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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
一章「来訪者」
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《時間です》

 支援AIアビオニクスの声をキーワードに凍結されていた意識が覚醒する。

 クノスが瞳をみひらくと眼前には、青い惑星があった。

その眩さに、その美しさに、視界がわずかににじむ。

数瞬、全てを忘れた。

深く息を吸い――

「突入シークエンスに移行する」

 クノスは言い聞かせるように告げた。

 軌道計算は既に行われている。

予定の軌道にあるか、ヘルメットのHUDに表示される情報を確認する。

小型の船が大気圏を経て、目標となる降下地点へと至るには、緻密な計算と精密な操船が要求される。

突入後の修正も可能ではある。だが自然物を装うには、重力に身を委ねる必要があった。

「ずれている? どういうことだ?」

 深く静かに。 

そんな思惑とは裏腹に、既に予定は破綻していた。

《未確認構造体の接近を感知。軌道の修正を実行しました》

 ログを呼び出し、仮眠中に実行された例外シークエンスを確認する。

衛星軌道上に人工的な動きをする"何か"の影があった。

「理解したわ」

 支援AIは妥当な判断を下した。異論はない。

そも、そのように組んだのは誰でもないクノス自身である。

「第一降下目標地点への到達は可能か?」

《可能ですが、適切ではないと判断。新たな降下目標地点を選定しました》

 クノスは支援AIと対話しながら、状況の把握と計画の修正を行っていく。

「幸先が良いことだ」

 重大な任務だ。万全の態勢で臨んでいる。

この状況も折り込み済みではあった。

だが、予定通りに行くに越したことはない。

「新しい降下目標地点はここか」

 地球と呼称される惑星を模した球体図。

その一点、明滅する赤いマーカーをクノスは凝視する。

太平洋の北西端に位置する離島。

そこには人類最大規模の都市があった。

「なすべきことは、変わらない」

 クノスは告げ、己に課せられた使命に、その重さに、静かに奥歯を噛んだ。

 やがて、クノスの乗る小型潜航艇は、突入をはじめる。

《機体表面温度上昇。冷却システム正常稼働》

 銀色の船体が赤く熱を帯びる。招かれざる者の侵入に抗う地球の障壁を切り裂くように船は行く。

「そう拒むなよ。私は最期の希望なのだから」

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