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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
一章「来訪者」
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16

 クノスが駆る巨人、それは帝国において、概して"機動装甲"と呼称される。

宇宙空間での行動を補助するための人型機械であり、装備を変更することで様々な用途に幅広く対応する。

クノスに与えられた"天狼弓"は、戦闘に特化した主力機種を改修した特別機であり、

軌道上からの強行突入を備えると共に、重力下での戦闘を想定した調整が施されている。

つまり、帝国の最新鋭技術によって製造された、地球上における最強最良の兵装であった。

 クノスが機動装甲の騎手として、一流であることは言うまでもない。

惑星の重力下での戦闘経験は豊富とは言えないが、その動きは鋭く、我が身の如く巨大な四肢を操っている。

故に、一騎打ちにおいて、天狼弓とクノスが膝を折ることは、様々な意味で帝国の敗北を証明する。

 斧槍の穂先から跳んだソウマは、試しにと脇の関節を狙い、打ち込む。

金属音が響き、火花が散る。

衝撃は巨体を揺さぶる。

だが、それだけだ。破壊には至らない。

「硬いな。急所は?」

「回答:操縦席です」

 ソラは、端的に答えた。

「なら、削るしかないか」

「武装の変更を提案します」

 クノスの斧槍で戦闘を継続するのは、効率的ではない。

ソラは、そう伝えていた。

「この斧槍で倒してみせろと、そういうことかもしれないだろう?」

 クノスは、ソウマを慮って、斧槍を渡した。

それ以上の意図はない。だが、結果として、縛りとして機能していた。

「それに――」

 薙ぎ払うように打ち下ろされる質量。

ソウマは、懐に踏み込むようにして躱し、勢いのまま右腕を振り抜く。

狙いは、斧槍を握り支える一点。

「その必要もない」

 鋼鉄の指が舞った。

墜落し、暴れ、現代芸術のように鎮座した。

 指先の機構が複雑化し脆くなるのは、人型であるが故の宿命である。

さらに、ソウマは、攻撃の瞬間に合わせた。

対峙する相手の質量と力を利用するためである。

正に絶技。

余りに精密で、余りに自然で、余りにも優雅だった。

 小指は刎ねられ、薬指はひしゃげた。

生身であれば、激痛にうめき、地に崩れていただろう。

だが、相手は機械である。終わりではない。

 クノスに動揺がなかったとは言えない。

だが、戦意を挫く程ではなかった。

 ソウマは、誇ることなく、傲ることなく。

既に、動いていた。跳んでいた。

 クノスは、頭部に迫る、ソウマの姿を捉え、咄嗟に反応してしまう。

あと数秒の時間があれば、状況を整理し、立て直せていた。

この判断はなかった。

 振り払おうと、放たれる腕。

それは速いだけの条件反射と称してもいい無意識の動作だった。

それ故に、自然で読みやすい。

ソウマは、造作もなく合わせて、手首の関節に打ち込む。

指先とは強度が違う。

破壊には至らない。

だが、軋み、歪めば、可動に支障をきたす。

左腕は半ば死んでいた。

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