第十二話
「到着が遅れまして申し訳ございません、旦那様」
「いえいえ、無事の到着何よりでした」
ローリンゲンで、我が家の家臣募集の広告へ応募してくれたリアーノ氏とイザベラ夫人が、レルシェ村へと到着した。
「旦那様のお言葉に甘えて妻と二人ゆっくりとこちらへ参りましたので、旅の疲れはそれほどに感じておりません」
「いかがですか、レルシェ村は?」
「良いところですなぁ。山の中というだけあって空気が美味しく感じられます。それにここはとても静かですね。ローリンゲンは鉄鍛冶の工房が多いので、四六時中カッチンカッチンとうるさいのです。遠方から来られた旅の方の中には、それで寝不足となってしまい商談で失敗する者も多いそうですよ」
「そうでしたか」
魔法、砲弾飛び交う戦場に慣れてしまった俺は、音など気にせず眠っていたけどな。
そういえばクレアは時々食事中に居眠りしてしまうことが多かった。あれは初めての町に興奮して寝付けず寝不足なのだと考えていたけど、案外騒々しい物音で眠れなかったのかもしれない。
「ところで旦那様」
「なんでしょう、イザベラ夫人」
「旦那様が私と主人に敬意を示してくださるのは大変ありがたい事だとは思うのですよ? ですけど、旦那様の威厳を保つためには私どもの名前を呼び捨てになさったほうが良いように思われます」
「そうですなぁ。妻の言う通り、他の使用人の目もありますし……」
リアーノ氏はそう言うと、俺の背後に控えて佇んでいる家の者たちへ目を向ける。
「初めてお会いした時より、随分と家臣の方が増えたようで」
「ええ、いろいろと事情がありまして――あってね……」
イザベラさんが困ったような笑顔を浮かべてくるので、俺は言い改めてみた。
そうなのだ。
ウィンズベル騎士爵家は大幅な人員増加がなされたのである。
レルシェ村前代官フィリップ率いる山賊団を壊滅させた俺は、その後領主としていろいろな後始末に追われる事となった。
まずは殺した山賊どもの死体の処理。
死体を放置すれば、虫が湧いて伝染病の原因にもなりかねない。これは土属性の魔法で深い穴を掘ると、『土塊の従者』を使って穴に埋めれば解決だ。
生かして捕らえた山賊どもは厳重に縛り上げて、自警団長のフーゴに頼みローリンゲンへ送った。生き残った山賊は五人だけで、俺によって強烈な恐怖を植え付けてやったので村の男たちだけでも十分にローリンゲンへ送り届けることができるだろう。
それから山賊たちから保護した娘たち、全員で十八人。山賊たちが町や村、商隊などを襲って拐ってきた娘たちは、全員見目の良い若い娘だった。彼女たちの身の振り方も考えてやらなければならない。
山賊を討伐後、このレルシェ村へと連れて帰り事情を聴取してみると、フィリップは彼女たちを後ろ盾となっている貴族のもとへ送るつもりだったらしい。
そのためできるだけ美しく若い娘を選別していたそうだ。商品というか贈り物にするつもりだったためか、身体を触られるなどはされたがひどく乱暴な事はされなかった事が幸いである。
娘たちのうち七人は家や遠方の親戚など頼る場所があるということで、そこまでの旅費を支援してやって送り出した。
問題は、村そのものが焼き払われていたり、家族で商隊を組んでいたため皆殺しの憂き目にあい、身寄りを失ってしまった残る十一人の娘たちだ。
そこで、行くあての無い彼女たちを俺はウィンズベル騎士爵家のメイドとして雇う事にした。
ちょっと人数が多すぎるが、家臣の増員は考えていたので丁度良い。
「これってぇ……領主様ぁ、ハーレムじゃないですかぁ?」
領主として被害者を保護するのは当然の義務。
俺はなんらやましい事はしていない。
「ハーレムですよねぇ?」
うるさいなアリス。
