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《突入シークエンス完了。機体の損傷は認められず。防空警戒を継続》
「周囲の様子は?」
《目視可能範囲に知的生命体の反応はありません》
大気圏への突入から2時間。クノスの船は降下目標地点への到達を果たしていた。
妨害に合う以前に、存在に気づかれた様子もなかった。
「テクノロジーレベルは、無人偵察機によって、もたらされた情報通りというわけね」
《文明の推定テクノロジーレベルは"第五階層"と推定。衛星の打ち上げが宇宙開発の主目的となっており、星間航行の実現には、なお多くの時間を要するでしょう》
「盛大に迎撃でもしてくれれば、こちらもやりやすかったのだけど」
クノスは座席のロックを外し立ち上がると、船外に繋がるハッチへと向かった。
クノスの指示を受け、ハッチが開放されると、光があふれた。
一歩、また一歩、確かめるように歩みを進め、そして、白い砂浜に足跡が刻まれる。
クノスは地球へと降り立った。
《大気の組成を確認。呼吸可能》
クノスはヘルメットを外す。
「ふぅ」
クノスは、ため息をつくように息を吐くと、両手を広げ、深く息を吸い込む。
銀色の髪が流れるように舞い、陽光を受け、眩しく煌めいた。
「美しい惑星ね」
クノスには、認めざるを得なかった。
青い空と白い雲。碧い海と白い砂浜。そして、緑の島々。
降り注ぐ光。白波の音。潮の香り。
同様の環境をシミュレーターで再現したことはあった。
だが、今なら、わかる。これが現実なのだと。
母星を持つことなく、宇宙に生きるリムスベルト帝国の人類にとって、地球は余りも貴い環境だった。