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「帝国の次の動きは、概ね予想できる」
「それはありがたいですね。聞きましょう」
「帝国には、概して四司代と称される派閥が存在する。
名が示す通り、四つの大派閥だ。
地球文明への対応について、四司代の考えは一致していた。
議論を深めるまでもないことだったからだ。
だが、それは過去の話になる」
「うまく執り成してもらいたいところですが」
「叶わんだろうな。私の報告で状況は一変するだろう。四司代の意見は、まず間違いなく割れる」
「さもありなんといったところですか」
「意見の対立が存在すること自体は歓迎すべきことだ。
異なる意見が共生できない国家に未来などない。
両翼による相互監視が統治の基本であろう。
でなければ、間違えた時に取り返しがつかない」
「胸に響きますね」
「だが、結果として生じる状況は、歓迎できるものではないだろう。
地球人類にとっては迷惑、或いは、災厄でしかない」
「矛先は、こちらに向かうということですか」
ソウマは、ため息をつくようにつぶやく。
何が起こるか半ば察しはじめていた
「思惑は違えど、四司代が第一に考えることは、帝国の未来だ。
地球では、民を無視した権力闘争が繰り返されているが、帝国においては、ありえない話だ。
故に、内部抗争がはじまることはない」
「なるほど、わからない話ではありません」
言いたいことがないわけではない。
だが、話の腰を折っても仕方がないので、ソウマは、とりあえず、相槌を打った。
「結論から言えば、地球を舞台に代理戦争がはじまる」
「戦争とは、中々に物騒な言葉ですね」
「戦いは避けられない。四司代の何れかは刺客を送り込んでくるだろう」
「クノスを退けた実績だけでは、評価が足りませんか」
「優れていると信じるのは易しく、劣っていることを認めるのは難しいということだ」
「結論から言えば、何れかの尖兵として戦うのは、私なのでしょうね」
「いや、不正解だな」
やれやれと告げたソウマに、クノスは凛と言葉を返した。
「迎え撃つのは、ソウマと私だ」




