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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
二章「調停者」
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14

「個人的な頼みですか? 私の裁量でどうにかなるものであれば」

「安請け合いはしないか、その在り方は好ましい。いや、そう構えずともよい。大した話ではない」

 アイリスは、促すように、傍らに直立し続けていた、壮年の男性を視線で示した。

「ここに控えるガルギードは帝国最強の武人だ。クノスが師事したこともある。卿と手合わせをすることを望んでおる」

「閣下、お戯れを」

 アイリスの言葉に、異を唱えたのは、ソウマではなく、ガルギードであった。

不動の姿勢のまま、威厳のある声で、堂々と拒んでみせた。

「よいのか? ここで刃を交えねば、機会は永遠に失われるぞ」

「ですが」

「如何な結果になろうとも、互いに遺恨を残すことなどなかろう? 他言もさせぬ」

 同意と確約を求められ、ソウマは苦く笑うしかない。

「余の意向でもある」

 命令であり、考えがあると、暗に示す言葉には、威があった。

ガルギードに次の言葉はない。

「ということだが、応じてくれるか?」

 既に、断れない空気であった。

明確な意図があることを匂わすアイリスの言葉も無視できない。

ソウマは、やや困ったような笑顔をつくり頷くしかなかった。

 間もなく、三人の女官が現れた。

二人の手には、棒状の長得物が携えられていた。

刃がないとは言え、武器には変わりない。

侮られているからか、或いは、認められているが故か、ソウマは少し考え、考えることを諦めた。

 ソウマは、ガルギードに促され、席を立つと、共に、鳥籠の階段を降りた。

女官から武器を受け取ると、二人は左右に別れて対峙した。

 太陽が月に隠されるが如く、庭園に夜が訪れる。

闇は薄く、朧な光が互いの姿を、茫と明らかにしている。

「卿の腕は知っている。先の戦いは見事だった」

「お手柔らかにお願いします」

 ガルギードは、敢えて、告げた。

知った上で、挑んでいると伝えた。

それは武人としての矜持がさせたことである。

「では、参るぞ」

 その言葉を置き去りにし、ガルギードは翔けた。

「なっ!?」

 それは、地球人類の知覚を凌駕する速度だった。

クノスの比ではない。

虚動のない純粋な一撃。

それ故に速い。

薙ぎ払うように放たれた一閃は、ソウマの脇腹を捉えていた。

躱せない。

 ソウマは咄嗟に受けようと構えた。

だが、間に合わない。

ソウマの身体に衝撃が奔る。

互いの得物が交錯する。

だが、そこに与えられた威力は違いすぎた。

ガルギードの一撃は、ソウマの守りをたやすく払い崩し、その左腕を無惨に容赦なく破壊した。

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