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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
二章「調停者」
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 会談、或いは、昼食会を終え、クノスと別れたソウマは、自室に戻り、対応中の事案について進捗を確認していた。

帝国との接近遭遇は、優先すべき事柄ではあるが、他にもやるべきことは数多あった。

それは義務ではない。

ソウマに命じる者はいない。

だからこそ、手が抜けなかった。

「ソラはどう考える?」

 ソウマは、暗闇の空間に投影された青白い情報ウインドウ郡から、もたらされる情報を処理しながら、宛てどなくつぶやいた。

「回答できません。何についての質問でしょうか?」

「ああ、すまない。帝国への対応について、かな?」

「妥当であったとしか」

「質問を変えよう。帝国はどう出るかな?」

「回答:文明の接触は、秩序の再構築へと繋がる事象であり、双方に変化が生じることが避けられません。

帝国が変化を求めるのであれば、我々との交流を選択すると推測します。

帝国が変化を求めず、文明の保存をこそ尊重するのであれば、太陽系からの離脱を選択すると推測します」

「ソラはどちらを推しますか?」

「後者です。クノスから齎された情報を評価すると、帝国には太陽系に留まるつもりは、はじめからなかったと考えるのが自然です。

我々を脅威と認識した現在にあっては、接近それ自体を忌避するかもしれません」

「そうであれば、こちらとしても面倒がないが」

 ソウマは、帝国の選択に意見するつもりはない。

だが寂しさを感じないわけではなかった。

「命題は、帝国が何を求めるか、その一点か」

「或いは、何故、帝国が宇宙を漂泊する存在となったのか」

「帝国の過去が、我々の未来を左右するということか」

 それは、クノスに問うべきことであったが、ソウマはあえて触れなかった。

互いを識るべき時期がある。

ソウマは、そう考え、信頼関係の醸成こそを優先した。

知らないからこそできる話もあるということである。

剥き出しの情報は正に諸刃の剣に他ならない。

「いざとなれば、やるしかないが」

 ソウマは、最も面倒な展開を予期し、懊悩する。

救いがたい自身を蔑むしかない。

やるべきことが積み上がっていく。

それは義務ではない。

だが、それは、やりたいことだった。

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