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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
四章「継承者」
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「ところで、私の部下はどうしている?」

「こ、ここにおります」

 クノスの問いかけに、じっと息をひそめていたティアスが応えた。

「壮健であったか?」

 一瞬、驚いたが、すぐに我に返り、クノスは静かに問いかける。

「はい、その」

「置き去りにしたことを謝罪しなければならないな」

「いえ、最適な判断であったと考えます」

「そうか」

 クノスは、柔らかくため息をつくように応え、そして、ソウマを睨むように、視線をやった。

「何もしていないだろうな?」

「おや、部下を置いていくという判断をされたのは、

私を信頼していたからこそ、ではないのですか?」

「それでも、部下の身を案じるのは責務だ」

「もちろん、帝国の客人として、然るべき待遇でおもてなしをさせて頂きました」

「自由を制限されるようなことや、発言を強制されるようなことはありませんでした。

快適な住環境を提供され――」

「そういうことではない。そんなことは解っている」

 かばうように補足するティアスの言葉を、クノスはやれやれと遮り、それから、質した。

「ソウマを信頼できるか?」

「はい」

 ティアスは、まっすぐと、そして、はっきりと答えた。

「なるほど、それなりに親しくなったようだな。喜ばしいことだ」

「そ、そのようなことは」

 たじろぐティアスに、クノスは深くため息をつくしかなかった。

「まあ、それはいい。

良くはないが、それよりもだ」

 クノスは、眼下の巨大都市船に視線をやる。

透過式ドームの外殻は走り抜けるように、そして、地表に俯瞰される自然はただ穏やかに。

それぞれの位相を示すように光景が異なる速度で流れていく。

「帝都は、貴公に、どう映る?」

「ただ、尊く美しいと」

 漆黒の闇の中にある緑の大地。

それは巨大なスクリーンに映し出された幻影のようでさえあった。

余りに儚く、現実であることを疑わせる。

「そうか、安心した」

 クノスは、ソウマの答えに、頷いた。

誇らしくもあった。

「帝都は我らの故郷であり、母でもある。

理解してくれとまでは言わない。

ただ、それを尊重して欲しいのだ」

「わかりました」

 ソウマは、理解していた。

この光景を望んでいるだけで、涙が零れそうになる。

そこに理由はない。

原初の記憶がそうさせるのかもしれない。

慈しみたいという気持ちを、静かに胸に秘し、そして、遥か彼方にある地球を想った。

「地球にいた時に、帰りたくはなりませんでしたか?」

「そうだな。否定はしない。

地球の自然環境は素晴らしいものであったが、それでもな」

「ええ、わかります」

 ソウマは、小さく頷く。

「ソウマも、同じか。

だが、そう急くな。

ゆっくりしていけ。どうせ暇だろう」

「はは」

 クノスの言葉に、ソウマは口元を歪めるしかない。

自身が一体どのように映っていたのか、不安になる。

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