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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
四章「継承者」
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11

 情報は、間もなく、守都艦隊旗艦トラスベイルへともたらされた。

「敵艦に動き。侵攻を開始したものと思われます」

 遂に、戦端が開かれる。

艦橋に詰める士官たちは、あらためて、その現実を強く意識し、表情を険しくする。

「艦隊の集結から間もなくか。

こちらの態勢が整うのを待っていたのであれば、

期待に応えねばならないな」

 一方で、シャルケの様子は、悠然として変わりがない。

司令に任じられた、その時に、帝国のために殉じると心に刻んでいる。

あらためて、覚悟する必要などない。

「敵艦の進路を」

 参謀の言葉に応じて、艦橋の中央に展開する戦域の立体俯瞰図に、予想進路を表す線が幾つか引かれる。

「現在の進行速度に基づき算出したものですが、敵艦の詳細が不明であるため、あくまで暫定的なものです」

「そも我らは、未知の外敵と相対するために在る。

情報を制した上で、戦いに臨むことなどあろう筈もない」

 参謀の捕捉に言葉を返しながら、予想進路を一瞥し、シャルケは、ため息をついた。

それ自体を否定するつもりはない。

脅威を想定し、備えることは、重要である。

だが、それは、相手次第でもあった。

「ここまでしておいて、迂回はない。

最短距離で向かってくる。

これが私の考えだ」

 裏付けは何もない。

だが、シャルケの中で、既に答えは出ていた。

「そう思わせることが狙いである可能性はありませんか?」

 参謀の言葉に、シャルケは、口元を緩める。

仮に、そうであれば、相手は、小細工を弄してくる程度の存在ということになる。

それは帝国にとって、この上なく、都合がよい想定であり、

シャルケとしても、そうであって欲しかった。

「そうであれば、なお、問題にならん」

「万全を期すべきでは、ありませんか?」

「尤もな意見ではある。

だが、貴官らは、忘れてはいまいか?」

「と、申しますと?」

 参謀たちは、首を傾げる。

 シャルケは、深く息を吸い、そして、声を張り上げた。

「傾聴せよ!

一葉の船に、何を臆することがある!

守都艦隊は、偉大なる帝国が擁する最大最強の戦力である。

我らは、その威光を宇宙に掲げるために陣を敷いた。

これは帝国に相対さんとした勇猛への敬意に過ぎない。

我らは、既になすべきをなしている。

他に、何があろうと言うのか?

迎え撃ち、一蹴すれば良いだけのことだ!」

 一〇万を超える大艦隊が一隻の船に怯え、軍議を重ねるなど正気ではない。

狂人の相手をする必要などはない。

対応など議論するまでもない。

言葉は、そう告げていた。

 確かに、滑稽に過ぎる。

参謀たちは、直面する状況と自身の姿を顧み、冷静さを取り戻していく。

「はっ! 失礼を申しました」

「小官も同意であります」

「帝国に栄光あれ!」

「平穏を脅かす者に鉄槌を!」

 鬨の声に湧く艦橋で、シャルケは静かに自嘲する。

まるで知性を欠く愚将の如き言動であった。

だが、そうであったとしても、構わない。

怯えを振り払わなければ、戦いになどならない。

 敵は未知。

警戒して然るべきである。

だが、重要なことは、それだけではない。

勇気を以って臨まなければならない時がある。

シャルケは、そう考えていた。

 露骨な誘導である。

艦橋にいる士官たちが、気づいていないわけではなかった。

だが、指揮官の意図を汲み、そして、己の心を奮い立たせるために、声を上げた。

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