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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
四章「継承者」
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「遠路はるばるよく来た。歓迎するぞ」

「再びお会いすることができ嬉しく思います」

 ソウマとアイリスは、軽やかに言葉を交わした。

そこで時は止まる。

響いた麗句はすぐに失せ、静寂が訪れる。

口元の笑みににじむのは、遂に至った現在への感慨であり、或いは、諦め、呆れであった。

遂に対峙した二人は、数瞬、ただ視線を交わし、そして、結末へと一歩を踏み出した。

「卿は、帝国に何を望む? 何を求める? 何を強いる?」

「何も」

「で、あろうな」

 アイリスは、わかりやすくため息をつくように告げ、言葉を接ぐ。

「だが、それは最も残酷な選択肢だ」

「そういうつもりはないのですが」

「つもりはなくとも、そうなのだ。

力があるのであれば、腕を引き導けばいい。

だが、卿らはそうはしない。

女々しくも我らが傅くのを待っている。

つまるところ責任を取りたくないのだろう?」

「なるほど、そうかもしれません」

 ソウマは、頷く。

アイリスの言葉は的を射ていた。

これまで主導的な対応ができなかったのは、帝国の未来に責任を持てなかったからである。

帝都に侵攻するという判断も、ただ時計の針を進めるために、舵を切ったに過ぎない。

クノスを救出するという名目の先に、何らかの思惑があったわけではない。

省みれば、帝国に選択を迫るというだけの、おざなりで、卑怯なやり方であった。

事ここに至っては、命じるべきなのかもしれない。

だが、それでも、ソウマは、選ぶことを選ばない。

「謙遜は支配者の美徳ではない」

「胸に刻みます。

次があれば、少しだけ参考にさせて頂きます」

 困ったように笑い、ソウマは応えた。

「卿が、真に侵略者然としていれば、他に道もあったのだろうがな。

だが、だからこそ」

 アイリスは、責めるように、だが、慈しむように、言葉を抑えた。

この不毛な問答を続けられないことが惜しくあった。

だが、時間は多く残されているわけではない。

「ティアス、前に出よ」

「はい」

 突然、名を呼ばれたことに一瞬驚きながらも、ティアスは確かに応じ、足を踏み出す。

「よくやった」

 アイリスは告げ、そして、微笑んだ。

その醜い笑みを覗けるものはいない。

「えっ?」

 アイリスはゆらりと立ち上がり、そして、跳んだ。

放たれた刃は、ティアスの首へと吸い込まれた。

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