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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
四章「継承者」
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13

 宇宙を覆うように配された戦闘艦艇が一斉に荷電粒子砲を放った。

レンズが光を一点に集めるように、無数の軌跡が一点へと収束する。

夜空に穴が穿たれ、突如、太陽が姿を現すかのような幻想。

それは帝国の威光を示す遥かな輝きだった。

 放たれた威力は絶大。

そこにあったものは、ただ砕け散る。

そうなる筈であった。

命じた者も、命じられた者も、そう信じていた。

疑いはない。

その筈である。だが、同時に祈ってもいた。

 夜明けが、終わる。

光が収束し、宇宙が静寂へと戻る。

そこにあるべきものは、なかった。

残骸は、ない。

そこにあることが証明されている。

そう誇示するかのように、ただ、光を纏う翼が、あった。

「敵艦、健在。速度を維持し、侵攻を続けています!」

「攻撃を継続!」

「効果を認められません。敵艦の周囲で散光しています」

「構わん! 撃ち続けろ!」

 全面に展開する艦隊から断続的に放たれ続ける無数の砲火は、苛烈と表現するに相応しいものであった。

そのうちの一条が惑星の表面を撫でれば、そこにあるものは影さえも残さずに灼かれるだろう。

だが、そんな破壊の糸が束となっても、天烏を縫い止めることは叶わない。

青空を舞う翼の如く、悠々と前進を続けている。

「報告:全艦異常なし。帝国艦の攻撃能力は想定の範囲です」

 ソラが音で告げると、ソウマは、ため息をついた。

火線の中心にあって、天烏の艦橋は平穏を保っていた。

船は、損傷を受けるに及ばず、そも揺れてすらいない。

「中々どうして、凄まじいものですね。

どうにかできたようで、ほっとしています」

 困ったような笑顔を向けられるが、ティアスには返す言葉がない。

何を信じていいのかわからない。

自身が無事であるという不条理を受け止めることができない。

「どうにか、ではありません」

 代わりに、言葉を返したのはソラであった。

そこには、不快感がにじんでいた。

「艦隊戦をするなんて、はじめてのことだ。仕方がないだろう」

「帝国の戦力を想定した上で、この場に臨んでいます。

あえて言うなら、地球にいるよりも安全でしょう」

「そうだな、悪かったよ」

「悪くはありません。しかし、反省はして下さい」

 ソウマは、天を仰ぐしかない。

「間もなく、指定座標に到達。武装を限定解除。制圧行動を開始します」

 ソラの声に、ティアスははっとした。

無惨に引き裂かれた帝国艦艇の姿が、否応なく想像された。

唇が震え、血の気が失せていく。

これは、戦いである。

撃たれているのに、撃ち返すなとは言えない。

だが、それでも、そう願った。

「レーダーに感あり。敵艦が何かを射出。数はニ」

 トラスベイルの艦橋に響いた言葉は、そこにいる者全ての意識を奪った。

「雷撃か?」

「反応消失。追随せず、その場に残置されたようです」

「どういうことだ?」

「敵艦に高エネルギー反応!」

「前陣艦隊に警戒を促せ!」

 シャルケの言葉の数瞬後、天烏はその威を行使した。

艦体の両翼に展開された収斂光砲が輝きを放つ。

だが、それは帝国艦隊が展開する前方に向けてではない。

照準は後方にあった。

威嚇のためではない。 

放たれた一対の光刃は、先に射出され、後方左右に展開していた反射鏡体リフレクターを貫いた。

 瞬間、前陣艦隊の最外周、曲面の縁を形成する戦闘艦艇を閃光が撫ぜた。

一対の光刃は、それぞれを対称に半円を描き、繋がり、虚空に円弧の軌跡を残す。

それは、瞬きをする間にも、失われる光景であった。

だが、そこには確かな、爪痕が残されていた。

「報告!」

「ひ、被害甚大。

艦隊統制ネットワークから、数千以上の艦艇から同期が途絶。

緊急連絡網にも応答なし。

損傷は、それぞれ撃沈以上と想定。

跡形もなく掃滅された模様」

「数千の艦が、一瞬で、だと」

 前陣艦隊の最前面、球状陣の外縁には、特に防御力の高い艦艇が集中して配備されていた。

それらが為す術もなく撃破されたということは、

つまり、攻撃に対抗しうる手段がないということを物語っていた。

「高エネルギー反応! 第二波です!」

 天烏は、手を緩めない。

戦場を俯瞰し、全てを掌握せんと、攻撃を続ける。

「球状陣の中間が一掃されました! 艦隊が前後に分断されます!」

「なんという、なんということだ」

 艦橋に展開する宙域図から、帝国艦の存在を示していた立体が、次々と消失していく。

シャルケも、参謀らも、その光景を、ただ呆然と眺めるしかなかった。

それが悪夢であって欲しいと願いながら。

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