俺、転生
不定期ですがお願いします。
「いけーー!いけーー、八番そのままさせーーー!」
八番の馬は他の馬達より一つ抜きん出ている。
「もう少し、もう少しだーーー!いけーーー!」
八番は、後少しと言う所で転倒。後ろに続いていた馬達も倒れたり、バランスを崩す。だいぶ遅れていた、二番の馬が前の馬達を抜かしてゴールに着く。その後に六、五番が続いた。
「ザッッケンナーーーーーーーー!俺はあいつに百万も賭けてたんだーーーー!金返せ、ボゲーー!」
男は券を放り投げ、文句を言う。
「はぁ、しゃねぇわな。帰るか・・・、はぁ、何で百万も賭けたんだ俺?」
男は、哀愁を漂わせながら競馬場を去る。
「あーーー、ムシャクシャする。本当、何で百万も賭けたんだよ俺」
男はさっきから同じ事を繰り返し言っている。それも、しょうがないだろう。百万も失ったのだ、まぁ、賭ける方が悪いんだけどね。男は足下をろくに見ないで歩いていく。
ーーバタン
男は空き缶を踏んづけて、転んだ。
「いててて、誰だよこんなとこに空き缶を捨てたのは。全く、他の人の事も考えろよなボケが!」
男は自分が言ったことも忘れて、空き缶を蹴り飛ばす。競馬で負けたこと、空き缶を踏んづけて転んだことに対する八つ当たりだ。
ーーしゅるるるるるるる
空き缶は、あり得ないスピードで飛んでいく。
「はぁ、これで気も落ち着いたか?・・・・あっ、やべ」
男は顔を見上げると、蹴り飛ばした空き缶が一人の通行人に当たろうとしていた。
「さあ、帰ってラノベでも読もうかな〜」
俺は、親に言われた買い物を済ませ家に帰り始めた時、後頭部に強い衝撃がはしった。
ーーゴシャ
「かふっ・・・・」
俺はその衝撃で気を失った。
ー・ー・ー
「・・・ここどこだ?」
「よぉ!目がさめたか、まぁ、目がさめたって言うのも違うけどな」
目をさますと、見知らぬオッさんがいた。見た感じアレだ、チンピラみたいな格好をしてる。うん、チンピラだ。勝手なイメージだが、朝からパチンコや競馬とかしてそうな気がする。
「誰がチンピラだ、誰が。ったく、けどまぁイメージの方は大体合ってるよ、クソ」
チンピラは、勝手に話し続ける。
「だから、チンピラじゃねえって言ってんだろうが!」
そんなこと言われても、チンピラにしか見えない。髪型や顔もそうだが、服装が何ともチンピラ感を出してる。やっぱ、チンピラじゃん。
「喧しいわ!顔は生まれつきだし、服装はこの格好が好きなんだよ!つーか、いい加減チンピラ、チンピラ言うなや!俺はこれでも神様なんだぞ!」
はいはい、神様なんですねー。すごいねー。全く、中二も発症してるとか可哀想だなチンピラ。どうか、幸せに生きてね、チンピラ神(笑)。まぁ、中二だし幸せだよねチンピラ神(笑)。
「チンピラ神(笑)ってなんだ、コラッ!つーか、いい加減心が読まれてることに驚けや、コラ!」
おお、やっぱり心が読まれてたのか。どうも、おかしいと思ってたんだよね。まぁ、喋らなくていいから楽でいいけど。
「いや・・・もっと驚けや」
えーー、文句が多いチンピラ(笑)だな。しょうがないか、エエーー、ナンダッテーー。はい、これでいい?
「お前、舐めすぎだろ。はぁ、まぁいい。お前、自分の今の状況分かってる?」
えっ、まさか死んじゃってる感じですか?いや、違うよね。夢オチでした〜って感じだよね。
「悪りぃが、お前は死んでる」
はっ?イヤイヤ、今こうしてチンピラ神と話してるじゃん。
「おお、やっと(笑)が取れた。」
いや、話聞けや!コラ!
「ああ、悪い悪い。お前は、マジで死んでる」
証拠、証拠みせろやー!
「ああ、じゃあ見せるわ。ほら」
チンピラ神は、目を閉じて一切動かない俺の姿を見せる。は?えっ、なにこれ。俺?
