21
前話である、20話の内容を修正しております。
今一度20話を今一度ご拝読頂いてから、本21話をご覧いただければと思います。
内容修正の理由に関しましては、
20話のあとがきに記載しております。よろしくお願い致します。
「それでは、ミィーン。また明日、ごきげんよう。」
「えぇ、リーゼ!彼へのお礼の事、しっかり考えておくわ!ごきげんよう!」
満面の笑みで小さく手を振るミィーンヒェンを私も笑顔で手を振り答えた。
ここは学園女子寮の廊下で、私の部屋はミィーンヒェンの部屋より少しばかり手前にある。部屋の前で彼女に別れを告げ、立ち去る彼女を見送った。心なしか楽しそうに見える。彼女は今夜、あれやこれやとディートリヒに対するお礼の方法を考えるのだろう。確かに、通常であれば伯爵家の次男で有望株であるディートリヒは子爵家の令嬢にとって手の届く常識的な範囲の良縁だ。しかし、残念なのは私がまだそういった事に焦りを感じていない事…何れは嫁ぐとしても、なんとなくまだ乗り気になれないのだ…。
自室に入ってほっと一息つく。
学園に入ってもう半年以上が経った。最初は落ち着かなかったこの部屋も今では私の城だ。屋敷の部屋に比べれば幾分か狭く感じるが、平民の頃よりは二倍以上の広さがある。十畳程のワンルームに四畳程のウォークインクローゼット。洗面所にトイレ、そしてバスルームだ。
水回りは下水のみ完備されていて、水はどこから来るかと言うと魔石だ。水の魔石が付いているので魔力を通すと水が出る。洗面所には、水の魔石。トイレには、浄化用の光の魔石。お風呂には水の魔石と火の魔石が付いている。これによって、貴族の令嬢でも簡単に身の回りの事ができるのだ。
この魔石については、学園の二年目から魔石学と言う授業があるので今は詳しく知らないが、対応した魔石に一つだけ呪文の指令分を刻むことに寄ってその属性がなくとも魔法が発動できるらしい。魔石の大きさも魔法と同じく5段階に分かれており、初級の魔石は比較的手に入りやすい。しかし中級以上の魔石は滅多に手に入らないそうな…。貴族では、初級魔石を使用した道具であればいくつかは普通に持っているが平民では商家にあるくらいな物で、貴族になるまで存在すら知らなかった。貴族が必ずもっている魔石道具、その筆頭がドアノッカーと呼び出しベルだ。最初に魔力を通して鳴らせと言われた時は、音がよくなるとか?と阿保な事を考えていて、てっきり近くにいて音を聞いて来てるのかと思ったが違がった。風魔法の初級にエコーと言う物があるのだが、本来は少し広い範囲に音を届けるだけの魔法だ。これを活用して使用人は敷地内であれば聞こえる様にしてあるらしい。不思議である。
貴族でもいくつかしか所有しない初級魔石が何故生徒の私室に4つも付いているかと言えば…これは、例の大事件に関連しているらしい。癒着関係なのか資金プールなのかは解らない。魔石は、一度指令文が刻まれると他に使用できない。取り外す際にも細心の注意を払わなくてはならず、傷が付けば使い物にならなくなる。そんな繊細な品物を据え付けの家具に付けてしまっているのだ。家具ごと外す事もできるだろうが、恐らく替えの家具を用意するのに資金が掛かるし直ぐに売却できるか怪しい魔石だ。リスクを避けたのではないかな?
そもそも、洗面所はまだいいが初級水魔法のウォーターはコップ1杯分が精々だ。お風呂についていても意味がない。初級火魔法のヒートのでお風呂一杯をあっためようとしたら何回必要になる事か…要するに、少しの温度変化しかできない。では、どうやってお風呂に入るかと言うと、夕食で部屋を外している間に学園メイドが全部行ってくれるのだ。洗濯もベットの上に置いておくと授業でいない間にベットメイキング時に回収されて翌日のメイキング時に戻ってくるホテルの様なシステムになっている。
バスルームに向かうと、湯気の上がった湯舟が用意されていた。
お風呂にはとても入りたいが、今入る訳にはいかない。訪問する予定の教員を待たなくてはならないから。火の魔石に魔力を通し湯の温度を上げながらアンゼルマについて考えた。
彼女は、私を「バグではないか」と言った。
「自分がこのゲームのヒロイン」だとも言っていた。
彼女にとって、この世界はゲームなのだろうか…記憶を引き継いだ転生で自分を主人公と思い込んでいるのか…それとも、バーチャルリアリティゲームの凄いのが開発されてゲームの中に来ている…?ここは、ゲームの中?…いや、それは無いと思う。私はそんなゲームをやった覚えもないし、開発しているとしても一般人の私が目に触れる様な段階でもなかったと思う。それに、皆ちゃんと生きている。プログラムなんかじゃない。一緒に生きている私が思うんだからそうだ。…でも、もしかして…そういうプログラム?私もプログラム?まさか…人工知能とか!?いや…まさかね…そんな訳ないよね…彼女の言葉に他にヒントは無かったかな……
攻略とか…悪役令嬢とか…あとは、ラブ度上昇イベント…
言葉だけ聞くと何かのゲームっぽいけど…何ゲーだろう…配役があるからストーリー物?恋愛要素があるようなゲーム?魔法がある世界でストーリー物で恋愛要素がある…確か昔そんなゲームをやったな…仲間の好感度を上げていくと仲間との連携ができるようになってチームが強くなってボスを倒しにいくようなやつ…そういうゲームの事を言ってるのかな…
『私がこのゲームのヒロインよーーーーッ!!!!』
ヒロイン…主人公が別にいる?でも、主人公が女性ならヒロインっていう事もあるかな?…だめだ、どんなゲームかを過程する事もできない…
他に何か……そうだっ!彼女のヒロイン宣言!あの言葉だけは日本語だった!やっぱり、私は日本人だった事だ!【狂人】じゃなくって【前世の記憶をもった転生】でいいって事だよね?…ん…でも待って…ここは地球じゃない別の世界でしょ…ほかにも日本語と同じ言語をしゃべる世界とかがあってもおかしくはないよね…?世界とか言い出したら、次元だって…並行世界とかは…?
