表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
三章「侵略者」
39/94

 リムスベルト帝国の最高権力者、皇帝アイリスフィアは優雅な時を過ごしていた。

専用艦の展望室で、車椅子の背を傾け、遥かな宇宙を仰ぎ、瞳を瞑る。

思索にふける小さな口元は、柔らかく微笑んでいる。

 地球人類と、そして、地球の管理者を称する存在との邂逅。

帝国の歴史に初めて記される異星文明との接近遭遇。

未来への分水嶺に、自身が皇帝として在るその運命に、アイリスは感謝していた。

同時に、その重責が及ぼす、使命感に苛まれてもいた。

 アイリスは考えを考えに考える。

ひたすらに、深く、慎ましく、廻る。

 権謀術数の機会を得ることは、為政者の冥利である。

だが、これまで、アイリスは、その必要性を自覚することはなかった。

帝国の内政は不健全なまでに安定しているからである。

言論の統制や、思想の弾圧が横行しているわけではない。

ただ帝国の臣民は賢く、そして、褪せていた。

異論が喧伝されることも、異論が封殺されることもなく、ただ個別主義的であった。

感情がないわけではない。

ただ、同族同士の諍いには、強い忌避感があった。

それは、広大な宇宙で旅を続ける中で悟った真理であるのかもしれない。

そんな世相を反映し、帝国は平和であり、また皇帝も平和であった。

 だが、永遠の安寧などありえないことをアイリスは識っている。

現に、地球を発見して以降、帝国は大きく揺らいだ。

初めて直面する外交問題に、帝国は極めて安直な答えを出した。

「なんと、臆病なのだ」

 アイリスは、そう蔑み。

地球が、そこに存在していたことを呪った。

だが、情勢は一転した。

アイリスは、歓喜し、そして、誓った。

時代に選ばれた皇帝として、己の全てを犠牲にしても、帝国の未来のために、為すべきことを為すと。

「陛下、ご報告が」

「話せ」

「地球から通信への応答を求める要請があったとのことです」

 それは、アイリスにとって、望ましいものであった。

帝国の内政に関する些末事ではない時点で、歓迎すべきものであった。

その上、状況が否応なく進展したことを伝えていた。

「伝えるまでもなく、気づいたか。流石だな」

「どうなさいますか?」

「都合はいい。使者を送る手間もない。だが、少し早過ぎた感はある。それに心象が悪いな」

「では」

「ああ、このまま無視せよ」

「よろしいのですか?」

 常に、アイリスの傍らで従事する女官長ナファは、アイリスが最も信頼する存在である。

状況を把握しており、アイリスの意向も察している。

周りに人がいない時のみであるが、助言も許されている。

「余に謝らせたいのか?」

「いえ、そのような、失礼を致しました」

「だが、そうだな。どう考える?」

 アイリスは、テーブルを挟んだ対面に視線をやる。

視線の先には、地球を最も識る者、そして、その管理者と最も多くの言葉を交わした者の姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