第十四話
「収穫祭?」
「はい。領主様にも村の一同で祝う収穫祭に、ぜひご協力頂けないかとお願いに参ったのです」
村長がそう言って来たのは、山賊騒ぎの後に行われた稲刈りが終わってからすぐの事だった。
「もちろん領主として村の行事に参加するのはかまわないけど、何をしたらいいんだい?」
「領主様には特にしていただくことは無いのですが……その、よろしければ領主様のところで働いている娘たちに、巫女役をやっては頂けないかと」
「巫女役?」
「はい。帝国で信仰されていたフェネス神様に感謝と来年の豊作を祈願する舞を奉納するのですが……」
収穫を祝い豚や鶏と言った家畜を潰して供物として捧げ、来年の豊作を祈願する祭り。この時期どこの村でも見られる祭りだ。
しかし、そこまで言った時、村長はハッとした顔で俺を見た。
「あの……もしかして、リムディアではフェネス様の信仰さ、許されていないとか……?」
「いや、リムディアもフェネス神は広く信仰されているよ。教会だって各地にある」
「左様でございましたか」
ほっと胸を撫で下ろす村長。
戦争に負けて、それまで信仰していた神が邪神に貶められてしまうことはよくある話。
幸いフェネス神は太陽と豊穣を司る女神。リムディアだけでなく神聖ローレンシア、ソラン自由都市同盟でも広く信仰されている。もちろん、国ごとで教義は違うかもしれないが、感謝と豊作祈願の祭りに教義の違いも何も無いだろう。
「でも、村長も知っての通り、うちのメイドは外の村の出身者ばかりだぞ? よそ者が祭りへ参加しても良いものなのか?」
村によっては、祭りは村の者たちだけで行われて外部の者は締め出す祭りもある。
レルシェ村では違うのだろうか?
「領主様の家の者たちには刈り入れで随分と助かりましたからね。村の者たちも文句さ言わないでしょう。それに若い娘さ多いほうが、華やかで皆が喜びますさね」
なるほど。
でも皆が喜ぶというか、本当に嬉しいのは男たちなんだろうけどね。
稲の刈り入れは村人全員が協力して行われたのだが、我がウィンズベル騎士爵家からも、村出身のメイドたちに稲刈りへ参加してもらっていた。村の人たちと積極的に交流できる機会を与えてやったほうが、新しい生活に早く馴染めるだろうと思ったからだ。
ちなみに一番張り切って作業をしていたのは、我が領の財務担当であるリアーノ。もともと我が家の家臣募集に応募したのは、田舎で土いじりをしたいって理由だったからな。
金勘定ばかりで鎌を握ったこともないリアーノは、村の子どもたちに笑われながら楽しそうに稲を刈っていた。
「いやあ、村社会というのは閉鎖的と聞きますからな。商いを引退して、田舎で土いじりをしたいと思っていましたが、正直私どもだけで引っ越していたら村八分にされるだけじゃないかと考えていました。ですが領主様のところで働けるようになって、こうして念願だった土いじりもできるようになりました。本当にありがたいことです」
後で流れる汗を手ぬぐいで拭きつつ、リアーノが笑っていたのを覚えている。
「祭りか……」
我が家に仕えるメイドたちは、山賊たちによって家族、親戚、知人たちを皆殺しにされるという悲惨な経験をしたばかりだ。行くあての無い彼女たちを引き取って働いてもらっているのだが、心に受けた傷は察するに余りある。祭りに参加させて少しでも心の傷を癒やしてもらうのもいいかもしれない。
どのみち領主である俺は祭りに顔を出して、村の者たちに酒でも振る舞わなければならないのだから。
「わかった。俺の方から話してみるよ。ただ、人前に出ることを嫌がる子もいるかもしれない。あんな事があった後で無理強いはさせたくないから、あくまで巫女役は希望者のみ参加でいいかな?」
