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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
三章「侵略者」
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16

「あまり、ティアスをいじめないように」

「意向を汲んで、かなり配慮をしたつもりです」

「答えに窮する質問はあったか?」

「特には、クノスに与えていた以上の情報を開示する必要には、迫られませんでした」

「友好を望む意志に変わりはない。それだけでも帝国に伝わればいいのだが」

「それには、まず、お帰りを願わなければなりません」

「ティアスが、潜入工作員であれば、良かったのだがな」

「教育を受けているのでしょう。一定の素養はあるようです。ただ、手に入れた情報を送信する手段を持ち得ません」

「貸してやりたいところだがな」

「貸してはいます」

「あの携帯端末か」

「情報の送信が可能であることに気づけば、使われるやもしれません」

「どこまで信頼されているか、それ次第だな」

 ティアスは、馬鹿ではない。

盗聴を警戒しない筈がない。

それが枷になる。

何故、渡されたか。

その思惑を察した上で、行動する勇気が必要になってくる。

「それで、話して、どう感じた?」

「帝国では、公開されていない我々の存在について、一定の情報を持っていたことなどから、

ティアスは、帝国の上層にいる人物の私兵に近い立場にあったと推測されます。

一方で、全てを識らされた上で、賛同し行動しているわけではなく、

我々と対話したことで、抱えていた疑念を強くしているようでした」

「そこに付け入りたいものだが」

「帝国に反抗する意思は感じられませんでした」

「わかっているさ。それで、帝国の意向はどう考える?」

「帝国は、或いは、帝国の指導者は、敢えて、緊張した関係を望んでいるように感じられます」

「友好を語りながらも、交流から逃避し、一方で、その威を示さんとしている。何がしたい?」

「前例のない状況に、帝国は混乱し、その統制に支障をきたしている。そう考えれば、わかりやすくはあります」

「なくはないだろう。

我々は、帝国の内政について、多くの情報を持っているわけではない。

皇帝の治世は安定しているとのことだが、それを確かめたわけではない。

事実であっても、地球と我々との外交方針を巡り、大きな亀裂が生じていても、おかしくはない。

だが、そうではない気がしている」

「根拠はありますか?」

「もちろん、ないさ」

「支離滅裂なわけではなく、帝国の行動は一貫している。そう仮定するのであれば」

「何がそうさせる?」

「おそれ」

 恐れ、畏れ、虞。

ソラは、漠然とした概念を言葉にした。

それは、帝国の在り方を示すに、最も適当な言葉であった。

「報告:帝国から通信の応答要請がありました」

「これは、面白いタイミングだな」

 断る理由はない。

ソウマは、静かに頷くと、ソラに、応じるように促した。

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