表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/24

19

「ふむぅ…。バイルシュミット侯爵が戻るまでもう少し時間がかかるだろうねぇ…。それじゃあ、僕の用事を先に済ませてしまおうかぁ。」


「そうしましょう。」


「では、お父様。わたくしはご不要でしょうから、失礼致しますね。」


ブルグスミューラー伯爵に退室の挨拶をしようと腰を浮かせたが、伯爵はスッと右手を上げて「待て」といった仕草をした。


「いやいや、リーゼロッテ嬢。用と言うのは君になんだよぉ。でなければ、僕自ら子爵の屋敷に来るなんてことはありえないからねぇ。」


言われてみればそうだ。用事があるなら呼びつければいい。ましてや一緒に王城にいたのだ、既に用事を済ませる事もできただろう。洗礼後とはいえ、お茶会のデビューも済ませていない私を簡単に外に出す訳にはいかない…そういった事もあってのブルグスミューラー伯爵の配慮だったのだろう。


「そうだったのですね、御配慮痛み入ります。それで、御用件というのは…」


「うん。実はねぇ、一言で言えば王立学園への平民の入学について意見を聞きたかったんだ。貴族の中に試験を突破できた平民が入ってやっていけるだろうか?」


「平民をですか…?何故そういうお話に?」


「理由を話す必要はないんだけどねぇ。まぁ、いいよぉ。貴族が大きく減った未曾有の国家事件については知ってるよね?あれから十四年が経って、少しは貴族の数も増えた…いや、増やしたかな。それでもまだまだ足りないんだ。貴族になると言うのは、簡単じゃない。功績もなくおいそれと血筋だけで与える訳にはいかない…でもねぇ、こんな状況だから功績を上げるどころか皆必死に働いてる。そこでその足掛かりに文爵と武爵の新たな爵位を設ける事にしたんだ。この最下層の爵位なら血筋だけでなれる物もいる。要はチャンスを与えるって事なんだけど…なまじ血筋がいいと使用人を欲しがるだろ?でも、最下層の爵位の者と他家の末の血筋の者、これらは紙一重の地位だ。血筋のある使用人も有限だからねぇ。そこで優秀な平民って訳。そこなら揉める事もないし、推測ではそれなりの数がいると思うんだ。商家の次男以下とかね。」


オーステル王国は、そんなにも人員不足なのか。「計算機」の評価はこういった背景もあったんだ…簡単に人員は増やせないけど、今いる人が1.5倍の処理能力を得ればそれだけで人が増えたのと変わらない。これの行き過ぎた世界が私の前世…加減を間違えると機械に仕事を奪われる。まぁ、電気もないし金属の加工技術もどこまでか解らない上に知識も乏しい。機械を作る事はできないだろうけど、しっかり考えて行動しないと…


そんな関係ない事に意識を飛ばしているとお父様が声を掛けてきた。


「リーゼロッテ、思う事があれば言っていいんだぞ?ブルグスミューラー卿は、平民から貴族になったお前なら平民が学校になじめそうか聞きたいんだ。難しく考えなくていい。今、淑女教育を受けてそれに近い事を平民ができそうかを聞いてるんだよ。」


「えっと…、前提としてお伺いしたいんですが。学園はある程度身分に関係なく平等ですか?それとも貴族界の縮図ですか?」


「それは、前者であり後者でもあるかなぁ。授業や成績の上では前者、警備や設備それと授業以外の学園生活に於いては後者になるかなぁ。まぁ多少の贔屓は否定できないけどねぇ。」


「そういうお話なのであれば、私は平民の学園への入学は難しいと思います。」


「理由を聞きたいねぇ。」


「はい。まず第一に、わたくしが現在とても苦労している事です。学園生活に於いて身分が関係してくるのであれば、言葉遣いや所作、誰がどういった身分なのか、これらは確実に覚える必要があります。貴族であればお茶会等で顔を合わす事になりますし貴族名鑑もあります。ですが、数が予測できない平民分の貴族名鑑を用意するのは難しいですし、顔が解りません。「誰ですか?」などと恐れ多くて聞くことはできません。」


「制服に徽章を付けたり、色を変えたり…マナーの教育を施すのはどうかな?」


「目に見えた明らかな変化は、両方にとって溝を生み学業どころではなくなる可能性があります。入学前にマナーを学ぶのであれば、それこそ平民用の学校を建てた方がよいのではないでしょうか。」


「平民用の学校ねぇ…。それで第一って事は第二もあるよね?」


「はい。第二に授業や成績に関する平等性が問題になる事です。」


「平等なのにかい?」


「はい。貴族は貴族たる為に教育を受けプライドがあります。授業に於いて、本当に平等にしてしまうと些細な事の平等の積み重ねがプライドを刺激し大きな問題に発展しかねません。成績もそうです。発表されるのかはわかりませんが、隠してたとしても教員がうっかり口を滑らせる可能性はあります。それでもし平民が上位の貴族よりも例え一科目でも上回っているのが発覚してしまったら…。」


