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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
四章「継承者」
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 アイリスとの通信を終えると、ソウマは、深く深くため息をついた。

「全く困ったものだな。

理のある釈明の上で、非を認められると、こちらも強くはでれない。

それを知っている。わがままで、賢明だ。

その上、こちらに宿題まで出してきた」

「愉しそうですね」

 声の色から、ソラはそう察した。

そして、それは事実であった。

「ああ、もちろんだよ。

奇跡的に出会い、なにごともなく終わる。

それでは、あまりに、あっけない。

きっと、後悔していただろう」

「多くの困難が待ち受けるでしょう」

「解っているさ。きっと、お互いに。

その上で、口実をくれたのだ、無碍にすることはない。

ソラはどう考える?」

「どうとは?」

「どうすればいいと考える?」

「お気持ちは、決まっているのはないですか?」

「そうだな。仕向けられた感は否めないが、だからと言って、踊らない理由にはならない」

「確認:クノスの救出計画を策定しますか?」

「いや、そうはしない」

「わかりました」

 ソラは、一言で察し、支度を始める。

幾つかの機能を限定解除し、自己診断を実行する。

眠っていた船が、静かに、目覚め始める。

「ここまでするのであれば、意識的なものだろう。

つまり、その気があるということだ。

それなら、期待以上の結果で応えることにしよう。

探り合いを続けても遠回りするだけだ」

「確認:事後はどのように?」

「帝国の意思を尊重するよ。こちらの意向をはっきりと提案した上で」

「確認:ティアスをどうされますか?」

「アイリスとの話では、第二艦隊に引き渡すことになっていたな。

だが、そうはしない。

帝国との橋渡し役として、手元に置いておく。

相互の情報交換も期待できる」

「わかりました。部屋に軟禁しておきます」

「いや、艦橋に呼んで、隣にいてもらう。

この期に及んで、それは可哀想だろう」

「異論はありませんが」

 ソラは、語尾に異論を匂わせたが、言葉を続けることはなかった。

「懸念すべきことはあるか?」

「特に、ありません。

木星圏に帝国の第二艦隊を残していくことになりますが、

対応可能です」

「決まりだな」

「確認:行動開始時刻を指定してください」

「支度ができ次第」

「できています」

 ソラは、情報窓を展開する。

太陽系から銀河系へと、宙域図は表示範囲を拡大し、帝都と称される帝国の巨大都市船が航行している座標を指し示す。

その情報は、クノスやティアスから得たものではない。

帝国が地球の存在を認識する遥か以前に、既に、ソラは帝国を監視していた。

 宙域図に、地球圏からの予定航路が表示される。

それは、人類には成し得ぬ遥かな旅路である。

「では、国交交渉に赴こうか」

 ソウマは高らかと告げる。

そこに、憂いはない。

ただ、未来への希望に、胸を躍らせていた。

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