アリスの冷たい視線にも負けず、俺は彼女たちを領主の義務として雇用した。
幸い、城館には空き部屋がまだいくつもある。
二階の四部屋のうち、一部屋を俺。もう一つの部屋をアリスとクレア、そしてリアーノとイザベラに使ってもらう。
そして新たに雇った十一人のメイドたちには、地下の三つの大部屋に四人、四人、三人と別れてもらった。
元々使用人部屋として使われていたらしいこの部屋。一部屋に二段ベッドが四つずつ置かれていて、八人で使用するようになっていた。だから四人と三人で使えば十分な広さがある。
「日の当たらない地下ですまないね」
そうは言っても地下は地下。
換気と明り取り用の小さな窓が天井付近にあるだけで薄暗い。
でも案内した俺がそう言うと、彼女たちはとんでもないという風に口々に言った。
「十分広い部屋ですよ。ご主人様の寛大なお心に感謝します」
ご、ご主人様って……おい。
ちょっとにへら~ってしてしまった。
俺を見るアリスとクレアの視線が痛い。
「薄暗いと精神衛生上良くないから、当番で明かりの魔法をもらいに来なさい」
部屋割りを決めた後、彼女たちはすぐに自分たちの居住環境の改善に着手した。
俺とアリス、クレアの三人だけでは手が足りず、埃にまみれたままだった地下室を綺麗に掃除してしまうと、続いて庭や城館へと続く階段の雑草までも抜き取ってしまう。
さすが元々は村娘だったり、町の商会や商隊で働いていただけのことはある。手際が良い。
そしてリアーノ夫妻が到着する頃には城館は、すっかり綺麗に掃除されていたのである。
「リアーノさん――じゃない、リアーノとイザベラの二人には、家令とメイド長として働いてもらいたい。彼女たちの指導、世話などもよろしく頼む」
「かしこまりました、旦那様」
こうしてウィンズベル騎士爵家の陣容は整ったのである。
◇◆◇◆◇
「ははあ……いや、領主様。これはまた、随分と華やかになりましたなぁ」
「やあ、テベス。今日はどうしたんだ」
「リアーノ氏に呼ばれまして。村で作った品物の納品先や、納入額などの数字が知りたいと……」
「そうか」
リアーノがウィンズベル家の家令兼財務管理の役に就いてから、頻繁に村長やテベスが顔を出すようになった。マイセン様から取り寄せた書類と、村長、テベスの持つ帳簿を見比べ、時には二人から様々なことを聞き取りながら仕事をしているのだ。
良い人材を雇えたものだ。
「テベス様、こちらへどうぞ」
「では、領主様。失礼致します」
メイドに呼ばれてテベスが会釈をして歩いて行く。
俺が執務室にしようとしていた部屋は、今はもっぱらリア―ノが使用している。俺の仕事はリアーノがまとめた書類を読み直し、末尾にサインを書き込むだけになってるから。
メイドとなった十一人のうち四人の娘は、町や商隊にいた事から文字の読み書きはもちろん帳簿なども読める。そこで彼女たち四人はリアーノの補佐をするようにと申し付けていた。
最初、レルシェ村程度の規模の村の帳簿管理に、それだけの人手が必要なのかと思ったのだが、リアーノは村を更に大きく発展させるための方法を探っているらしかった。
「旦那様、私は以前から考えていたのです。ローリンゲンの町と山を越えた先にある港町ロカを、直接結ぶ事はできないかと」
ロカの町とは、この間ローリンゲンに行った時に会ったロンドベル伯爵が治める港町。
ローリンゲンの側を流れる大河、シェン川の河口に栄えている交易都市なのだが、実はこれまでローリンゲンとロカの間に交流は無かった。
ローリンゲンは元々神聖ローレンシア帝国、そしてロカはリムディア王国に属していたからだ。
それが今やローリンゲンもリムディアの属する事になった。
なら、何を遠慮する事も無く物資を流通させる事ができるでのある。
