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「ここからは帝国の審判者として御相手する。
地球の盾となり、抗ってみせよ」
機械の巨人に乗り込むと、クノスは高らかに宣戦を布告した。
人の数倍はあろうかという巨躯から、放たれる言葉はそれだけで威力があった。
だが、ソウマに動揺はない。
託された斧槍を携え、巨人の青い瞳を見据える姿は、堂々たるものだった。
「手合わせの前に一つお伝えしておきましょう」
「蛇足ではないか?」
「仮に私がここで倒れたとして、次の者が現れることはありません。
私が倒れた時点で、地球は帝国のものとなると考えてよいでしょう」
「こちらには都合のいい話だが――」
クノスに迷いはない。
だが、惑いはする。
言葉を無視して打ち込まなかったのは、指針となる情報は多いに越したことはないという判断からだ。
「疑って然るべきでしょう。そもそも、貴方は全てを疑っていた」
「言うまでもない。だからこそ、ここにいる」
「地球を管理する第二の文明の存在。それを証明するものは何もない。全て私の妄言かもしれません」
「そうだな。だが、一方で、否定しがたい事象がある。貴公は私の存在に気づき、名を呼んだ。そして、今、私を圧倒してみせた」
「地球人類にもできるかもしれません」
「面白いことを言う」
クノスの返答にソウマは苦く笑う。
「私は、貴公らの存在を確信してはいない。だが、貴公を無視できるほど愚かでもない。
だから、言葉を交わしている。
問おう。この惑星の行く末を、貴公だけで決められるというのか?」
「肯定します。そも現在の地球管理体制は、我々の意向ではなく、私の意向によるものです。
我々は地球に興味がないのでしょう。
だからこそ、地球人であった私に全権が移譲されたのです。
私が機能を停止すれば、我々は地球の管理を放棄するでしょう」
「解っているのか? それらは話すべきではない情報ではないのか?」
「何れにせよ、私が倒れれば終わりですから、問題にはなりません。それに――」
「それに?」
「私が倒れることはありません」
「言ってくれる」
「貴方の力を得るには、全てをお話する必要があると考えました」
「手の内で踊らされていたということか――」
「いえ、互いの思惑が一致したが故の現在です。貴方が賢明でなければ、こうはなっていない」
「私は帝国の未来を案じただけだ」
帝国の選択は正しかった。だが、その結果、正しい未来が訪れるとは限らない。
だからこそ、クノスは、異なる可能性を模索した。
「私は、クノスの期待に応えることを約束します」
名を呼ばれ、クノスは、小さく口元を緩めた。
それが微笑みであったかどうかは、クノスにもわからない。
「ならば――」
巨人がゆらりと揺れ、姿勢を変える。
その威を示すように、はじまりを告げるように、構えた。
「証明してみせろ!」
クノスは、言葉と共に初撃を放った。
その叫びは祈りにも似ていた。




