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「私を、どうするつもりですか?」
ティアスは、機先を制した。
それは回りくどいやり取りを拒絶する意思表示でもあった。
「どうするつもりもありません」
ソウマは察し、素直に要望に応じる。
「すぐにでも、お帰りを願いたいというのが本音です。ただ、帝国が通信に応じてくれずに、こちらとしても困っています」
「機体を返してさえ頂ければ、お手をわずらわせることはありませんが」
「ここにはありません。置いてきました」
「では、どうやって」
「私の機体で運びました。気を失っている間に、乗り換えて頂いたというわけです」
「そうでしたか」
「それに機体があったとしても、お渡しすることはできません。
単騎で長距離を航行できる能力はないようですので、
木星圏の第二艦隊に合流することも難しいでしょう」
「それは――」
的を射た指摘であり、ティアスは言葉を返せなかった。
「いずれにせよ、危険性がある以上は、応じられません。
先の宣誓に反することになります」
強制的に送り届けることもできた。
だが、引き渡し後、ティアスの身の安全を保証できないという問題があった。
言い訳のため、全ての罪を押し付けられ、裁かれることもないとは言い切れない。
そのため、帝国の出方を窺うことが最良であるというのが、ソウマの判断である。
「そんなわけで、帝国と連絡が取れるか、何らかの動きがあるまで、こちらに滞在をして頂こうと考えているわけです」
「わかりました」
ティアスは、選択肢がないことを理解している。
反抗は無意味であり、無意味なことをするほど愚かではない。
「クノスさんのことをご存知でしょうか?」
特に意図があったわけではない。
ただ、なんとなしに放たれた言葉は、刺さっていた。
どう答えるべきか?
ティアスは、言葉を探す。
一瞬、それも僅かな動揺であったが、ソウマは見逃さなかった。
「はい、尊敬すべき方です」
「そうでしたか、最近、お会いには?」
「いえ? クノス様が何か?」
嘘である。
だが、そこに不自然さはない。
ティアスもまた、優秀であった。
既に、状況に対応している。
「別れの挨拶もできずにいたので、どうされているのか、気になっておりまして」
「そうですか」
「クノスさんが、地球に滞在していた折には、多くの言葉を交わしました。
議論の中で、衝突することもありましたが、
結果、互いを信頼しあえる良い関係を築くことができました。
ティアスさんとも、同様に、親交を深めることができると私は考えています」
「クノス様とは、どのようなお話を?」
「そうですね。まずは、互いの文化について、話をしたと記憶しています」
そして、二人は、少しづつ、話をはじめた。




