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会談は、懇親会か、或いは、お茶会という表現が適切であろう、睦まじく慎まやかな空気ではじまった。
交わされる言葉は、互いの興味の対象についての質問が殆どであり、
譲歩を要求したり、権利を主張したりといった、互いを牽制し、削り合うような言葉の応酬はなかった。
互いに友好を示しながらの会談は望ましいものであったが、一方で、遅々として話が進んでいないことも事実である。
少なくとも、交渉の段には至っていない。
だが、ソウマはそれをよしとした。
話を急ぐ理由はなく、帝国が親睦を深めることに終始するのであれば、それに同調する意向であった。
仮に、進展がなくとも、次に繋げればいい。
会談を繰り返す中で、互いを理解し、少しづつ、交渉を進め、和解へと至る。
どのような思惑があるにせよ、慎重に話を進めることは、悪いことではない。
だが、結論から言えば、帝国に、その気はなかった。
ソウマの中で、次の会談の約束を取り付けることが、唯一の目標となりかけていた時、アイリスは告げた。
「さて、そろそろ、本題に入ろう」
不意打ちではあったが、ソウマは動じてはいない。
が、多少動じるような所作はにじませておく、帝国の意図を尊重しておくべきだと考えた。
全く反応がないでは、アイリスもつまらないだろう。
「本題、ですか?」
「ああ、そうだ。異論あるか?」
アイリスは悠然と問いかける。
どこか楽しげで、ソウマとしても、ほっとする。
「いえ、とんでもありません」
「伝えるべきことは伝えておかねばならん。それだけのことよ」
そして、アイリスは、告げる。
「帝国は、太陽系を去ることに決めた」
それは、確信であった。
「木星外縁にある第二艦隊は、この分艦隊と合流後に太陽系外へと向かう。
第二艦隊が帰還した後、太陽系に近づきつつあった帝都も進路を変える。
帝国は地球人類と交流はしない。
伝えるべきは以上だ」
そも、帝国には交渉する気などなかった。
故に、要求も主張もない。
結論は最初から決まっていた。
伝えるべきことは、唯一であり、この会談はそれだけのものだった。
「それは誠に、残念です」
地球人類と帝国が、共に未来を歩んでいくことは、困難な道のりであることは確かだった。
日々こなすべき業務も現在の比ではなくなるだろう。
危険も大きい。
だが、それでも、やるべきであろうと、ソウマは考えていた。
それ故に、アイリスの言葉は、ソウマに少なからず衝撃を与えた。
「異論あるか?」
「それが帝国の意志であれば、尊重をせざるを得ません」
異論はあったが、意志を押し付けるつもりはない。
ただ、ソウマは、素直に応じながらも、寂しさを演じてみせた。
「では、最後に、個人的な頼みがあるのだが、聞いてくれるか?」
アイリスの表情は視えない。
だが、ベールの奥には、明らかに愉悦がにじんでいた。