「貴族が平民を虐げるかもしれないって話かな?それは、ほぼあり得ないよ。陛下の御意志に背いてしまうじゃないか。」


「いえ、実際虐げるかどうかは問題ではないのです。不敬に当たるかもしれないと平民側が委縮してしまうのです。平民にとって貴族は、憧れと尊敬の対象ですが、同時に畏怖の対象でもあるのです。」


「そういう事か…。それでも登ってくる様な人間が欲しいっていうのは欲張りすぎかねぇ。平民の学校についてはどういう考えなのかな?」


「学園への合流を目標にするのであれば、貴族が家庭で習う勉学に近しい教育と、貴族に対するマナーを十歳から十二歳の三年間程度を目安に段階的に学び、平民学校の卒業を条件に学園入学試験を行うのはどうでしょうか。」


「優秀なのを引き抜きたいのであって、平民を教育したい訳ではないよ?」


「はい。ですので、その平民学校も試験制にします。進級にも試験を用い基準をつくります。学費に関しては財政の事になりますので、わたくしには知識の及ばないところですが優秀者には学費免除もありかもしれません。多少敷居が高くとも、夢を持った者は食らいついてくるでしょう。また、その平民学校に入る為の学校なんかもできるかもしれません。それは平民ベースでの話になりますが、商売の一つになるかもしれません。」


「平民間で経済を回す事も可能性としては有り得るのかぁ…面白いねぇ。」


「…これでいかがでしょうか?」


ブルグスミューラー伯爵は、フムフムと呟きながら顎に手を当て視線を彷徨わせながら自分の世界に入ってしまった。お父様に目を向けると、いつもの事だと言わんばかりに苦笑いを浮かべていた。


伯爵の次の言葉を待つために応接室は、シーンと静まり返っていた。不意にドアがノックされ、バイルシュミット侯爵を案内しにいったメイドが顔を出した。


「失礼致します。バイルシュミット侯爵がお戻りになられました。」


「お通ししてくれ。」


メイドが一礼しドアの影に身を引くと、リーンハルトを連れたバイルシュミット侯爵が照れ笑いを浮かべながらやってきた。その後ろには、眠たいのか泣き疲れたのか目を仕切りに擦るジークフリートがいた。


「お待たせしてすまない。やっとリーンハルトと話す事ができた。妻の事も話したのでこれから少しづつリーンハルトに良い様にしていきたい。本日は、大変世話になった。」


「ご迷惑おかけしました。ごめんなさい。」


バイルシュミット侯爵とリーンハルトが浅くではあるが頭を下げた。上位の貴族が謝罪の為に頭を下げる事はほぼない。この行為にはきっと感謝も含まれての事だろうが、異例の事態に私とお父様は顔を見合わせてしまった。ブルグスミューラー伯爵はというと…面白い物を見たとばかりに満足そうな笑顔をしている…腹黒だぁ…


「バイルシュミット侯爵!頭を上げて下さい!」


「返って恐縮させてしまったかな…?クラウゼン子爵…いや、クラウゼン卿。今後ともリーンハルトの事を宜しく頼む!」


「こちらこそ、ジークフリートをよろしくお願い致します!!」


その後、一言二言言葉を交わし家の事が落ち着いたら使いを出すと侯爵は言い残し、泣き笑いのリーンハルトを連れて帰って行った。侯爵家の馬車を見送ると入れ替わりに伯爵家の馬車がやってきた。


「いやぁ~、今日は良い日だったよ。有難うねぇ。クラウゼン卿は、明日から政務に入るから覚悟しておいてねぇ。」


「はっ、はいっ!」


「リーゼロッテ嬢、淑女教育頑張ってねぇ。」


「ありがとうございます。」


「それじゃあ、行くよ。またの機会に!………あっ!リーゼロッテ嬢!何か思いついたら教えてね!!」


伯爵は、馬車が動き出してから思い出した様に言葉を残していった。

あれはきっとわざとだな…。ブルグスブミューラー伯爵は、要注意だ…。お父様にも注意しておかないと…確かに我が家にとって一番近い後ろ盾にあたる方なのだが…信じすぎたらダメめだ!悪い人じゃないけど、屁理屈でグレーゾーンを行く政治家のような感じがする…。まぁ、貴族は政治家みたいなもんか…



***



あっ、また場面が途切れた…

なんだか当時の自分に憑依した感じで…まるで今経験してるような気がしてた…


そうだった…走馬燈だったんだ…


私、死ぬのかな…



この後は…、ジークフリートが洗礼式を迎えて…


お母様が目を覚まさなくなって…



私は毎日必死に淑女教育を熟して…結局、お茶会デビューはできなかったんだっけ…




割と…平和だったな……

学園にも…入学したし……色々あったけど…楽しかった……




心残りは、お母様が…元気にならなかった事かな……





ジークフリートは…立派に長男として…お父様を支えてくれるだろうか…





お父様は…ちょっと…頼りない…からなぁ…








短いけど…ファンタジーで……それなりに…幸せだった…かな……







………




……








カラン!カラーン!カラン!カラーーン!!



『啓示。既定に達する行いを収めた為、汝に【能力:情景描写】を付与します。』




!?


どうやら…まだ…死ねない…らしい……

誤字脱字、矛盾や感想等 是非宜しくお願い致します。

作者は恋愛物のつもりで書いてます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