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ティアスは、ここにいることを心から呪った。
呪うしかなかった。
「抵抗は軽微。一万四七〇九隻の脱落を確認」
感情のない声が艦橋に虚しく響く。
同時に、艦橋に展開する宙域図から、帝国艦の姿が失われていく。
想像力がわずかでもあれば、それが人々の死を表していることに、否応なく気づかされる。
知らず、ティアスの脚は震えていた。
わななかずにいられよう筈がない。
吐き気をもよおさずいられよう筈がない。
ティアスの様子に気づき、ソウマは、その肩に手を伸ばした。
横顔を覗き、声をかける。
「少し座りましょう。どうぞこちらに――」
その瞬間、艦橋に、乾いた音が短く響いた。
「あっ」
ティアスは、ソウマの手を振り払っていた。
意識したわけではない。
気づけば、そうしていた。
あの言葉は何だったのか?
裏切られた思いだった。
「貴方は、何がしたいのですか?
力をひけらかし、命を弄び、愉しんでいるのですか?」
ティアスは、謝らず、責めた。
その瞳は、涙を湛えながらも、堪えていた。
怯えながらも、立ち向かっていた。
「こんなものは戦いですらない! ただの虐殺です! 恥を知りなさい!」
ティアスの凛然たる言葉は、堂々と響き渡った。
「ええ、その通りです。
だから、私も、そうしたくはなかった。
謝罪します。
ティアスをはじめ、命をかけた帝国の方々を欺き、愚弄するような手段を講じました」
「それは、どういう意味ですか?」
言葉の意味がわからない。
ティアスは、困惑するしかなかった。
「ソラ、監視映像を」
艦橋に、新たな情報窓が展開する。
そこには、勇壮な戦陣を堅持する帝国艦隊の姿が映し出されていた。
「断っておきますが、現在の映像です」
残骸どころか、損傷を受けた艦艇さえない。
ただ、果敢に攻撃を繰り返す艦隊の中にあって、
何もせず静止している艦列があり、それが異様ではあった。
「これは、一体」
ティアスは、宙域図と監視映像を交互に確かめ、そこで、ようやく気づいた。
違和感がない。
それがおかしかったのだ。
ティアスが立っているのは、帝国とは全く異なる技術体系に基づき創造された船の艦橋である。
にも関わらず、艦橋に展開された宙域図には覚えがあった。
それは帝国のものと相違がなかった。
「いえ、そんな、まさか。
守都艦隊の統制ネットワークに侵入したというのですか?」




