよ。」
「あら、いつもでしたらもう少し掛かるのに失敗しましたわね。」
午前の授業を終えて各々が食堂に向かうのだが、教室をでるタイミングは微妙に異なる。主に男性陣は早めに教室を立ち、女性陣は残っていることが多い。
その理由が廊下の喧騒の主である、オーステル王国第一王子エーリッヒ=マリア・オーステル殿下と未来の側近や有力貴族の嫡男御一考様だ。
彼らの目的地は、ここ。我が教室。その行く先は、オーステル王国二大公爵家の一つ軍務のダンジェルマイア公爵御令嬢エルネスティーネ・ダンジェルマイア様の元だ。
まだ公式発表は為されていないが、王家とダンジェルマイア公爵家の間では既に決定事項で間もなく正式に婚約発表がなされエーリッヒ殿下が王太子になられると専らの噂になっている。
十日程前からはエーリッヒ殿下が昼食を誘いにエルネスティーネ様の元を訪れるのは日課になっていた。
それに出くわすと、教室からの脱出は困難になる。そんな理由から、そそくさと食堂へ向かう者と未来の王妃の傍で警備宜しく残る者やエーリッヒ殿下の周辺に一縷の望みを託す御令嬢達と二分してしまっている。
私たちはと言うと前者に当たる。そもそも、子爵家や男爵家などお呼びでない様なお方達だ。王家に対する忠誠はあるが、こう毎日だと昼食も儘ならなくなる。王族や有力貴族と違い、下位の貴族達には食堂の個室を利用する権限はない。
「どうしようか…、無理やり出て行く?」
「粗相があっては困りますし…少し様子を見て、ダメなら昼食を諦めましょう…」
私たちは教室の隅の机で、華麗な上位貴族の面々を遠巻きに眺める事にした。
「エルネスティーネ嬢!一緒に昼食へ行かないか!」
美しい金糸の様な髪を靡かせ、爽やかな笑顔で教室へと入ってきたエーリッヒ殿下は端正な顔立ちで一見女性とも見間違いそうになる程線の細いお方だ。まだ14歳、成長期前といった様子でこれからどんどんと男らしく成長されて行く事が解る。そのあどけない笑顔とは違い、成績は極めて優秀で成長期前にも拘わらず剣技の腕も相当なものであると聞く。将来は「賢明王」の二つ名になられるのではないかと噂されている。
「まぁ、殿下!本日もいらして下さったのですね。光栄ですわ!」
エーリッヒ殿下よりも少し背の高いエルネスティーネ様は、美しく明るい菫色の緩やかにカールした腰まである髪を揺らし、普段であれば凛々しい目を満面の笑みへと変え、一度両手の指を胸の前で絡ませ恋する乙女然といった様子で殿下を出迎えた。恭しいく跪礼をした。
合流した御一行様は、すぐには動き出さず軽く談笑を始めた。
エーリッヒ殿下が金髪、取り巻きで良く見えないがその後ろに控える赤髪と青髪…信号機か戦隊モノヒーローかと言った髪色が一堂に集結している。
髪の色は魔法の属性を表す傾向にある。金であれば光、赤は火、青は水、緑は風、土は茶色だ。一つの属性が極端に強い場合は単色の色合いが強くなり、属性同士が近しい配分であれば交じり合った色になる。
ミィーンヒエンは、赤茶色なので火属性と土属性だと解る。エルネスティーネ様なら火と水。そして私はと言うと、銀に近い白髪だ。この色合いの人は今まで見た事がない、全属性が原因なのかと思うが理由は解らない…。アンゼルマの桃色の髪もとても珍しい。時々、髪色で判断できない人がいるのが「傾向」と言った理由で絶対ではない。
戦隊ものなのに殿下が黄色…カレー好き?むしろカレーってあるのかな?と、とても無礼な事を考えていると殿下のすぐ後ろで控えていた青髪の人と目があった。彼は一瞬目を細め首を傾げると隣にいた赤い髪の人に話しかけた。私の無礼な視線を感じ取られてしまったのだろうか…。
何か言葉を交わしあった後、赤い髪の人が殿下の傍を離れた。
「ねぇ、ミィーン。殿下の傍の赤い髪の方って辺境伯の御子息でしたっけ?」
「リーゼが気にするなんて珍しいわね。そうよ、あの方は五大辺境伯の中でも北部の帝国との境界線を守る最大辺境伯家のビ…」
ミィーンヒェンの言葉が止まった。
窓を背にしていたミィーンヒェンが会話をしていた私を見ながら硬直してしまっている。
「ミィーン?」
声を掛けるも張り付いた様な笑顔のまま硬直したミィーンヒェン。顔を覗き込むも視線は固定されたままで微動だにしない。不思議に思っていると不意に気配を感じ振り返ろうとした時、我に返ったミィーンヒェンが突然動き出しぎこちない様子でお辞儀をした。
その様子を見て私は振り返るのが怖くなった。恐らく後ろに私たちより身分の高い方が来ている…振り返ってすぐ様お辞儀をして大丈夫だろうか…ミィーンヒェンの言葉を待って動いた方が…
どう行動するのが正しいのか頭を駆け巡る。
「すまない…。」
後ろから男性の声がした。これはすぐに振り返らないといけない!
そう思って振り返ろうとした時、次の言葉が投げかけられた。
「その…もしや、リーゼではないだろうか?」
私は急ぎ振り返って相手の顔も見ずに慌ててお辞儀をした。
リーゼ?と言う事は、私に声を掛けた?疑問に思いながら顔を上げるとそこには微かに幼い頃の面影を残した懐かしい思い出の中の少年が立っていた…
誤字脱字、矛盾や感想等 是非宜しくお願い致します。
作者は恋愛物のつもりで書いてます!




