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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
三章「侵略者」
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「お久しぶりです。また、こうして言葉を交わすことができて嬉しく思います」

「こちらもだ」

 回線が繋がり、双方の声と姿が共有される。

帝国側の映像を伝える情報窓に姿を現したのは、アイリスであった。

「まずは、謝罪をしたい。

帝国の一部勢力が地球への攻撃を画策し、太陽系に侵入。

工作を行っていた。

さらに、それを諌めるべく派遣した部隊が、所属不明機と遭遇。

戦闘が発生したとのことだが、貴公の手のものであろうな?」

「はい、私です」

「そうか、では、手を擾わせたことを含め、謝罪をしたい」

 アイリスは、瞳を伏せ、反省の意を示す。

「双方に被害もなく、大事には至りませんでした。

帝国が自主的に制裁に動いていたのであれば、それを汲むべきでしょう。

戦闘も偶発的なものです。

あくまで内政の問題ということで、これらを外交交渉の材料にすることはしません」

 甘すぎるのではないか、つけ込むべきではないか、そんなソラの声が聞こえそうであったが、ソウマに迷いはない。

帝国に要求すべきものもない。

「感謝する」

「ただ、先の通信要請に応じて頂けていれば、より円滑な対応ができたと考えます。

その点については、少し残念です」

「そうだな。

だが、帝国と地球は、そ交わりを一時のものとし、互いの道を歩むと決めた間柄だ。

控えるべきであろうと考えたのだ」

「わかりました」

「貴公の寛大さに感謝と尊敬を。

とはいえ、けじめもある。

木星圏に駐留している第二艦隊は、早期に太陽系から離脱させることになった。

地球への攻撃を画策実行した者共については、帝国の法に則り、厳正に処断される」

「わかりました」

 帝国の内政に口を出すべきではない。

そも、地球を更地にしようとした者に同情までする義理はない。

釈然としてはいないが、一方で、異論まではない。

そのため、ソウマは、ただ、応じた。

「それと、言いにくいことだが、伝えておくべきだろうな。

主犯の一人として、地球に派遣された審判官が捕縛されている」

 告げられた言葉は、ソウマの冷静さを、一瞬で打ち砕いた。

正に、不意討ちであった。

「どういうことでしょうか?」

「計画の中枢にあり、様々な情報を流していたとのことだ。証拠も少なくない」

「信じられません。クノスさんは、帝国と地球の友好を望んでいました。話をすることはできませんか?」

 ソウマの言葉に、アイリスは首を振り、それが困難であることを示す。

「どうにかしたいところではあるがな。状況が悪すぎる。

常であれば、このようなことはないのだがな。

帝国の内政は混沌としている」

「すぐに処刑されるようなことは」

「それはない。だが、軍事法廷で裁かれることは免れないだろう」

「わかりました」

 ソウマは、表情を乱すことも、声を荒げることもなく、ただ、静かに頷いた。

三度目となる、同じ言葉を使い、応えた。

一度目は、理解を。

二度目は、諦観を。

それぞれ、示すものであった。

そして、三度目のそれは、肯定を否定するためものであった。

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