名前と能力
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目を開けると、見知らぬ女性が俺を覗き込んでいた。
「あーー、うーーー(えっ、なんで俺見られてんの?)」
女性は俺と目が合うと笑顔になり、誰かを呼んだ。
「ーー・ーーーー・ー・ーーー!」
うん。何言ってるのかわからない。英語が大嫌いだった俺に聞き取れと言うのは無理難題だろう。
「ーー・ーー!」
「ーー・・ーー!ーー!」
少しすると部屋の扉が開き、男と小さな子供が入ってきた。二人とも俺を見て笑顔になる。
「あーーー、うーあーー(俺を見て笑顔になられるとは。なんともこそばゆい感じがする)」
あれ?さっきから赤ん坊の声が聞こえるけど何処かにいるのかな?俺は辺りを見渡す。すると自分のすぐ側に小さな手が見えた。
「あーー、うあー(えっ、これって)」
俺は手をにぎにぎと動かす。すると、その小さな手は俺が思い描く通りに動いた。俺は、それを見て理解した。俺、転生したんだなって。
「あーー(よかった〜、これで男なら完璧だな)」
そんなことを考えていると、お腹が空いていることに気づいた。そう自覚すると、自分の意思とは関係なしに俺は泣き出した。
「びえええええええん」
「ーー・ーーー・ーーー」
女性は、俺に近づいて俺を抱っこしてあやし始める。俺が泣きやまないと見ると、女性は自分の胸をさらして俺に向けてきた。
(えっと、母乳を吸えということかな?俺は、今赤ん坊だけど本当は一八歳な訳で・・・、うん凄く恥ずかしい)
女性はいや、多分母親は俺に無理やり胸を咥えさせた。
(えーい、ままよ)
俺は、覚悟を決めて母乳を吸う。
「んくっ、んくんくんく」
俺はぐびぐびと飲む。
「ーーぷはっ、・・・・・けぷ」
俺が胸から口を離すと、母親は俺の背中を軽く叩いた。俺はお腹が膨れて眠くなる。すると、母親が体を少し揺らしながら歌みたいなものを歌う。俺はその歌を聴きながら眠りについた。
ー・ー・ー
俺が転生してから半年が過ぎ、俺もようやく言葉が分かり始めてきた。
俺の母親の名前がクレアで父親がマーク。そして、俺の姉がメリアルで俺の名前がユーキアスだ。けれど、皆は愛称を使ってユキと言っている。
ちなみに、俺は男だった。オムツを替えられてる時にアレが見えたから間違いがないと思う。俺はその時、男と言うことが分かり、「あうーーー」と言ってしまいクレアに笑われてしまった。
さらに半年が過ぎ俺が一歳になろうかと言う頃、クレアのお腹が膨らんでいるのが見られた。それから三カ月後、俺に妹が出来た。名前をカレンと言う。
俺は生前、一人っ子だったので姉がいるだけでも嬉しかったが妹もできて嬉しかった。
カレンが出来たことにより、母乳は二人同時に飲むことになり少し恥ずかしかった。
ー・ー・ー
俺がハイハイや掴まり立ちが出来るようになった頃、家族全員で遊びに出かけた。出かけると言っても、近くの草原で昼飯を食べると言うだけだったけどね。
マークはメリアルと遊んでいて、クレアはカレンに付きっ切りだったので俺は一人で少し離れた草原まで行き、今まで試さなかったJACK-IN-THE-BOXを試すことにした。
どうやって、使おうか悩んでいたところ頭に使用方法が浮かんできた。俺はそれにならいラック・トラストを使用した。まず、ラック・トラストと念じる。すると小さな箱が目の前に現れた。俺はそれに手を置いて、魔力を流そうとする。けれど、魔力が流れているのか流れてないのかがわからない。けれど、諦めずに魔力を流そうとすると自分の中から何かが失くなる感覚が体をはしった。多分これが、魔力を使用したと言うことなんだろう。そして俺は条件を満たして、ラック・トラストを使用した。
すると、小さな箱から光が漏れだした。
(あっ、コレやばい気がする)
俺がそう思ったのもつかの間、箱が開くと爆発した。爆発と言っても小さなものだったけたど、俺からしたら凄まじかったのだ。
ーーボン
「あうあうあーーーーーー(アバババババ)」
俺は爆風により、吹き飛ばされ草原をゴロゴロと転がる。勢いが弱くなりなんとか転がるのを止めると、さっきまで俺がいた所を見ると、小さな箱があった辺りを中心に地面まで焼け焦げていた。
(あぶねーー、よく生きてたな俺)
そんなことを思っていると、両親達の声が聞こえる。
「ユーキアス、大丈夫かーー、ユーキアス!」
「ユキーー、ユキーーー!どこーー!」
「ユキぢゃぁぁぁん!どこーーーー!」
「びえええええええ!」
マークは必死に俺を探している。クレアは取り乱しながら、メリアルは泣きながら、カレンも泣いている。
俺はその姿を見ながら申し訳なくなる。多分、気がつくと俺がいない事に気付いた時に爆発音が聞こえたから俺が巻き込まれたかもと考えてるんじゃないんだろうか?まぁ、爆発は俺の所為なんだけどね。
「あーーーうーーあーーー」
俺は声を出して返事に答えた。すると両親達は俺の声に気付いて俺に向かってくる。
「ユーキアス、よかった、本当によかった」
「ユキ、ユキ、よかった。本当に良かったよう、ユキ」
「ユキぢゃぁぁぁぁん!」
「びえええええええ!」
皆は俺に抱きついてくる。俺が生きてた事を喜びながら。
俺は、本当に申し訳ない気持ちで一杯だった。自分のことでこんなに真剣になって貰えて嬉しかった。けれど、この爆発は自分で起こしたものだから本当に申し訳なかった。
それから、皆が落ち着いてから家に帰った。