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プロローグ――旅立ちは突然に
この物語はフィクションであり、描写されているCMや団体、人物は、現実のものとは一切かかわりがありません事を、特に明記しておきます。
北国で、遅い春の到来を待つ頃。
動画サイトを適当にチェックしていた青年の手が、ふと止まった。
モニターに映し出された、新緑。
しっとりとした音楽、落ち着いた口調のナレーション。
ふと、映像が切り替わる。
狩衣姿で行進をする、人々。そして、輿に乗った人物がアップになる。髪に葵の葉をあしらった斎王代は、艶やかに微笑んで見せた。
『初夏だから出会える、きらめきの京都へ……』
某鉄道会社のコマーシャルだ。
それは、とても厳かでかつ、華やかな風景。それらをぼおっと見つめていた青年が、不意に頷いた。
何かの決意を込めた、頷き。
「そうだ京都、行こう」
滑来太郎。
28歳の一人旅は、かくして、突然に始まった。