もしかしたらあの時ロンドベル伯爵がローリンゲンに来ていたのは、その辺りの話をするためもあったのかもしれない。
「でも、ローリンゲンとロカは河で往来できるだろ? 物資を運ぶなら船のほうが楽なんじゃないか?」
レルシェ村も通る山道は、確かにローリンゲンにもロカへも続いている。
だが険しい山道だ。
船で河を降ったほうが大量に荷物を運べるし、速度も早い。
「旦那様がおっしゃる通り、確かにローリンゲンからならロカへは河を降ったほうが遥かに早いでしょう。ですが、この山道沿いにも集落は幾つもあります。道を整備し宿泊できる場所をもっと増やせば、この山道にも多くの商隊が訪れるようになる。それに旦那様が山賊を討滅した場所の事なのですが……」
「ああ、あの坑道跡っぽい所?」
「ええ、調べましたところ、そのような坑道があった事など正式な記録はございません。私も長年ローリンゲンで商いを続けてまいりしましたが、あのような場所に坑道があるなど聞いた覚えもございません。もしかしたらあそこは、隠された鉱山かもしれません」
「へえ……」
そういえば、二十年前までこの地を治めていたレルシェ男爵家は、重税と様々な非合法の事業に手を染めて莫大な額の私腹を肥やし、その結果帝国政府によって潰されたと聞く。
その非合法の事業がどういったものなのかは知らないが、レルシェ男爵がこれだけの城館を構えて贅沢な暮らしを送れるくらいの稼ぎを得ていたのは確かだ。
その財源の一つに隠し鉱山があったとしても不思議な話ではない。
「もちろん、ただの廃坑の可能性もあります。そこは調べてみなければわかりませんが、もしもまだ何らかの鉱石が出るようでしたら……」
それはウィンズベル騎士爵家の発展に大きく繋がる。
「……わかった。調査などは任せるよ」
「かしこまりました」
リアーノはそう言うと一礼をして下がる。
ふう。
俺がそう一息つくと、クレアがお茶を運んできてくれた。
「領主様、お茶をお持ちいたしました」
「ありがとう」
クレアも大分手慣れたな。
クレアは俺の小間使いのような感じで働いていた。
俺が誰かを呼びつける際の連絡役、お茶などの運び役等、雑用をこなしている。
なんだろう。こうしていると騎士爵だというのに、いつの間にか大貴族にでもなった気分だ。
毎日メイドに傅かれていると、そんな気分になってくる。
それもこれもフィリップのおかげだ。
あの前代官フィリップは町や村、商隊から略奪した大量の物資や財宝、もともと本人の物と思われる金品の類を隠し持っていた。
それらを俺はそっくり押収していた。
領主である俺は取り締まる側の立場にあるので、山賊フィリップに賭けられた報奨金は受け取れない。
しかし、彼らの奪った略奪品を俺の物とすることができて、うちの家の財政はかなり潤うことができた。ついでに結構な数の帝国軍制式採用小銃と弾薬も手に入れている。
これらは全てアリスに任せることにした。弾薬の補給が難しいと嘆いていたからな。
王家からの支援金とこの臨時の収入で潤った財源の管理はリアーノに任せたし、これでいよいよ俺は領地の自衛力の強化に乗り出すことにする。
◇◆◇◆◇
「お前たち三人に魔法を教えようと思う」
「は? 魔法?」
「あたしたちが魔法を?」
「え? えっと……あの……」
「ねえ、どうして私には魔法を教えてくれないんですかぁ?」
城館の俺の部屋。
呼びつけたケイン、ミーシャ、クレア、そして俺が呼んだ覚えの無いアリスの四人が面食らったような顔をする。
「そう、魔法だ。お前たち三人には魔法士の素質がある。そしてアリス、お前には素質ないからさっさと仕事しろ」
というかこいつ、メイドを雇ってから何の仕事しているんだろう?