「どうだ?わかったか。お前は、死んでんだよ」
えっ、嘘だろ。指定校で大学が決まって、これからきゃっきゃ、うふふな大学ライフを送るはずだったのに・・・。
「いや、お前じゃ無理だろ」
喧しい!夢を見るのは自由じゃないか!悪いか!彼女いない歴=年齢の俺が夢を見たらいけないのか!
「おお、悪りぃな。気にすんな、どうせ死んだんだから意味ねぇって」
煩い!それより、何が理由で俺は死んだんだよ!
「あぁ、死因な。俺が競馬で百万すったから、八つ当たりで空き缶を蹴り飛ばしたらお前に当たった。そしたら、お前に当たってお前御陀仏。オッケー?」
オッケー、じゃねぇわボケ!死ね、マジで死ね!この糞チンピラが!ふざけんな、まだ親にも恩を返してないのに。結婚とかは、無理でも金を稼いで少しでも恩を返そうと思ってたのに、思ってたのに・・・。
「いや、マジですまん。本当にマジですまん」
すまんで済んだら警察は、いらないんだよボケ!
「いや、悪かったって。詫びにもう一度生かしてやるからよ」
マジでか!ありがとうございます神様。私は貴方に会えたことを誇りに思います。
「変わり身はやいな。けど、地球じゃねぇけどな」
はっ?フザケンナヨ、この糞神が!さっさと、生き返らせろや!
「はぁ、悪りぃがそれだけは無理だ。地球の歯車を狂わせかねないからな。けど代わりに、異世界に転生させてやるから勘弁してくれや」
えっ、異世界。異世界と言いましたか貴方は?
「あぁ、異世界に転生させてやるよ。それに、一つ能力をくれてやるからそれで勘弁してくれ。俺も悪いと思ってんだ、だからここまでしてるんだぞ?」
異世界。あぁ、なんて甘美な響き。今まで小説を読むたびに行ってみたいと思ってた異世界。けれど、ある訳無い、行ける訳無いと諦めてた異世界。
「どうだ?」
あの、神様!その異世界には魔物や魔法などがあるんでしょうか?
「あ、あぁ、あるけどどうした?」
キタコレ!両親には、申し訳ないけど俺異世界に転生します☆許してね、父ちゃん・母ちゃん
「で、どうすんだ?転生するのかしないのか?」
します!異世界に転生します!
「了解。なら、はやく貰う能力を決めやがれ」
しゃぁ!チートだ、チート能力を貰って無双だーー!
「はぁ、つまんねーなお前も」
は?今なんと
「つまんねぇって言ったんだよ」
なんでたよ!異世界で無双するのは、一種の夢じゃないか!
「いや、だからさそんな楽な人生でいいのか?人生ってのは、楽な時があり苦な時があったりして自分の力で生きていくから楽しいんだろ?そんな能力で無双して本当にいいのか?もっと、自分の力だけで生きたくないのか?」
俺は、その言葉に心が震えた。そうだ、確かにそうだ。一八年間、生きてきて嫌なことが沢山あった。けど、その全てがいらないのかと言われると違うと答えるだろう。楽なだけな人生でいいのか?いや、せっかく転生までするんだ。自分の力で生きたいと俺は思ってしまった。死ぬ時に、やりきったと思って死にたいと思ってしまった。
「そうだろ?人生ってのはな俺から言わせればギャンブルと一緒なんだよ。運がいい時もありゃ悪い時もある。試合で勝てる時も負ける時もある。そんな中、人はその一瞬一瞬を大事に行動をしている。ギャンブルと違って金じゃなく、命を使って自分の人生を賭けて生きてんだよ」
俺は、チンピラ神の言葉に感銘を受けた。そうだな、なら俺の能力はこれがいいかな。その時の運に任せると言う能力で。
「マジでか、ハハハハいいな。お前、すごく良いぜ。わかった、じゃあお前にこの能力を与えるぜ」
チンピラ神は、俺に向けて手を向ける。
『お前に与える能力は、JACK-IN-THE-BOX。やり方は、一定の魔力を貯めてから使用することが可能だ。だけど、この技は何の能力が出るかわからない。その時何が出るかは神のみぞ知るってやつだな』
わかった。
「じゃあ、異世界に転生して人生を楽しく生きろよ!」
チンピラ神は、そう言って俺を転生させる。俺は、その時思い出した。転生後、俺は何になるのかを。ねぇ、チンピラ神。勿論、人間で男だよね?
「・・・・・・・・」
何か言えやーーーーーーー!
こうして俺は異世界に転生させられた。