「もちろん構いませんでさ」
◇◆◇◆◇
稲の刈り入れが終わったならすぐに冬がやってくる。道は雪に閉ざされて町はもちろんの事、村と村との往来さえ困難になってしまう時期だ。
刈り入れを終えたばかりだというのに村の男たちは休む間もなく、ひと冬を越すために必要な薪を森から切り出して来て割り、乾燥させて積み上げる作業に勤しんでいた。女たちも果物を干し、芋や豆、木の実、雪の下に保存する根菜類などの確保といった準備に忙しく働いている。
そうした作業の合間に行われる祭りは村の人たちにとって、年に数回しか無い本当に楽しみな行事なのだろう。
なら領主として、俺なりにちょっと祭りを盛り上げてやりたいと思った。
ただ、祭りの日までに間に合うと良いけど。
村長から祭りの事を聞いた翌日、いつものように城館へやって来たケインとミーシャ、それからクレアの三人へ祭りのことを伝える。
「祭りの日までに君たちに、『明かり』と『自在光』の魔法を覚えてもらう」
「どんな魔法なんですか?」
「『明かり』はそのまま明かりを灯す魔法だな。『自在光』の方は――実際に見たほうが早いかもね」
ミーシャの質問を受けて俺は『自在光』を三人に見せてやるために、呪文を唱えた。
『我が下に集いし光よ 我が意のままに 我が為すままに 闇を照らせ――自在光』
三人によく見えるよう突き出した人差し指の先に、白く輝く小さな光球が生まれた。
そして俺は光球を赤、青、緑、黄、紫と、次々に色を変化させてみせる。
「わあ、綺麗です」
クレアが光球を見つめて、眩しげに目を細める。
ただ、光球の色を変化させるだけであれば、『明かり』の魔法でもできる。『自在光』がただの『明かり』と違う点は――。
俺は光球を少しずつ大きく、そして薄く一枚の板ガラスのように広げて見せた。
「え、何だこれ? 光の膜?」
「そうそう。こんなのもできる」
光の板ガラスというより、ケインの言う通り光の膜と行ったほうがわかりやすいか。俺は更に再び光を元の球状に戻すと、大きな輪っかを作ってみせたり、犬や猫、鳥といった形状も創り出してみせた。
「あは、なにこれ。おもしろ~い」
「面白いです」
動物を象った魔法は女の子二人に特に受けがいい。
「これが『自在光』って魔法。魔法に注ぎ込むマナの量を調節することで、色や光量はもちろん、形状も様々に変化させることができるんだよ」
「へぇ、こいつは祭りで使えたら面白そうだよな」
「実際、大きな都市にある劇場なんかでは、『自在光』を使える魔法士を雇って、ステージを盛り上げたりするのに使われることがあるね。ケインたちが祭りで使えば、盛り上がるんじゃないか?」
「でもさ、それってあたしにも使えるの? あたしのマナって、土と植物に相性が良いんじゃなかったっけ?」
「大丈夫。この魔法はマナを持つ者なら、誰にだって使えるレベルの魔法なんだ」
「使えるレベルの魔法?」
首を傾げるミーシャに俺はそう言って頷いた。
丁度良い機会だから、魔法のレベルについて説明することにしよう。
「魔法はその威力や規模の大きさによって、レベル1からレベル6までの六段階に分けられていてね。そのレベルの数字が大きい程、威力、効果範囲も大きくなっていくし、マナも莫大な量を必要とするんだ。それでレベル1から2の魔法は大してマナを消費しないから、相性の良くない物でも魔法を発動できるんだよ」
『明かり』と『自在光』は、共にレベル1の魔法に分類されている。つまり魔法士の素質を持つ者なら、誰だって覚えられる魔法なのだ。
「でもさ、『明かり』と『自在光』って、どっちも明かりの魔法だよね? だったら『自在光』だけ覚えてれば、『明かり』を覚える必要なんて無いんじゃないの?」
