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シナリオ通りとは言え…書くのがちょっと辛く、時間が掛かってしまいました。

少々悲しいお話です。ごめんなさい。

また場面が早送りになった…

切っ掛けはなんだろうか…私が無意識に重要視していたところなのだろうか…


この時期は、目まぐるしい毎日で…必死だったのは覚えているが、細かい事はあまり覚えていない。




あの貴族街への大冒険の後からお母様が度々体調を崩すようになった。

最初は10日に1度程度、数ヵ月過ぎた頃には3日に一度…



この世界には、漢方や健康食品の様な物は存在するが薬師はいないし、医者もいない。

医療行為は、全て光魔法で行われる。それを職業としているのが教会だ。国民全てが魔法を使えるこの国だが、光魔法の使い手は少ない。その使い手も、殆どを教会が独占しており、寄付という形でお金を渡し治療をして貰う。後から知った事だったが、平民が受けられる最高の治療が上級、高級は貴族や王族じゃないと受けられない物だった。


光魔法に出来る事、それは傷を癒したり、脳に働きかけ沈静を促したり、病を癒したり。医療が発展しないのは当たり前と思った。光魔法があれば万事解決するのだから。


しかし、お母様が病気になった事でその万能性に微かに疑いを持つようになったが、毎日の家事や育児に深く考える事が出来なくなっていた。


お母様は、上級光魔法の使い手だ。

体調が悪ければもちろん使っていた。私も、父もジークも家族全員がお母様の手によって癒されてきた。軽い風邪や食当たりなんかは何の問題もなく治ったし、家族が病に苦しむ事はなかった。

体調を崩すようになってからも、お母様は度々自分に魔法を使っていた。それなのに、お母様は本当に少しづつゆっくりと悪化していった。


私が8歳の年、ついにお母様は起き上がる事が出来なくなり、自分で魔法を使う事ができなくなった。


お父様は、教会に依頼し上級光魔法の使い手を呼ぶようになった。

教会の人は、3日に1度の割合で我が家に訪れる様になったが、お母様は一向に回復する気配がなかった。お母様と同じ上級光魔法だから当たり前だと思ったが、それ以外手立てが無いのも事実だった。


我が家の家計はどんどん切迫していった。


ある日を境に、お父様が家に帰らなくなった。

お父様が家に戻ると決まってお金を置いていった。支給日でもないのに、それなりにまとまった金額を置いて、また直ぐに家を出て行った。

その少しの間の会話を重ね、数ヵ月掛けてお金の正体を知った。お父様は、同僚の仕事を少しづつ請け負い、治療費を稼いでいた。同僚も事情を察してくれていたらしく、仕事を融通してくれていたようだ。


会うたびに顔色は悪くなり、やせ細る父を見ていられなかった。


私は、積極的に魔法を使い家事をするようになった。

毎日の井戸への水汲みを止め、水魔法で補充する様にした。薪を購入するのを止め、火魔法で対応するようにした。暗く成れば、ジークの傍だけ蝋燭を使い、光魔法で夜を過ごした。

出来る限りの努力をし毎日精一杯頑張って時間を作るようにした。


私は、その空いた時間を使い「そろばん」を作った。

納得のいく出来になるのに半年を要した。9歳になる目前の冬の事だった。



──ドン!ドンドン!


「はじまりの鐘」が鳴るよりも三刻ほど前の時間、ドアの叩かれる音が家に響いた。

このノックの仕方は、たぶんお父様だ。私は、ベットから飛び起き玄関に向かった。


「…お父さん?」


「…そうだ。こんな時間にすまないな…。」


「おかえりなさい。御飯、食べる?」


「すぐ出来るのかい?」


「うん、大丈夫。寒くなってきたから、夕飯のオカズの残りを朝食にしてるの。それがあるから、温めればすぐ出来るよ。スープは、青いアレだけどどうする?」


「アレか…ちょっと今はしんどいな…温かいウィーティを貰えるかい?」


「わかった。お湯用意するから体でも拭いて?」


「ありがとう、リーゼ。」


私は洗い場の大きな桶に水魔法で水を張り、火魔法で温め、お父様が体を清められるように準備をしてから夕飯の残りを温め食事の用意をした。

直ぐに仕事場に戻りたいのか、お父様はあっという間に洗い場から出てきた。


「はい、お父さん。おまたせ。」


「ありがとう。…母さんの具合はどうだ。ジークは元気か?」


「ジークは元気だよ。最近は、外に興味深々でちょっと手が掛かるかな。お母さんは…、あんまり良くない。1日の殆どを寝ている状態で、少し痩せてきてる…それでも、お父さんの痩せっぷりよりマシかな…。ちゃんと食べてる?寝てるの?」


「お父さんは大丈夫だ。そろそろジークの洗礼衣装を頼まないとな…。」


「お母さん…、お父さんに会いたいって言ってた。」


「そうか…そうか…。」


お父様の瞳が少し潤んだ気がした。お父様だってお母様に会いたいし、ずっと傍にいたいんだと思う…でも、それをしないのは…自分を追い込み奮い立たせる為だって解ってた。


「お仕事、どう?」


「あぁ…なんとかやれてる。リーゼ、心配するな。お父さんがなんとかするから…そんな事まで気にしなくていい。リーゼは十分…いや、大人に負けない位良くやってくれている…本当に、すまない…」


「私は元気だよっ!あやまらないで!」


「っ!?…ありがとう…ありがとう…」


とうとうお父様が泣き出した。お父様の涙を見たのは、これがはじめてだった。

私は、横の椅子に置いてあった風呂敷をおずおずと出した。


「お父さん…。あのね、コレなんだけどね…」


「…うん。…それは…なんだい?」


「えっと…これはね。お父さんの助けになればって…私が作った…計算機なの。」


「…計算機?」


「うん。お父さんのお仕事は、計算でしょ?大きな数字を扱うから凄く大変だよね。それで、これはその計算を助けてくれる道具でね…」


私はお父様に「そろばん」の使い方を教えた。

そろばんの原理は簡単だ。一度覚えてしまえばあとは少しづつ慣れていけばいい。

一つ一つの数字を足し、木簡に途中まで記録し、足したり引いたりを繰り返すよりは覚えたてでも十分に早いはずだ。木簡の処理の手間もないし、途中で手を止めてもどこまでやったか覚えていれば問題ない。

前世の記憶の「そろばん」に比べれば、桁数も少ないし、珠の1個1個も歪なもので、見た目こそ不格好ではあるが十分に実用に耐えられる。


「リーゼ!これは凄いぞ!」


「うん。だからね、これでお父さんの時間を少しでもお母さんにあげて欲しいの。」


「ありがとう…ありがとうリーゼ…。」


お父様はその日、「はじまりの鐘」から二刻ほど、本来の出勤時間まで「そろばん」の使い方を覚え、それを持って出かけて行った。


その日を境に、少しづつお父様が家に顔を出すようになり…半年過ぎた頃には、毎日少し遅いながらも帰ってくる様になった。それは、私の9歳の夏の終わりだった。



誤字脱字、矛盾や感想等 是非宜しくお願い致します。

作者は恋愛物のつもりで書いてます!

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