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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
三章「侵略者」
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 小惑星帯への高速潜入に成功した赫狼は、遭遇を警戒しながら、小惑星帯を進んでいく。

漂流する微小天体を蹴り、また微小天体へと跳ぶ。それを繰返す。

先刻までの強行軍と比較すると、繊細で慎重な歩みである。

無数の微小天体が集中する高密度の宇宙空間は、待ち伏せに最適な環境であり、

万全を期すのであれば、他にやりようがないとも言えた。

ただ、結果論ではあるが、それは全て徒労であった。

「これは、想定外だ」

 吐き出された言葉には、失意がにじんでいた。

ソウマは、正に、肩透かしを受けたという心境であった。

 やがて、赫狼は最終目標地点に定められた座標へと辿り着いた。

帝国の工作部隊の存在が確認された座標である。

確かに、監視映像に捉えられていた小惑星の姿がそこにはあった。

だが、一方で、帝国の工作部隊の姿はなかった。

「こちらの動きを捕捉された可能性は――」

「ありえません」

 言葉を遮られ、ソウマは気圧される。

ソウマの言葉は、ソラの矜持に触れていた。

帝国の防空識別に捉えられるなど、侮辱でしかない。

つまりは、そういうことである。

「訂正:確率は極めて低いと想定します。

帝国の技術階層では、我々の動きを把握することは困難を極める筈です。

我々が停泊する座標さえ特定には至っていないでしょう」

「そうだな、でなければ、大きな問題だ」

 言いながら、ソウマは、赫狼を小惑星へと接近させる。

衛星の如き軌道で小惑星の外周を廻り、周囲の様子を探る。

「報告:戦闘の痕跡があります」

 ソウマの視界に複数の情報窓が展開される。

明らかに人工物と思しき、何らかの残骸が、そこかしこに散乱していた。

「先を越されたということか?」

「確認:第三勢力の介在がありえないことは約束しておきます」

 ソウマではない。

であれば、言うまでもなく、帝国と戦ったのは、帝国である。

「地球に対する破壊工作の動きは、帝国の内部で既に問題となっていた。

そこに我々からの通信要請があり、破壊工作が察知されたのではないかという危惧が出てきた。

穏健派は、攻撃の意志が帝国の総意ではないことを示すため、我々に先んじて、過激派の暴走を諌めた。

そう考えればわかりやすいが」

 ソウマは、苦い表情で、首を傾げる。

それらしい脚本を描いてはみたが、どうにもしっくりしない。

帝国は理性的な文明であるという認識を前提に対応してきた。

だが、こうなると、わからなくもなる。

「事後報告の一つも欲しいところですが」

「報告:帝国は現在も通信の封鎖を続けています」

「或いは――」

 はじめから、罠だった。

ソウマは、そう続けようとした。

だが、ソラの言葉が、それを上書きする。

「警告:高熱源体反応」

 数瞬の間もなく、青い閃光が宇宙を貫いた。

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