あぁ!全然だめだっ!考えがまとまらないっ!!
お風呂に入って色々スッキリしたいなぁ。お風呂に入る準備とかだけしておこう。
バスルームを離れ、クローゼットに行き着替えを用意しているところでドアがノックされた。
やっときた!
「はい、どなたですか?」
「マリー=ルイーゼ・アドラーです。遅い時間に申し訳ありません。」
「今開けます。少々お待ちください。…アドラー助教諭、お待ちしておりました。」
「失礼致しますね。」
「どうぞ、お掛けになって下さい。」
アドラー助教諭と共に学園メイドが茶器を持って入室してきた。アドラー助教諭が手配してくれたのだろう。流石、淑女教育の補佐教諭だ。むしろ、私が手配しておくべきだった…失敗した。
「お気遣い、ありがとうございます。」
「とんでもございません。気遣いと言うのであれば、こんな夜分に来る様な事は致しません。早急な事実確認をとの事でお伺いするしかありませんでしたの。お身体は問題ないと伺いましたが、それでも心労はございましょう…申し訳ありません。」
「ありがとうございます。それで、お話と言うのは…」
「そうですね。早く済ませてしまいましょう。お話と言うのは、ベーベル男爵家の御令嬢アンゼルマさんの事ですわ。彼女は今、状況把握が済んでいないので自室にて待機して頂いています。夕食もお部屋にお運びして済ませて頂きました。今は女性の兵士が入り口の前に待機しており、退入室を制限している状態です。」
それは…軟禁…実質、謹慎なのでは…
「もちろん、状況が把握できるまでの一時的な措置でアンゼルマさんにも了承頂いての事です。今のところ何の問題も無く過ごされている様です。今回の件は、アンシュッツ伯爵家御令息のディートリヒ様とアンゼルマさんから其々お話を伺っています。そのお話では、少し戯れが過ぎ落ちてしまったと…しかし、そういった雰囲気には感じなかったとも伺っています。あの窓枠の高さでは、失礼ですがリーゼロッテさんの身長を考えると簡単に乗り越えてしまうものではありません。危害を加えられたのであれば、とても恐ろしい事です。立場的にも男爵家の御令嬢が子爵家の御令嬢に危害を加えたとなれば謹慎では済まないでしょう。学園側としても放課後の警備兵の巡回を強化する対策を既にはじめています。不安なお気持ちはお察し致します。ですが、どうか話してくださいませんか?」
警備の強化はありがたい。放課後の図書室はほぼ日課の様になっていたけど、あの長い廊下は少々怖いなと思っていた。不審者とかそういう事ではなく…逢魔が時独特の雰囲気がなのだが…。
アンゼルマには何か目的がある様だった。その為に邪魔だと言われた。恐らく異性関係?それなら尚更、特に親しい男性がいる訳でもないのに不思議だが、注意して生活していれば刺激する事はないのでは…?警備強化がされるなら安心できるし、暫くは一人での行動を控えてミィーンに協力して貰えばいい。明日には噂になるとミィーンは言っていたし…もし次私に何かあれば真っ先に疑われるし、迂闊な行動は取らないんじゃないかな…
どうしても…自分が何者なのかを…それを知る可能性を自ら捨てたくは…ない…
「アンゼルマ様とはこれまで特別親しくはしていませんでしたので不可思議に思われているのかもしれませんが、あの時ご一緒したのは本当に偶然です。少しお話をしていたところ、お恥ずかしい話ですがうっかり本を落としてしまいました…。わたくしは、慌ててしまいまして…なんとか本をと身を乗り出したところ、どういう訳か落ちてしまったのです…。」
「では、アンゼルマさんに問題はなく…事故であったと仰るのですね?」
「…はい。お騒がせして大変申し訳ありません。あれは、わたくしの招いた事故です。」
「そうですか…。憂いに沈む事無く、それが真実であると。」
「…はい。」
「解りました。その様に報告させて頂きます。…何かありましたら、いつで相談に来てくださいね。本日は、遅い時間に申し訳ありませんでした。ではまた明日お会いしましょう。ごきげんよう。」
アドラー助教諭が部屋を去ると入れ違いで学園メイドが声を掛けて来た。
「失礼致します。」
「えぇ、どうぞ。」
「本の調整が終わりましたのでお届にあがりました。」
「ありがとう。よかった、ダメにはなっていなかったのね。」
「はい。こちらの茶器はお下げしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、お願いします。」
「浴室の担当をお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。もう下がっていいわ。」
「はい。失礼致しました。」
パタン。
学園生活で一番長い一日が終わった…。本当に疲れた…。
明日も別の意味で疲れるんだろうな……お風呂入ってすぐに寝よ…。
誤字脱字、矛盾や感想等 是非宜しくお願い致します。
作者は恋愛物のつもりで書いてます!