「確かにケイン兄の言うとおりかも。『自在光』で十分明かりとして使えるものね」
「でも、だったら領主様が二つも教えようってしないと思います。『明かり』の魔法を覚えていないと、『自在光』を覚えられないのかも……」
双子の会話にクレアが意見を挟み込む。
ふむ、クレアは双子に対しては打ち解けてきたのかな。
自分の意見を言えるようになるのはいい事だ。
「まあ、クレアの言うとおりなんだけど。理由は別にもあるんだ」
俺はヒョイッと人差し指を振ると、指の先に灯したままだった『自在光』の光球をケインに投げつける。すると飛んでいった光球は、ケインの額にぶつかって――パチンと弾けた。
「あ、いてぇ……って、痛くない?」
「痛くないだろ?」
額で音を立てて弾けた割に、何も衝撃を覚えず目を白黒させるケインへ俺は笑う。
「『自在光』は、ある程度の衝撃を与えると弾けて消える性質があるんだ。逆に『明かり』は何かにぶつかっても消える事が無い」
「へえ……」
額をさすって感心した声を出すケイン。
「『自在光』は、軍の魔法士が必ず覚えさせられる魔法だ」
というか、この『自在光』という魔法、『明かり』を元に軍で開発された魔法だったりする。
光を様々な形に変化させることができ、軽い衝撃で弾ける性質を持つ『自在光』は、主に軍の模擬戦で活用される。『自在光』を、実在する攻撃魔法や防御魔法の形状に変化させて互いに撃ち合う。本物の攻撃魔法を使えば負傷者どころか死者も出かねない魔法戦闘の訓練でも、この『自在光』を用いれば、直撃しても光が弾けるだけなので安全に訓練できるのだ。
「こんな感じにね」
俺は『風裂斬』を模して光球を薄い刃状にすると、近くの枝に向けて飛ばしてみせる。
枝に当たった光の刃は弾けて消えたが、枝には傷一つ付いていない。
「まずは『明かりの』魔法から始めようか。呪文は『集え光よ 闇を打ち払い 我が行く手を照らす灯火となれ』だ」
「「「はーい」」」
返事をして、早速それぞれ呪文を詠唱する三人。
そんな三人を見ていてふと気づいたのだが、そういえばアリスは何をしているんだろう?
文字や教養を教える時には顔を出しているのだが、三人に魔法を教えている時にはあまり顔を出さなくなった。今日も姿を見せていない。
「おあっ! できた!? できた!」
「私も! 私もできました! できました、領主様!」
アリスの事を考えていると、なんとケインとクレアの二人の指先に小さな光球が生まれているのが見えた。
「え? え? 何で二人とももうできてるの!?」
一人、『明かり』の光球を生み出せていないミーシャが焦った声を出す。
ケインは火を生み出すために、クレアは棒切れを使ってマナを見るために一点集中の練習をしていたからだな。『明かり』の光球はマナを一点に集中させるのがコツ。ちなみに火を作り出すのも同じ要領なので、ケインは火属性もすぐに使いこなせるようになるかもしれない。
「今度は、光の球にマナを注ぎ込むイメージで大きくしてごらん。ミーシャは目を閉じて、指先へ意識を集中してみるといいかもね」
土属性を持つミーシャは多分、地面から放出されているマナが視界内に入ってしまい、集中を阻害されてしまっているのだろう。
俺の助言通りにミーシャは目を閉じて呪文を詠唱する。
「あ、あたしにもできた! できたよ!」
ミーシャの指先にも小さな光球が生まれていた。
「領主様。こんな感じですか?」
「ん? おお、クレアは早いな」
見るとクレアの光球は人の顔程度の大きさにまで膨らんでいる。
「うわ、クレアはもうできてんのか。マナを注ぎ込むってのがよくわかんねぇ!」
「ああ、俺は空のコップに水を注ぐ感じにイメージしているな」
