第一話-餌がなくなる!
「マイキーの餌が無くなりそうだ」
物置を整理している時に気付いた。
マイキーとは俺が飼っているモンスターの名前だ。
俺が生まれた日に父親が捕獲して来た。
隣街と我が家の間にある森の中で怪我をしていたらしい。
本来ならモンスターは狩りの対象になるのだが、稀に人懐こいモンスターもいる。
それがマイキーだ。
マイキーは犬のモンスターで、火の属性を持っている。
そして人の言葉を理解し、話すことも出来る。
人の言葉が理解出来るモンスターは珍しくはないが、話すとなれば別だ。
彼は自分を狼だと言っているが、俺から見れば犬である。
犬と云っても、元は野生のモンスターだったわけだから、いざとなった時は頼りになる。
そんな時は“さすが狼。頼りになる”と褒めてみるのだが、普段は“犬”と言っているので本人はどことなく不満そうである。
「カラスの兄貴、どうした」
窓の向こう側から話しかけられた。
カラスと云うのは俺の名前で、決して鳥の名前ではない。
窓の向こうには居たのは我が家で飼っている猫のモンスターのミユだ。
可愛らしい名前だけど一応はオスである。属性は雷。
「ああ、お前たちの餌が無くなりそうなんだ」
俺がそう応えると後ろからマイキーの声がした。
「散歩がてら隣街に買いに行くか」
散歩の時間か。
隣街に行くには森を抜けなければならない。
その森にはモンスターがいるわけで、いつまでもマイキーやミユに戦闘を任せるわけにはいかないと……俺は先日拾った木の杖を持って服を着替えた。
青色の地味な服だ。
地味だけど、意外にも戦闘の際はそれなりに優れた性能を発揮するらしい。
らしいというのはその優れた性能を実感したことがないからなのだが。
気がつくとミユも物置に入ってきて装備を整えている。
「お前も来るの?」
「当たり前でしょ! 一人で留守番は嫌だよ」
ああ。
父さんも母さんも滅多に家に帰らないからな。
「ってことでマイキーの旦那、ヨロシク」
マイキーは短い鼻息であしらいながら物置を出た。
そういえばこいつらを一緒に散歩に連れていくことは無いからな。
というのも、ミユは自由奔放な性格で、基本的に一人遊びで事足りるらしく、散歩らしい散歩には連れていった事がない。
仲が悪いわけでは無いけど、初めてのパーティーなので少し心配だ。