厨房もイザベラさんが取り仕切っているし、城館の毎日の掃除、洗濯等はメイドさんたちがやってしまうから、こいつが特別にやらなきゃならない仕事はあまりない。
「私だってぇ、ちゃんと仕事してますよぉ。隊長ぉの護衛班長としてぇ」
護衛班長ぉとか勝手な役職作るんじゃない。
まあ確かに、俺がローリンゲンに出かける時などの側仕え役というか、護衛役にアリスを連れて行くんだけど。
「そのうち私が何の仕事をしているのかわかりますからぁ、隊長ぉは黙って見ててくださいよぉ」
「おい、本当に仕事をしているんだろうな? 最近お前、食っちゃ寝しかしてないように見えるから、太ってきてるんじゃないのか?」
「っ!?」
「――まあ、いい。話を戻すぞ。クレア、ケイン、ミーシャ。お前たち三人には魔法の素質がある。うちの領内には兵士がいない。そこでお前たち、特にケインとミーシャには村の守りを強固にするため、魔法を覚えてもらう」
「ちょっと待ってくれよ。俺とミーシャ、それにクレアに魔法の素質があるなんてこと、どうしてわかるんだ?」
「簡単さ。マナが多いか少ないか、それだけの事だ」
「マナ?」
「ああ」
ケインに頷くと俺はクレアを手招きした。タタタッと寄ってきたクレアの手を握ると。
「ほれ」
「?」
「はい」
「って、なんでお前が握るんだアリス!」
「ええ……。隊長ぉって、男と手を握る趣味があったんですかぁ?」
「違うわぼけぇ!」
ケインに向けた手を握りしめたアリスが言う。
ったく……。
「もういいからアリス、お前がケインと反対側の手を繋げ。ケインはミーシャと、ミーシャは反対側の手をクレアとで」
「手を繋いで輪になればいいの?」
「そうそう」
俺とアリスのやり取りを見てクスクス笑っていたミーシャがクレアの手を取った。
「ほら、ケイン兄」
「あいよ」
全員が手を繋いで輪になったところで呪文を詠唱。
「『森羅万象 天地を結び 我に真実の扉を開け――覚醒』」
「うわっ……」
「綺麗……」
「何これぇ……キラキラしてるぅ」
「…………っ!?」
アリス、クレア、ケイン、ミーシャの四人が口々に驚きの声を上げた。
俺が使った『覚醒』の魔法によって、彼らの目にはありとあらゆるものが薄っすらと白い光に包まれて揺らめいている幻想的な光景が広がっているはずだ。
「これが俺たち魔法士が視ている世界だ」
魔法士として訓練を積んだ俺が『視る』事ができる世界。
それを魔法を使うことで強制的に全員に視せている。
「領主様、この光ってるのは何なの?」
「その光っているものが魔法の源たる『マナ』と呼ばれるエネルギーだよ」
マナとは、人はもちろん動物、昆虫、植物、それにそこらの石から空気に至るまで、ありとあらゆるものに備わっている力。魔法士は自らのマナを用いて対象のマナへと働きかけ、様々な事象を引き起こすことができる。
「今視えている光景の中で、特に強く光っていたりするものはあるか?」
「うーん……特には……」
「私もぉ……」
ケインとアリスには全体が同じような光量で光って見えるらしい。
クレアも小さく首を横に振っている。
「あ、あたしは地面がちょっと光が強いかも……」
そんな中でミーシャが一人、窓から身を乗り出して周囲を見回していた。
「それに草木も……」
「ならミーシャは土と植物の持つマナに親和性が高いんだ。本人の努力次第になるけど、その二つの属性の魔法を修練していけば、結構強い魔法が使えるようになれるぞ」
「ほんとに!? ほんとにあたしが魔法を使えるようになれるの!?」
「土属性なら多少使えるから、魔法を教えることもできるな」
「じゃあ、光っているものが見えない俺たちに、魔法を使う事は無理ってこと?」
「いや、それはまだわからない。この周辺には無いものに親和性を持っている可能性があるからな。たとえばいま近場にない火とか氷だとかね」