「空のコップ……」
「空のコップに限らずでもいいんだけど、何か物を増やすものイメージすると、マナを集中しやすくなるって俺の師匠は言ってた」
「よくわかんないけど、やってみる」
まあ、俺も何となくのイメージでしかないからな。
「クレアはそこから今度は光球を小さくしてみなさい」
「はい」
クレアがじっと光球を見つめる。
すると徐々に光球は小さくなっていき――。
「あ……消えちゃいました」
とめどなく小さくなっていった光球は、消滅してしまった。
「最初はよくやる失敗だな。マナを絞る加減がわからなくて、魔法の効果を消してしまうんだ」
ちなみに、このマナの増減を極めて行った魔法に、他者の魔法へ込められたマナに干渉し、魔法の効果を打ち消す『対抗呪文』と『呪文消去』という魔法があるのだけど、まだこの子たちが覚えるには早い高等魔法だ。
「もう一度『明かり』を」
「はい。『集え光よ 闇を打ち払い 我が行く手を照らす灯火となれ――明かり』……あ、あれ?」
「今度は簡単に使えただろ?」
「は、はい。さっき程ジーっと指先を見つめなくても、簡単に使えました」
「一度使うことのできた魔法は、さほど意識をしなくても使えるようになるんだ。俺たち魔法士はこれを『導線ができる』とか『回路ができる』って言うんだけど、俺たちの身体にあるマナが、呪文で魔法へ即座に変換してくれるようになるんだ」
「今度は上手くおっきくしたり、小さくしてみます」
「うん。クレアはそれができたら、次は光の色の変化だな。これはマナを増減するよりも簡単だから、もっと早くできるよ。そしたら『自在光』の呪文を教えよう」
「領主様! あたしもできたよ!」
「ミーシャもクレアと同じだ。次は光の色を変えよう。ケイン、女の子に負けるなよ?」
「くっそー……、小さくするのが難しい」
ケインはマナを大きく注ぎ込むことはできているようだが、減らすのに苦戦している様子だ。
でも、一日でこれなら祭りの日までには『自在光』も操れるようになるだろう。
◇◆◇◆◇
「領主様、領主様。こちらへ、こちらへどうぞ」
祭りの日。
俺は村長の隣にしつらえた席へと案内された。
いわゆる上座って奴なんだろう。
「ささ、領主様。まずは一杯」
村長に薦められてこの村で作られた酒を口にする。米から作られたお酒らしい。飲むとほんのりと甘みが感じられて美味い。
「美味いな、これ」
塩をたっぷりとまぶして炒った豆をつまみに飲む。
村の広場には薄い白衣と髪飾りを付けた若い未婚の娘たちが二十数名が集まっていて、何やら賑々しく、かしましく、お喋りに興じている。うちのメイドの子たちも全員参加してくれたようだ。アリスとミーシャ、クレアの姿も見えた。
「いやあ、今年は若い娘さんの姿が増えて華やかでいいですなぁ」
村長が目尻を下げて酒を飲んでいる。
いや、村長だけじゃない。村のほとんどの男たちもだ。
まだ未婚の若い男たちは、彼女たちの周囲でいかにも何か用事をこなしているフリをしつつ、チラチラと話しかけるタイミングを窺っているようだった。
「しかし、アリスさんは特に目立ちますな」
うちのメイド隊の子が作る輪の中心にいるアリス。背が一人だけ飛び抜けて高いのもあるのだが、とにかく立ち姿とスタイルが抜群にかっこいい。
そう、かっこいいのだ。
男の目から見てもかっこよく見えるアリスは、胸元の膨らみが人並み以上でなければ貴公子に見えるかも知れない。
「えへへ、隊長ぉ。どぉですぅ? 私の巫女服ぅ?」
あと喋らなければというのも付け加えておこう。
「ああ、似合ってるよ。祭礼の段取り、くれぐれも間違えるなよ?」
