表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
二章「調停者」
32/94

13

 会談は、懇親会か、或いは、お茶会という表現が適切であろう、睦まじく慎まやかな空気ではじまった。

交わされる言葉は、互いの興味の対象についての質問が殆どであり、

譲歩を要求したり、権利を主張したりといった、互いを牽制し、削り合うような言葉の応酬はなかった。

 互いに友好を示しながらの会談は望ましいものであったが、一方で、遅々として話が進んでいないことも事実である。

少なくとも、交渉の段には至っていない。

だが、ソウマはそれをよしとした。

話を急ぐ理由はなく、帝国が親睦を深めることに終始するのであれば、それに同調する意向であった。

仮に、進展がなくとも、次に繋げればいい。

会談を繰り返す中で、互いを理解し、少しづつ、交渉を進め、和解へと至る。

どのような思惑があるにせよ、慎重に話を進めることは、悪いことではない。

 だが、結論から言えば、帝国に、その気はなかった。

ソウマの中で、次の会談の約束を取り付けることが、唯一の目標となりかけていた時、アイリスは告げた。

「さて、そろそろ、本題に入ろう」

 不意打ちではあったが、ソウマは動じてはいない。

が、多少動じるような所作はにじませておく、帝国の意図を尊重しておくべきだと考えた。

全く反応がないでは、アイリスもつまらないだろう。

「本題、ですか?」

「ああ、そうだ。異論あるか?」

 アイリスは悠然と問いかける。

どこか楽しげで、ソウマとしても、ほっとする。

「いえ、とんでもありません」

「伝えるべきことは伝えておかねばならん。それだけのことよ」

 そして、アイリスは、告げる。

「帝国は、太陽系を去ることに決めた」

 それは、確信であった。

「木星外縁にある第二艦隊は、この分艦隊と合流後に太陽系外へと向かう。

第二艦隊が帰還した後、太陽系に近づきつつあった帝都も進路を変える。

帝国は地球人類と交流はしない。

伝えるべきは以上だ」

 そも、帝国には交渉する気などなかった。

故に、要求も主張もない。

結論は最初から決まっていた。

伝えるべきことは、唯一であり、この会談はそれだけのものだった。

「それは誠に、残念です」

 地球人類と帝国が、共に未来を歩んでいくことは、困難な道のりであることは確かだった。

日々こなすべき業務も現在の比ではなくなるだろう。

危険も大きい。

だが、それでも、やるべきであろうと、ソウマは考えていた。

それ故に、アイリスの言葉は、ソウマに少なからず衝撃を与えた。

「異論あるか?」

「それが帝国の意志であれば、尊重をせざるを得ません」

 異論はあったが、意志を押し付けるつもりはない。

ただ、ソウマは、素直に応じながらも、寂しさを演じてみせた。

「では、最後に、個人的な頼みがあるのだが、聞いてくれるか?」

 アイリスの表情は視えない。

だが、ベールの奥には、明らかに愉悦がにじんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