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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
四章「継承者」
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 巨大な水晶の如きを頂きに精緻な装飾が施された絢爛たる儀仗。

その先端には、光の刃が形成されていた。

 アイリスは、余りに自然に立ち上がり、そして、余りに鋭く凶刃を振るった。

そんなことをすると、そんなことができると、誰が想起し得ただろうか?

 凶行、或いは、狂行であった。

ソウマとて、予期していない。

完全に不意をつかれていた。

自身が標的であれば、対応できていたかもしれない。

だが、そうではなかった。

それ故に、盾になることしかできなかった。

 アイリスは、ティアスを狙った。

ソウマは身体を投げ、ティアスは救われた。

それは、アイリスが描いた通りの展開だった。

 刃は深く切り裂き。

赤い血が舞う。

身体は力なく崩れる。

「そんな、どうして?」

 儀仗を携え睥睨する主君。

庇い倒れ伏した侵略者。

ティアスは、呆然と視線をやり、二人を対比する。

状況が理解できない。

「帝国の臣民でありながら、他国に様々な情報を渡していた。

これは背信に他ならない」

 クノスが、呆れるように告げた。

「そんな!」

 ティアスは我に返り、小さく、だが、強く声をあげる。

「ということで、よろしいですか?」

 クノスは、ティアスと対峙しているわけではない。

その視線の先には、アイリスがいた。

「そうさな。理由など、どうとでもなるが。

そういうことにしておこうか?

何れにせよだ。

卿らに求めたのは、枷となることよ」

「枷? 何故、こんなことを?」

「言うまでもなかろ?

帝国の皇帝らしくあるためよ」

 アイリスは、口元を歪め、嘲笑う。

誰あろう、自身を蔑む。

「さて、眠ったままで良いのか?

次は、外さず、首を刎ねるぞ」

 言いながら、アイリスは、視線をソウマからティアスへと向ける。

ティアスは、竦んで動けない。

小柄な少女の姿は、死神にしか視えない。

「困りましたね」

 声と共に、ソウマは、ゆらりと重力に抗うような、なめらかで不自然に立ち上がった。

傷痕はふさがり、出血は止まっている。

「やはり、死んではくれぬか。

わかってはいたことではあるがな。

生命を冒涜する、その在り様。

誠に不快なこと、この上ない」

 アイリスは、言葉を接ぐ。

呪うように吐き捨てる。 

「気持ち悪い」

 それは心からの言葉だった。

ソウマは、何も返さない。

ただ、ティアスに下がるように促し、振り払うように、アイリスと対峙する。

「さて、先にも言ったが、

余の狙いは、そこにある叛逆者共よ。

抗うがいい」

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