表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

転生畦道



(ここはどこだ・・・?)


 目の前がすべて灰色だった。何も無い、ただ視界一面が灰色。

上下左右を見ようとしても首が動かないどころか、目線すら動かせない事に彼は不満を感じたが、そういうものだと思い、後にする。

 此処が何処かも後で考えるとして、今は自分がどうなってるか把握しようと努める。


(体の感覚が無い、鼻も口も無い、息が必要ないのか。それと足場があるようにも思えない、もしや浮いてるのか?)


 もっと知りたいことがあるはずだが、何を知りたいのか頭に浮かんでこず、考えようとしても、疑問がすぐに頭から掻き消える為に、此処が何処かも、考えたくても頭の中で「灰色だな」で終わってしまった。


(何処なんだ此処は、ああでも灰色だな、どうでもいいか。・・・いや、良くない、俺は今どうしてこんなところに?でもいっか別に灰色のとこにいるだけだし。・・・いやそうじゃなくて、あれ?さっき何を思ってたんだ?)


 考えが纏まらない。

 自分の事すらわからない事にイライラしても、そのイライラもすぐに「まあいいか」で消える。


 もう考えるのをやめようか、そう思ったとき。


[やあやあ!君、俺の世界こない?]


 そんな声が聞こえた、しかも一つじゃない。


[私の世界に来ませんか?あなたにとっても楽しい世界ですよ!]

[うぬよ、我の管理する世界に来い]

[てめーは俺様の世界に来い!]


 男2人、女2人の声が聞こえる。姿は見えない、視界は相変わらず灰色だけ。


(どこでもいい)


 今は何も考えられない、頭がボーっとして何の疑問も浮かんでこない。


[では我の所に]

[まてい!俺が一番乗りだぞ!俺のモノだ]

[いえいえ私が先でした。ですから私のモノです]

[よし、じゃあ今のうちに俺様のとこに]

[させぬ!]

[ダメだ!]

[阻止します!]

[チッ・・・]


(うるせぇー・・・)


 何を言っているのか、理解しようとすら思わない。 


[よしわかった、これじゃ埒が明かない。コイツに聞いてみよう。なあお前さん、誰の声が一番最初に聞こえたか、教えてくれないかい?]


(・・・男の声だな、どっちかは忘れたが男の声が先に聞こえたのは覚えてる)


[じゃあ俺だな]

[いいや俺様だな]

[そうか・・・残念だが、我は降りるとしよう]

[そうですね、私も降ります・・・]


 男2人がまだ言い争っている。

 もう何がどうなってるか、心底どうでもよくなってきた。もう自分はここにすらいないのかもしれない。


[くっそがぁ、ここじゃなけりゃ力尽くで奪えるってのに!]

[たられば言ったってしょうがないぞー、こうなったらコイツに聞いてみよう。まだ大丈夫なはずだ]


 ・・・・・・・・。


[だいぶ危なくなってるな。一言でいい、お前は何になりたい]


(・・・”無視”だ、もう話しかけるな)


[”虫”か!]

[”虫”か、人じゃねえのか・・・。クソッ!降りるぜ]

[よーし、残ったのは俺だけだな。じゃあ俺のとこへ、御一人様ごあんなーい]


彼の視界が灰色ではなくなっていき――――



==========




「ハァッ!・・・あれ?どこだここ?」


 気が付けば、自分は白い廊下に居た。

 どんな場所かと思い廻りを見回す。見回すことができた、ということは・・・


「首が動かせる!おお、声も出てるぞ!よっしゃあ!」


 何でこんな事で喜んでるか自分でも分からないが、とにかく嬉しい。嬉しさのあまり叫んでしまった。


「ふぅ、スッキリした。・・・で、ここはなんだ?」


 まずこの廊下、天井と床は真っ白で、両端に錆びた青銅と同じ色の柱が等間隔に立っている。天井までの高さは大体3メートル、人が3人真横に並べる幅の廊下。

 そして壁がなく外が見える、外は波があるから海だ。廊下は海面より少し高い位置に建てられており、浮いているわけではなかった。柱より外側には出られず、見えない壁に阻まれてしまう。

 雲が点々と浮かぶ青い空には、輝く太陽もある。


 ふと、後ろはどうなっているか気になって振り替えって、少し後悔した。

 目測5メートル先で廊下が途切れていた。それだけなら良かったが、ゆっくりと廊下が煙になって消えていたのだ。


「ゆっくりさせてくれないなんて、せっかちだな。まあいい、早歩きで行こう。早くなるかもしれないし」


 消える速度は自分が進む速度より遅いが、途中から早くなるかもしれない。


 周りの景色と廊下の先を交互に見ながら、廊下を進んで行く。

 廊下の先は霧にまみれて分からない。進む速度に合わせて霧も晴れていくが、今のところ一本道。ゴールが分からないのはちょっと不安になる。




 ずっと進んでいるだけだが、空が自分を楽しませてくれる。

 太陽が沈む速度はバラバラで3秒で沈んだり、おおよそ20時間ぐらいかけて沈んだり、挙句の果てにはカクカクぐねぐね動いたり、沈むかと思ったら引き返して沈まなかったり。

 そして太陽が沈んで夜になると星が空を覆い尽くし、とても幻想的な景色だったが知っている星空と同じではなく、星座の並びになってる星はなかったのは残念だった。だが夜になる度に星の並びが変わるので自分で星座を作ったり出来るから、全然飽きない。月も夜になる度に数や形が変わるから、楽しみの一つになった。

更新は不定期です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