マナはこの世にある、ありとあらゆるものに宿っている。そのどれと相性が良いのか、そのものに出会ってみなければわからない。
極論、そこらの地面を歩いている一種類の蟻の持つマナと相性が良い場合だってあるのだ。
そのため、魔法の種類は世界中に数千、数万種類以上存在すると言われている。
俺はそう言うと手を離すと輪を崩す。
「あ、視えなくなった」
「ケイン、マナを視ようと意識を集中してみろ。みんなもう、自分の意思でマナを視ることができるはずだ」
「あ、ほんとだぁ」
「一度視えるようになれば、もう二度と忘れない。まあ、その状態だと見える範囲全てのマナを視てしまうから、そこから自分が望む物だけを絞り込んで、その物だけのマナが視えるようにするには訓練が必要だけど」
このマナを『視る』という行為、魔法士と戦う際には非常に重要となる。
例えば俺が得意とする大気を操る魔法。風の刃は目に見えない。
普通の人間では見て躱すことすら不可能な事になる。
フィリップたち山賊を討伐する際、俺は何度も『天球圏』の魔法を使ってみせた。
あの時、フィリップたちにマナを視ることのできる人物がいたなら、すぐに魔法士の存在がいる事を気づけたはずだ。そして魔法士なら『対抗呪文』で俺の探索魔法を妨害しただろう。
しかし、フィリップたちは『天球圏』に気づかなかった。つまり魔法士どころか、マナを視る事ができる者すらいないことがわかる。そこで俺はローリンゲンの総督府へ応援を頼まずとも、一人で殲滅できると踏んだのだ。
「でも隊長ぉ、私だってマナが視えるのにどうして私は使えないのぉ?」
「素質がねぇからだよ」
「何でよぉ?」
「視ればわかるだろ? 自分と俺や他の三人を視れば」
「私だけぇ……光が弱いからぁ?」
「あー、まあそうだな」
俺は頷いた。
そう、アリスだけ俺たち素質持ちの四人に比べて、光の量が少ない。
魔法士はマナを視るだけで、その者が魔法士かどうかわかるようになる。
もっとも、訓練を積むと自身のマナを隠すこともできるようになるため、マナだけで魔法士かどうか判断するのは危険なのだが、今はそれは関係ない。
「マナ自体は誰でも持っている。大昔は素質のある者が山や絶海孤島に篭って、瞑想なんかの精神修行をしてようやく視る事ができたらしいけど、今は『覚醒』の魔法である程度のマナを持つ者になら視えるようになったんだ。アリスはそのある程度に分類されるんだな」
「ある程度なのかぁ……」
魔法を使えないと知ってしょんぼりとしたアリスに俺は、腰のホルスターを指差した。
「そのかわり、アリスには銃の才能があるじゃないか」」
「銃の才能ぉ?」
「前にお前が言ってただろ? 隊長が弾薬を装填して私に小銃を渡してくれたほうがぁ、まだマシな牽制ができるってさ。俺が銃を撃っても当たらないけど、お前なら当てられる。その程度のもんだよ」
実際、アリスの射撃の腕前は正直魔法じゃないかと思うレベルでの才能だ。
マナが視える者は千人に一人とされる。そこから更に魔法を使えるまでの素質を持つ者は篩い落とされる。だけど、そんなものはどんな才能だって同じものだ。魔法の素質があったって、結局は努力、鍛錬、修行、勉強に励まねば宝の持ち腐れになってしまう。
十メートル先の静止している的へ弾を当てるくらいなら、リムディア軍にもたくさんいるだろう。だがその的がランダムに動いていた場合、また百メートル以上離れていた場合に、百発百中で当てられる者の数は? ましてやその的のど真ん中に必中させられる者はいるのだろうか? 崖の上からでも山賊の頭を、確実にヘッドショットしてみせた腕前を持つアリス。
アリスの才能は、魔法を使えないなんて事を補って余りあるものだと思う。
口に出しては言わないけどな!
「まずは自分の意思で見たいものだけのマナを視る方法を身に着けようか」
こうして魔法習得の授業が始まった。