「任せておいてくださいよぉ。今日までみっちりぃお稽古してきたんですからねぇ?」
アリスの言葉にメイドの子たちにクレア、ミーシャ、それに村の女の子たちも頷いた。
「班長。そろそろ準備しませんと……」
「あ、もうそんな時間?」
班長って……、何だっけ、俺の護衛班長ってアリスが勝手に作った役職、メイドの子たちの間にも浸透しちゃってるのか。
「じゃあね、隊長ぉ。また後でねぇ」
「ああ、頑張ってこい」
祭りが始まった。
まずは太陽と豊穣の神フェネスへ、感謝と来年の豊作祈願の祝詞と舞を奉納するところから始まる。
静まり返った広場に、巫女たちが粛々と祝詞が詠み上げる声が、冬の気配を感じさせる冷たい風に乗って広がっていく。そして巫女たちは広場の中心に薪を井桁に組んで盛大に燃やしている焚き火を中心に舞を踊る。
例年であれば、夜の帳を迎える村の明かりはこの井桁に組んだ焚き火だけなのだが、今年はクレア、ケイン、ミーシャの三人が『自在光』で生み出した光球が、広場の至る所で輝いている。
村の広場が闇の中でぽっかりと光に浮かび上がっていて、光に包まれて踊る巫女の少女たちをより幻想的に美しく見せていた。冷たい風に薄い白衣と寒そうなかっこうをしているのに、彼女たちの白い肌はほんのりと上気していて、得も知れぬ妖艶さも感じさせる。そんな彼女たちを、男たちが食い入るように見つめてしまうのも無理はない。
奥さんにしばかれている人もいる。
ちなみに俺は村長と二人で。
「やあ、あの子はうちの村の子でも一番良い体をしてると思うんですよ。どうです? 領主様の奥方にでも?」
「うーん……確かに。アリスにも勝るとも劣らないな、あの子は」
「ああ、そうですなぁ。領主様にはアリス様がいらっしゃいますからなぁ。それに領主様のところの娘たちは、なかなかに器量良し揃いで……うちの村の娘たちでは、ちと難しいですかな」
「いやいや、この村の娘たちもなかなかに粒揃いじゃないですか」
などと、勝手に品定めをしていたのは、酒が進んで酔っ払っていたからです。
厳粛(?)な雰囲気で舞の奉納が済むと、後は飲み食いして騒ぐだけだ。
「ご主人様、どうぞ」
「ご主人様、ご主人様。私のお酒もお飲みください」
「ご主人様、こちらのお魚も大変美味しいですよ?」
舞が終わるとうちのメイドの子たちが、酌をしに来てくれた。
「あ、ああ。ありがとう。うん、この料理は美味しいな」
「ふふ、イザベラさんに教わって作ったんですよ」
「へえ、そうなのか」
薄い白衣、そして舞を踊った後で胸元の合せ目が緩んでいて、ともすれば彼女たちの谷間や膨らみが目に入ってきそうで、目のやり場に困りながらもちょっと嬉しい。
ついでに村の若い男どもの目線が痛い。
「隊長ぉ、何をデレデレしているんですかぁ?」
「で、で、デレデレなんてしてないぞ!」
俺の隣に強引に座ったアリスが刺々しい。
「まあまあ、アリス様。領主様も男ですから。アリスさんや皆さんのような若く美しい女性に囲まれては、顔も緩んでしまいますよ。さ、領主様。私からも一杯」
そんなに顔が緩んでいるのか、俺は?
テベスから酒を注がれて俺は一気に杯を呷る。
「隊長ぉはいつだって、若い女の子を見るとデレデレしてますよぉ。最近は特に……。ねえ、クレア」
「……り、領主様はいつだって立派に……立派に……」
そこでなぜ言い淀む、クレア。
テベスの酒を飲み干した後は、次々に村の者たちから酒を注がれ、俺は飲み続けることになった。
その後、俺がどうやって自分の城館へ帰ったのかは、よく覚えていない。
祭りの翌日、昨夜の深酒が祟って昼前まで寝ていた所をクレアにそっと起こされた。
「領主様、何か急ぎだっていう手紙が届いていました」
「手紙……?」




