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夜明けのソラの契承者 悠久漂流帝国  作者: やたか なつき
一章「来訪者」
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13

「貴公の実力は判った。今の私では逆立ちしても敵わないだろう」

 クノスは強い。

だからこそ、わかる。

実力の差は歴然であると、あらゆる感覚が告げていた。

敗北の記憶が想起される。

負の感情はない。

畏敬と尊崇、そして、嫉妬。

かつて、帝国最強を謳われる者と相対し、膝をついた時の体験に似ていた。

「では、これで終わりでしょうか?」

「いや、これからだ」

 クノスは敗北を認めていた。

だが、それは武芸を嗜むものとして、個の敗北を認めるものでしかない。

「今の私では逆立ちしても敵わない。

私はそう言った。確信がある。

貴公は達人と呼んで然るべき使い手なのだろう。

だが、それだけでは足りていない」

「ふむ?」

「私が二人いたら、どうだろうか?

いや、貴公なら勝つだろうな。

では、三人なら、十人なら、或いは、百人なら、どうだ? 勝てるか?」

「ええ、勝ってみせましょう」

「その意気やよし、では証明してもらおう」

「なるほど、何をしたいのか、何をして欲しいのか、解ってきました」

 未知の文明の邂逅は武力の衝突から始まる。

互いの力を識ることで、幾つかの選択肢が生まれ未来が分岐する。

共存か、支配か、或いは、広大な宇宙を舞台とするなら逃避という選択もあるだろう。

 帝国は既に裁決していた。

クノスが地球に降りたのは、選択のためではない。

最終的な確認に過ぎず、それは手続き以上の意味はなかった。

地球人類は、帝国にとって、侮るまでもない相手であった。

だが、クノスは、そうではなかった。

「私は貴公の武力を識るために推参した。

それは間違いではなかった。嬉しく思う。

甚だ実力不足で心苦しいが、どうか最後までお付き合いを頂きたい」

 クノスは告げると、手にしていた斧槍を軽く放り投げる。

弧を描き、ソウマの足元に突き刺さった。

「餞別だ。使え」

「――」

「警告:間もなく、到達します」

 ソウマの声を遮るように、ソラが警告を伝える。

瞬間、風圧が木々を、いや、庭園全体を揺らした。

だが、衝撃も破壊もない。

 空から、いや、宇宙から、それは投射され、地表へと至り、そして、静止した。

音もなく、そこにあった。

舞い降りていた。

 灰色の外装、鋭角な輪郭。青い瞳。

巨大な人型がそこにはいた。

「強化外骨格と呼ぶには、大きすぎるか、これは――」

 ソウマは告げ、口元を醜く歪めた。

「都合がいい」

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