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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
四章「継承者」
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14

 ティアスは、ここにいることを心から呪った。

呪うしかなかった。

「抵抗は軽微。一万四七〇九隻の脱落を確認」

 感情のない声が艦橋に虚しく響く。

同時に、艦橋に展開する宙域図から、帝国艦の姿が失われていく。

想像力がわずかでもあれば、それが人々の死を表していることに、否応なく気づかされる。

知らず、ティアスの脚は震えていた。

わななかずにいられよう筈がない。

吐き気をもよおさずいられよう筈がない。

 ティアスの様子に気づき、ソウマは、その肩に手を伸ばした。

横顔を覗き、声をかける。

「少し座りましょう。どうぞこちらに――」

 その瞬間、艦橋に、乾いた音が短く響いた。

「あっ」

 ティアスは、ソウマの手を振り払っていた。

意識したわけではない。

気づけば、そうしていた。

あの言葉は何だったのか?

裏切られた思いだった。

「貴方は、何がしたいのですか?

力をひけらかし、命を弄び、愉しんでいるのですか?」

 ティアスは、謝らず、責めた。

その瞳は、涙を湛えながらも、堪えていた。

怯えながらも、立ち向かっていた。

「こんなものは戦いですらない! ただの虐殺です! 恥を知りなさい!」

 ティアスの凛然たる言葉は、堂々と響き渡った。

「ええ、その通りです。

だから、私も、そうしたくはなかった。

謝罪します。

ティアスをはじめ、命をかけた帝国の方々を欺き、愚弄するような手段を講じました」

「それは、どういう意味ですか?」

 言葉の意味がわからない。

ティアスは、困惑するしかなかった。

「ソラ、監視映像を」

 艦橋に、新たな情報窓が展開する。

そこには、勇壮な戦陣を堅持する帝国艦隊の姿が映し出されていた。

「断っておきますが、現在の映像です」

 残骸どころか、損傷を受けた艦艇さえない。

ただ、果敢に攻撃を繰り返す艦隊の中にあって、

何もせず静止している艦列があり、それが異様ではあった。

「これは、一体」

 ティアスは、宙域図と監視映像を交互に確かめ、そこで、ようやく気づいた。

違和感がない。

それがおかしかったのだ。

ティアスが立っているのは、帝国とは全く異なる技術体系に基づき創造された船の艦橋である。

にも関わらず、艦橋に展開された宙域図には覚えがあった。

それは帝国のものと相違がなかった。

「いえ、そんな、まさか。

守都艦隊の統制ネットワークに侵入したというのですか?」

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